ざまぁみろ、糞ったれ

登場人物一覧

　――嗚呼、そうだ。
　糞ったれな人生だった。

　吐いた反吐。飲み込んだ薬。脳裏の浮遊感。
　数歩先の地獄が恋しくて、今日も今日とて命を削り。

　嗚呼、やっと死ねるかもしれない。
　死にたいから戦う。
　死に場所を求めて戦う。
　そんな毎日に意味はあったのだろうか？
　意味なんて求めるものではないかもしれない。それでも、こんなちっぽけな人生で唯一の願いを叶えたいと思うことは悪いことなのだろうか？
　いいや。そんなことあるはずがない。
　そしてそう。この命は、ただ彼女のためだけに捧げると決めたのだ。
　そして。彼女のために死ねるのならば、本望だ。

　――主は絶対。命を賭して守り、奪われたら必ず取り戻さん。

「……覚えてるさ。覚えてるに決まってる」

　時は満ちた。
　月は昇った。
　最早躊躇う必要もない。

　夜風が頬を撫でる。
　晦冥に立ち込めた一筋の光――偲雪。そうだ。彼女の理想のためならば。この命は惜しくはない。

　月に手を伸ばす。
　握りしめた掌の中に月はないけれど。
　けれど――それでいい。

　
　晦冥の　望月欠くるが　なきように
　うつろふはなし　我が心も


　そうだ。
　暗闇にぽっかりと浮かんだ満月が消えてしまうことのないように、変わることはない――自分自身が抱いた、この心も。

　この世に未練もない。
　この世に後悔はない。

　ざまぁみろ。これがウチの生き様だ。
　精々最期まで、ウチらの掌の上で踊ってくれ。