SS詳細
君と着飾るなら
登場人物一覧
「デートに行かないか?」
恋人から誘われて、ハンナ・フォン・ルーデル (p3p010234)は同時に2つの感情で頭をいっぱいにした。
1つはもちろん喜びである。ローレットの仕事ではなく、恋人と出掛けるのは嬉しい。
そしてもう1つは、『焦燥感』である。
ハンナは根っからの軍人であり狙撃手で、イレギュラーズに選ばれるまで友人も少なかった。
そんな彼女の服はシンプルなものばかり。年相応のオシャレ服はない。
「…良いのですが数日待って頂けませんか……っ?!」
ヤバイと感じたハンナは窓枠に座る恋人、クウハ (p3p010695)に交渉する。
その必死な頼みにクウハは「構わねぇが」と言いかけて部屋の様子に気付いてしまう。
シンプルイズベスト、もしくは殺風景で服も無難。
「……はぁん、なるほどなァ。良いじゃねぇか、服を買い行くデートも愉しいぜ?」
引っ張り出された先は練達のショッピングモールだった。
自信なさげにするハンナを余所にクウハはアレコレと服を取って戻すを繰り返す。
ふと顔をあげたハンナの目にブーゲンビリア色のソフトマーメイドのワンピースが目に入った。
アクセサリーが映えるよう設計された丸首のそれは、ゆったりしていて丸みを帯びた袖だった。
ペザントスリーブという名前らしい。店員に言われるまま試着すると丈は足首だった。
「ど、どうでしょうか?」
「キレイだな」
臆面もなく褒めるクウハに頬を染めている間に、ベージュ色のファーで作られたスタンダードカラー付け襟が加えられた。
店員からはタイツは翼と同色、ストラップが2本の黒いバルーントゥジュースを薦められた。
他にも白いビジューついたベージュ色ベレー帽、シンプルな白いファーイヤリングを宛がられる。
店員とクウハの2人から褒められ、焦ったハンナは考えさせてと隣の店へ逃げるように入った。
あの1回でハンナの好みを把握したらしいクウハが今度は、千鳥格子柄のノーカラージャケットを指差した。
「下はこれでどうだ?」
同じツイード生地の黒いタイトミニスカートを宛がわれる。
その様子に気付いた店員が中に白いフリルスタンドカラーのシャツを合わせてはどうかと提案。
「それと足元は両サイドにフラワーレースがあしらわれたベージュのタイツ、靴は履き口にファーがついたチャコールグレーのブーティがオススメです」
ハンナの髪のサイドを三つ編み、パール1列のアメリカピンを宛がっていたクウハが良いじゃんと返した。
結局、「そんな高くねえし必要だろ」というクウハの1言で見てきた全部を買って貰ってしまった。
気にしたハンナが今度はクウハさんの分ですとメンズフロアへ乗り込む。
普段パンクな服ばかりなクウハからの注文はさっき買ったハンナに合わせたもの。
暫くうろうろしていたが、暖かそうな白とベージュのニットベストを宛がう。
首から胸元までフェアアイル柄のそれに黒いスタンダードシャツ合わせてみる。
「どうでしょうか? 私は好きなんですが」
「暖かそうだな。けど上着と下はどうすんだ?」
すると店員がライトグレーのツーピースを持ってきて薦めてくれた。
Vゾーンが深めで生地が柔らかく、ピークドスリムラペルのイタリアスタイルだ。
上着だけ羽織らせて貰ってその柔かさに感動していると、目に入った靴があった。
赤みが強い茶色のダブルモンクストラップシューズ。普段、革靴は履かないがこれは履きやすそうだった。
型落ちで安くなっていたその靴と一式をハンナはクウハに買って、向かいの店を覗く。
「さっきよりカジュアルなやつも良いよな」
それなら黒革のネルーカラージャケットはどうですかと店員が薦めてくる。
全体的にシンプルな作りながら、袖のカフスストラップがエレガントだ。
中に白いタートルネックのカットソーを着ればカジュアルとのバランスが良くなりそうだ。
「下は……そのズボン暖かそうだな。ちょっと試着いいか?」
