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『世界を侵す雨』著.ヴェルゼ・クェイク――より抜粋
登場人物一覧
世界とは高度に編み上げられたプログラムである。
ゆえに、そのプログラムに瑕疵とでもいうべきものがあるのも必然。
これは承前というやつだ。共通認識として持ってもらいたいのは、『世界は高度なプログラムで作り上げられ』ていて『当然の様にGlitchは発生する』ということ。そしてそれを、本著では『World Glitch』と呼ぶことである。
今回のWorld Glitch。それを例えるならば、『世界を侵す雨』だ。
このGlitchはもともと、とある町で行われた『雨乞いの儀式』から発生したのだとされている。三日三晩祈り続けた人の祈りは、実際に雨を呼んだ。この時に走った
そして雨は降り続ける。だが、彼らの編み上げた術式は、本来呼び出すべき『雨』というデータベースとは違うところに接続してしまったと思われる。
例えていうならば、それは『負』の蓄積された場所。
決して触れてはいけない場所だ。
ふるは雨。
落ち行くは絶望。
しとしとと降り続く雨は、人の心の深い場所に語り掛ける。
聞こえるは悲鳴。
流れるは嗚咽。
絶望が人の心を変えていく。
悲しみが世界の形を変えていく。
World Glitch:TYPE-Rainy。それは浸食タイプのGlitchだ。この『雨』の降る範囲にある人類は、徐々にその心を絶望と狂気に支配され、やがてそれにふさわしい体へと作り替えられていく。建物はさほどの時間をかけずに、瞬く間に朽ちて廃墟と化す。雨の上がった後に残るのは、荒廃した大地と、化け物たちの群ればかりになる――。
おそらく、世界に選ばれし
現在、この『World Glitch:TYPE-Rainy』への対抗策はわかっていない。
相手は、世界が降らせる雨だ。
雨をやませる方法など、存在するのだろうか?
幸いなのは、このGlitchも『頻発するものではない』という所だろう。次に起こるのは、世界の終わりの時かもしれない。それほどに。
だが、もしこれを読んでいるあなたが遭遇するのならば――。
心を強く持つことだ。
雨の浸食に、打ち勝つ強い心を。
それだけしか、今のところ対抗策はないのかもしれない。