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イイいわしの日
登場人物一覧
「かみさま、10月4日はいわし(104)の日……いわしを食べようとすると殺される日だって聞きました。けど……もう過ぎたから食べちゃってもいいよnいわしうまい!」
秒でイワシの丸焼きにかじりつく犬。その名はロク。
ほんとはコヨーテのブルーブラッドである彼女はいわし少女の影に怯えて暮らしていた。
ふとすると思考が犬(それも結構ゆるいほう)になってしまうロクはイワシを見るとご飯だと思ってしまうし、焼きイワシは勿論イワシハンバーグやイワシの天ぷら、いわしを新鮮なまま刺身にしたりなめろうにしたりしたものをそれはもうムシャムシャやってしまうのである。
そして、やってしまった直後に『食べたな?』と背後に迫る存在に、やはり怯えるのだ。
「関係ないけど、104っていわしと読めるけどてんしとも読めるよね。あっ、だから10月4日はエンジェルいわしの日なのか!」
毎年この時期になるといわし少女がつけ翼をパタパタさせながら怖い顔でいわし食うなキャンペーンを強めるので、一日一匹は食っちゃうロクはプルプル震えながらおうちの押し入れに隠れるのだが、喉元過ぎれば熱さも忘れるもの。
もう二週間くらい過ぎたから食べてもいいよねといわしを甘辛いすき焼きタレで煮込んで食べようとつみれにしてぽいぽい放り込んでいたところ……。
ピュンと音をたてて矢がロクのすぐそばを通り抜け、家の柱へ突き刺さった。
ハッとして振り返ると、そこに人はいない。青いうしろ髪がかすかに見えるのみだ。
カタカタと震えながら矢を抜いてみると、結びつけられている紙がある。
ひらいてみれば。
こう書かれていた。
『10月のチャンスを逃したから――11月04日を1104(イイいわし)の日にするね』
「ウ、ウワーーーーーーーーーーーー!!」
悲鳴をあげたロクの背後に、縄とギャグボールを持った少女が立っていたのは……また別の話である。