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今だけはあんたを愛してる
登場人物一覧
名前:ドレッドレオ
一人称:俺
二人称:お嬢さん、お兄さん、あんた
口調:~だよな、~だな、~だろう?
特徴:褐色肌、筋肉質、ハーフアップ
設定:
ドレッドレオという男は、売れるものなら何でも売る。
質が悪くても買う客はいるが、質が良いに越した事はない。
だからドレッドレオは質の良いものしか売らないと決めている。
宝石は瑕のないよく磨かれたものを。
金銀は質が良く不純物の少ないものを。
奴隷は縁者のいない、見目麗しいものを。
ドレッドレオは今日も、何処かに雑な露店を開いて客を待つ。
彼は意外にも、客に対して真摯である。
ただし、アフターケアはしない。
売り買いをする間は大事なお客様なので丁寧に扱うが、売ってしまえばあとは他人。どうなろうが知った事じゃない。
例えば呪いの宝石を買って、化け物に成り果てようとも――其れは着けた奴が悪いのであって、売った奴が悪いんじゃない。嫌なら買わなければ良いだけの話だからだ。
紅血晶は化け物になると言われる宝石だが、質そのものは悪くない。
粗雑な品でないのなら、希少価値があるのなら、高価で出回っているのなら、ドレッドレオに仕入れない理由などなかった。
「引っ掛かったあんたが悪いんだぜ。俺は売った。確かに言わなかった事もあるかもしれないが、其れはあんたが聞かなかったからだ。聞かなかったあんたの、着けちまったあんたの責任なんだよ」
だがそんなドレッドレオの軽薄さに気付く者は少ない。
何故なら彼は、商売をしている間だけは真摯にしてくれるから。
だから人はドレッドレオが扱う“質の良い”商品を求めてやってくる。
或いは恋に落ちる娘もいる。そんな娘をドレッドレオは、一晩だけ可愛がってやる。ちゃんと「一晩だけだ」と言い置いてから。そうじゃなきゃ損得が釣り合わない。
ドレッドレオは今日も、黒髪を揺らして客を待つ。
買ってくれそうな客には、其の良く回る口でおべっかを売る。
褒め言葉はタダだ。幾ら売っても良い。
そうすれば重さのある金が転がり込んでくる。其の為なら誠意も褒め言葉も惜しまない。――売り買いの間だけだが。
どうせこの世は金で動いている。善意などありはしない、あるのは策謀と欲望だけ。
そう、俺にだって欲望はある。
商人として成りあがりたい――ほうら、可愛らしい願いだろ?
叶えてくれるのはあんたたち。これでも感謝してるんだ。いつもありがとうな、愛してるぜ。