クウハが指差したのはコーデュロイのパンツだった。
細身でストレートなそれは3色展開で全部合わせた結果、黒緑色にした。
「アンクル丈のズボン合わせるとなると、選択肢が多いですね……。クウハさん、どちらがお好みですか?」
ハンナがクウハの足元に並べた靴はスエードのローカットスニーカーとショートエンジニアブーツ。
クウハは裕福を試着した状態のままで靴を履
試し履きして、スエードスニーカーを選んだ。
色は黒で少し艶を感じられるものを服と共に買い、2人は店を後にした。
買い物で疲れたからとクウハとハンナは、1階のコイン式ロッカーに荷物を預けて色々と見ることにした。
「ちょーっと小腹空いたんだよな。なんか食べねえか?」
「もう11時ですしね、食べましょうか」
レストランフロアへ移動し、カフェでワッフルサンドを頼む。
元の階へ戻る途中、廊下の展示スペースに幾つかコーディネートが並んでいた。
各店の最新作らしいそれらは可愛いものが多かった。
「これ似合うんじゃないか?」
クウハが指差した先は青いフィット&フレアのワンピースで膝上丈のものだ。
裏地とシアーの表地が一体化していて、ふんわり透けるのに着やすそうだった。
マネキンは中にタートルネックの白いシンプルなカットソーを着ていた。
下はレギンスで雪の結晶が舞う柄が描かれている。
「ちょっと可愛すぎませんか?」
今までと違って可愛い服に頬を染めるハンナを適当に励まし、クウハは店名を調べて店へ行く。
目当てのものを籠へ入れ、小物を選ぶ。
「さっきのイヤリングや付け襟とも合いそうだよな。となると靴がいるか……」
これはどうだ、と白いキャンバスのスニーカーを見せる。
「動きやすくて良いですね」
髪はどうしようかとリボンやカチューシャを宛がっていき、星の付いたスリーピンを買った。
どうやら店は日用雑貨がメインらしく、その中でハンナは白いハーフムーンバッグを手に取り合わせてみる。
「お、カバン?」
伊達眼鏡を掛けて遊んでいたクウハが良さそうなカバンだなとハンナが持っていたバッグを
眼鏡と一緒に入れる。
「あっ、もう! ……ウェルトンタイプの伊達眼鏡?」
「おう、俺に似合ってたろ。あと黒のミルキーハットも」
クウハも3着目を、とハンナは言い募ったが高い店で買わせてまったから良いと断ってから、じゃあ揃いの服を買うかと提案する。
そこで2人が買ったのは3wayケープロングコート。その名の通り袖とケープと胸元のファーが分離できる。
とても暖かく、その日の気分で着こなしを変えられるそれは2人揃って黒色で買った。
「さて、そろそろ帰るかァ。買い物デートも悪かなかったろ?」
「はい、思いがけず楽しめました。また行きたいです」
そして2人は、次のデートの話をしながら帰路を歩き始めた。ゆっくり手を繋いで。
おまけSS『meet of you guys』
《ガーリー×着物MIX ハンナさん》
レースの半襟
珊瑚色の地にカラフルな宝つくし着物を丈短めに着付ける
帯は白地に南天
跳び跳ねているうさぎの帯留め
白のロングプリーツスカート
白い足袋、珊瑚色の草履台に赤い鼻緒
《ガーリー×着物MIX クウハさん》
黒地にワインレッド×金×ブルーグレーの両滝縞の着物
帯の代わりに金のコルセットベルト
濃い灰色で無地の羽織、羽織紐はライトグレー
ポリエステルサテンで黒色のプリーツワイドパンツ
ライトグレーの足袋、赤い草履台、濃い灰色の鼻緒
《クウハさん寄りパンク合わせ》
《ハンナさん》
丸襟Tシャツに血飛沫柄のリボン、血飛沫の色は青
白い裾フリルのブラウスを肘まで降ろして着る
青いタータンチェックのボンテージパンク
黒いレーフアップブーツ
《クウハさん》
血飛沫柄のネクタイを首に直接まく
黒いシンプルなV字襟Tシャツ
裾変形の白いブラウスをかなり抜いて着る
赤いタータンチェックのボンテージパンツ
黒いエンジニアブーツ