PandoraPartyProject

SS詳細

渇望せし強さの意味

登場人物一覧

皇 刺幻(p3p007840)
六天回帰

「この森を抜けた……この先だったか……?」
 静けさに包まれた、闇の中。
 薄気味悪い漆黒の闇の中を、一人歩いていたのは『六天回帰』皇 刺幻(p3p007840)。
 そう、一人で……『魔王』である彼に、仲間を連れて歩く事は無い。
 しかし、そんな彼の行く先を照らし出すかの様に、刺幻の腰に下げられた刀は、鈍く僅かに明滅する。
「ん……ああ、解った。こっちだな……」
 その明滅に頷き、刺幻は、更に深く生い茂る森の中を分け入っていく。
 まるで、その手の刀と会話するが如く……刀の導きに従い、漆黒の闇の中を進んで行く。
 すると……目の前の空間は空の灯りが一筋差し込む空間が突如として拡がる。
 更にその闇の中には、ぽつんと拡がる小さな泉。
 何の変哲も無い泉……だと、極普通の人々はそう思う事だろう。
 しかし、その泉の近く、光が差し込む水辺へ刺幻が足を踏み入れた、その瞬間。
『……ゥゥウゥ……』
 泉の底から響きわたる、亡者の如き呻き声。
 その呻き声と共に……言葉には表せない様な、不穏な気配が周囲から一気に噴き出してくる。
 不穏なる気配は泉の周囲に散らばり、具体的な姿が次々と象られ、結晶体の様な姿形で闇の中に鈍く、暗く、輝く。
「っ……これは……エレメンタルの力が、暴走しているのか?」
 刺幻が肌に感じるは、エレメンタルの力。
 しかしいつも、何処にでも居るような大人しいエレメンタルの力とは全く違い、近づく者に対して明らかな敵意を剥き出しにしており……肌を焼くが如き危険な感触を覚える。
 更に次の瞬間、エレメンタル達は漆黒の闇の中にぼんやりと紛れ込み……姿は殆ど見えなくなる。
 そんな暴走エレメンタル達を目の当たりにした刺幻へ……手に握りし刀『婆娑羅』から。
『……倒……セ……』
 ノイズ交じりに、刺幻にのみに聞こえる虚ろな言葉。
 ただ、その言葉の中には、まるで炎が渦巻く様な感触があり……その声を聞くと、燃え上がるような様々な感情が浮き上がっては消えていく。
 ……だが、前世からの相棒である婆娑羅の声は、しっかりと刺幻には届いていた様で。
「そうか……あいつらは何らかの影響によって暴走し、凶暴化している……って言う事か」
 刺幻の言葉に、瞬き応える婆娑羅。
 そして刺幻は目を閉じ、心の目で周囲の気配を探る。
 ……美しく清涼な水を湛える泉からは、現れたエレメンタル達とは真逆の清らかな力。
 その力と対比するが如く、暴走したエレメンタル達の力は泉の周囲に渦巻く。
 どうやら、清らかなる泉の魔力はエレメンタルの力と反発し合っており、暴走せしエレメンタル達は、その清らかなる魔力を吸収しようと蠢いている様である。
「泉の清らかな魔力を、奴らが吸収すれば……更に強大な力を持つ。さもすれば私達の障害になる……ならば、ここで倒す他にはない」
 目を開き、婆娑羅を構える刺幻……そこへ。
『グゥゥゥ……!!』
 刺幻の動きに対し、泉の周囲に浮かんだエレメンタル達は次々と暗闇の中に姿を表し、次々と攻撃を嗾けてくる。
 闇の中に放たれる炎や氷の属性を持った一撃が、刺幻に明確な傷を付けていく。
 更にはその傷痕からは、燃え上がるような痛みも生じ、気が朦朧としそうになる。
 だがしかし、刺幻はむしろ口端を少し上げて、何処か嬉しそうな表情を浮かべて。
「確かに……中々強力な敵の様だ。だが……その程度の力で、私に勝てるだなど思わぬ事だ。魔王の力……見せてやろう」
 確かに彼の前世は『魔王』。
 しかしここ、混沌世界において今現在の魔王の力は以前に比べて制限されている状況。
 ……だが、立ちはだかるエレメンタル達を倒さない事には、己が身に危険が及ぶのは間違い無い。
 更にはエレメンタル達の力も、この世界にありふれている他のエレメンタル達よりも数段高い魔力を身につけており、普通に立ち回れば負ける事は間違いない。
 しかし……。
「こいつが居るからな。お前達に負ける訳には行かない」
 婆娑羅に語りかけると共に、実を低くし、素早くエレメンタル一体に近づいていく。
 対するエレメンタルは、絶対零度の氷撃を叩きつけ、その片腕を氷漬けにする。
 しかし刺幻は片腕を封印されても、もう片手で婆娑羅を手にし、エレメンタルの頭上から一刀両断に叩きつけ、木っ端微塵に破壊する。
『グゥゥ……!』
 無惨に散った魔力の残滓……しかしその魔力の残滓を、更に別のエレメンタルが吸収し、力を付けてしまう。
「どうやらこいつらも、私と同じように力を渇望している……という訳か」
 ふっ、と息を吐く刺幻。
 勿論エレメンタル達は、そんな刺幻の言葉に特段何かの反応を返すという事はない。
 むしろ、仲間を倒した事で、強力な力を持つであろう刺幻を殺す事で、その力を吸収すれば自分達も強くなるだろう……と、餌を吊り下げられた獣の如く、更に凶暴化していく。
 そんな敵の動きを見据えて刺幻は。
「婆娑羅。力の残滓を吸収してくれ……そうすれば、お前の魔力も戻るだろう?」
『……ワカ……ッタ……』
 刺幻の言葉に、再びノイズ交じりに聞こえる婆娑羅の声。
 そして。
「さぁ……次はお前だ。行くぞ」
 漆黒の闇の中に、僅かに刺幻の瞳は煌めく。
 そして中腰の体制のまま、次なるエレメンタルに向けて一気に近接距離まで踏み込む刺幻。
『チカラ……ヨコセ……ェェ……』
 と、エレメンタル達は素早い動きを取ることはないが、攻撃してくる刺幻を待ち構えていたとばかりに行動。
 移動に対し、カウンター気味にエレメンタルの属性の力を帯びた一撃を食らわせる。
 腕に炎が燃え上がったり、氷漬けにされて行動を封鎖されたり……と、様々なバッドステータスが刺幻に襲い掛かる。
 しかし己が身を犠牲にしても、反撃の一閃を叩き込む事で、完膚なき迄にエレメンタル達を一匹ずつ、確実に仕留めて行く。
 そして……仕留められた魔力の残滓を婆娑羅に掲げることで、他のエレメンタル達に回収されるよりも早く、その魔力を吸収させていく。
『……オォォ……力……漲……ル……』
 手に握る婆娑羅が僅かに震え、ノイズ交じりの声が少しずつ、明瞭に聞こえ始める。
「どうやら力を取り戻してきた様だな。さぁ……もっと喰らえ。私がその力、与えてやろう」
 婆娑羅に向けて、敢えて尊大な口調で語りかける刺幻。
 強大な力を持つエレメンタル達だが、臆すること無く次々と討伐し、更にはその魔力を婆娑羅へと吸収させていく事により、婆娑羅の刀の鈍い輝きは、段々と強くなっていった。

