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『世界を侵す雨』著.ヴェルゼ・クェイク――より抜粋

雨降る廃墟街

登場人物一覧

レッド(p3p000395)
赤々靴

 世界とは高度に編み上げられたプログラムである。
 ゆえに、そのプログラムに瑕疵とでもいうべきものがあるのも必然。
 これは承前というやつだ。共通認識として持ってもらいたいのは、『世界は高度なプログラムで作り上げられ』ていて『当然の様にGlitchは発生する』ということ。そしてそれを、本著では『World Glitch』と呼ぶことである。

 今回のWorld Glitch。それを例えるならば、『世界を侵す雨』だ。
 このGlitchはもともと、とある町で行われた『雨乞いの儀式』から発生したのだとされている。三日三晩祈り続けた人の祈りは、実際に雨を呼んだ。この時に走った術式プログラムがどういったものなのかは不明であるが、いずれにしても、世界というプログラムの一端に干渉してしまったのは事実だ。
 そして雨は降り続ける。だが、彼らの編み上げた術式は、本来呼び出すべき『雨』というデータベースとは違うところに接続してしまったと思われる。
 例えていうならば、それは『負』の蓄積された場所。
 決して触れてはいけない場所だ。
 ふるは雨。
 落ち行くは絶望。
 しとしとと降り続く雨は、人の心の深い場所に語り掛ける。
 聞こえるは悲鳴。
 流れるは嗚咽。
 絶望が人の心を変えていく。
 悲しみが世界の形を変えていく。
 World Glitch:TYPE-Rainy。それは浸食タイプのGlitchだ。この『雨』の降る範囲にある人類は、徐々にその心を絶望と狂気に支配され、やがてそれにふさわしい体へと作り替えられていく。建物はさほどの時間をかけずに、瞬く間に朽ちて廃墟と化す。雨の上がった後に残るのは、荒廃した大地と、化け物たちの群ればかりになる――。
 おそらく、世界に選ばれし特異運命座標イレギュラーズでもなければ、これに対抗することはできないだろう。
 現在、この『World Glitch:TYPE-Rainy』への対抗策はわかっていない。
 相手は、世界が降らせる雨だ。
 雨をやませる方法など、存在するのだろうか?
 幸いなのは、このGlitchも『頻発するものではない』という所だろう。次に起こるのは、世界の終わりの時かもしれない。それほどに。
 だが、もしこれを読んでいるあなたが遭遇するのならば――。
 心を強く持つことだ。
 雨の浸食に、打ち勝つ強い心を。
 それだけしか、今のところ対抗策はないのかもしれない。

  • 『世界を侵す雨』著.ヴェルゼ・クェイク――より抜粋完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別設定委託
  • 納品日2023年02月02日
  • ・レッド(p3p000395

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