PandoraPartyProject

SS詳細

そして白い光の中へ

登場人物一覧

レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ

「ああ……あと5分しかない。大丈夫よね? 私、表情とか強張ってないよね?」

 時計の音がやけに大きく感じられる。壁にはモニターが設置されており、現在のステージの様子が映し出されていた。広い大ホールを占拠したこの一大イベントは、他の誰でもない、彼女――ヴァイス☆ドラッヘのアイドルデビューを飾るステージなのだ。その高い名声を聞きつけてか、どうやら幻想や鉄帝のような近隣国だけでなく、遠いだろうに豊穣からもヴァイス☆ドラッヘの歌と踊りを楽しみに数多くの客人がやってきていた。

(ちゃんと一人でやれるかな……来てくれた皆が楽しんでくれるだろうか……?)

 外部からの音が遮断された空間で、座り心地の良い丸椅子に座りながら『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)はモニターから視線を離し、鏡とにらめっこをする。笑顔を作る練習をしようかと指が顔に伸びたが、先ほどメイクアップ担当に「そんなに触ったらファンデが落ちちゃいますよ! 舞台が始まるまで、笑顔の練習はしないでくださいね!」と苦情を貰ったことを思い出し、その手を膝に置く。

 戦場にいる時にも似た『何かしないと落ち着かない』という謎の焦燥感がレイリーの心の多くを占めている。しかし、其れとは違って、嫌な気分はちっともしない。ヴァイス☆ドラッヘとしての自分を飾るかわいらしい衣装はステージで輝く為にフリルとレースが視線の先で揺れる。

 ――自分の夢が長らく見つからなかった。
 ――それでも、自分の行動が、誰かの夢を護れると思い戦ってきた。

 そんなレイリーがようやく、『自分の夢』というものを、輪郭がまだぼやけているにしろ、掴んだのだ。絶対に、失敗したくはない。誰かに願われたわけでも、悪ふざけで強制されたわけでも、ましてや命令を受けたわけでも何でもない。にもかかわらず、いくら踊っても、いくら歌っても、消費しきらないこの熱にも似た大きなエネルギーは、確かにレイリーに繰り返し主張し続けるように、何度も胸の中で鼓動する。

――『これが自分の思い描いたサイコーの夢』なのだと。

 気が付けば、緊張は消えていて、妙に張っていた肩もすとんと落ち着いていた。そうだ。自分は自分を信じればいい。きっとまだヴァイス☆ドラッヘはアイドルとして未熟かもしれない。けれどそれは、あたりまえのことだ。失敗を恐れるあまり、自分の夢を『楽しい』と思えなくなってしまったら、せっかく来てくれたお客様に『私の夢』のすばらしさを知ってもらえない。

(そうよね。一人でやるんじゃないわ。スタッフやプロデューサーが私にはついてる。なにより、来てくれた皆が楽しんでくれるか、じゃないわ)

「ヴァイス☆ドラッヘさん! 時間です!」

 スタッフの声に、レイリー……否。ヴァイス☆ドラッヘが立ち上がる。

(仮に泣いていたとしても、のよ! 私自身ヴァイス☆ドラッヘが!)

 光量の海は一周回って暑さすら感じる。光の粒にも見える其れは、空気中に舞う小さな塵だ。しかし、それすらも視界に映るように、その時が来たら、一斉にあの光はヴァイス☆ドラッヘを祝福する。どこまでも上品に赤いサイドカーテンはエアコンでわずかに揺れているし、目立たぬように舞台と同じ色のガムテープで目張りされたステージにはたくさんの努力を知っているスタッフが、ヴァイス☆ドラッヘのステージを少しでも成功に近づける為に寝る間も惜しんで何度も話し合いながら設置してくれた。これは客席からは見えない、ステージからしか見ることのできないエールだ。

 ブザーが鳴り響く。光が白から七色の光へ、そして再び、彼女の色に変わっていく。
 スピーカーが世界に届けと言わんばかりに、大音量で白き竜のテーマを紡ぐ。
 ……そう、ここにあるのは希望だけだ。絶望を払った恩人の歌声に負けないくらいの愛をもって。

「皆ー! 今日は私のデビューステージに来てくれてありがとう!」

「絶対に後悔なんてさせないから、目を離さないでね!」

「さぁ、今日も私がみんなに楽しい夢を見せてあげる」

「最初の曲は――」

――ヴァイス☆ドラッヘ! 只今参上!

  • そして白い光の中へ完了
  • NM名蛇穴 典雅
  • 種別SS
  • 納品日2023年01月05日
  • ・レイリー=シュタイン(p3p007270

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