 そして……全てのエレメンタル達を倒した刺幻は、光差し込む泉へと歩を進める。
 ……泉は大きなものではなく、かなり小さな泉。
 しかしその泉の水を掬うと澄み切った水であり、空の灯りに照らされたその水はエメラルド色に美しく輝く。
 更にはその泉の水からは、清らかなる魔力が充填されており……かなりの魔力を湛える泉であるのは間違い無いだろう。
「これだけの魔力があるのならば……お前の力を定着させるのに十分な役目を果たしてくれるだろうな」
 そう刺幻は言うと共に、帯刀していた婆娑羅をその泉に浸す。
 ……すると、常人には感知出来ない様な高周波数の音が鳴り渡る。
 更にその音と共に、エメラルド色に輝いていた泉の水は、婆娑羅の触れたところを中心に、円周状に色を失っていく。
 それはまるで……エメラルド色の魔力を、婆娑羅が吸収しているが如く。
 美しい泉の色が程なく失われていくと共に……その刀を泉から掬い上げる刺幻。
 ……泉に晒したときよりも、一際強い魔力を感じる。
「どうだ……?」
『アア……力、漲ル……』
 ノイズもなく、はっきりとした言葉が、刺幻だけに伝わってくる。
 その言葉にそうか……と小さく頷いた刺幻は、刀を脇に刺して立つ。
 ……空から差し込む灯りを世にしながら、彼は。
「これで俺も……魔王としての力を発揮出来るだろう。しかし……」
 そう言いながら、空の灯りを見上げて。
「しかし……英雄……か。魔種や、他のイレギュラーズ達の命は……一体どんな味で、どんな力を得られるんだ?」
 今はイレギュラーズである彼だが……魔王としての力の渇望は尽きる事は無い。
 それに婆娑羅は。
『フフ……面白イ。ソノ力、俺ニモット食ワセテクレ』
 彼の脳裏に直接語りかけ……彼もまた、力を渇望。
 二人の渇望者は……更なる力を手にするが為に、イレギュラーズとして力を振るうのであった。

  • 渇望せし強さの意味完了
  • GM名緋月燕
  • 種別SS
  • 納品日2022年11月13日
  • ・皇 刺幻(p3p007840

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