SS詳細
エンカウント・アクシデント
登場人物一覧
土曜日の夜にだけ現れる、2体同時に倒さないといけないレアエネミー。
噂で知ったロードは、準備万端で狩場に向かう。
「赤紫色の敵で2体同時……なら範囲攻撃もっていくか」
基本スタイルは、白い刀にプログラムを乗せて戦う近接戦闘が流儀だが、それに拘り過ぎて負けてしまっては元も子も無い。
「先に刀で削ってから止めに使う……いや、近接戦に持ち込む前に距離を取られると厄介だから、牽制がてら範囲攻撃を叩き込んで――」
レアエネミーが現れるという密林エリアを歩きながら、戦術を練り上げる。
いつどこで戦いになるか分からない状況だが、楽しげな様子だ。
どう遊ぶか思案している子供のようにも見える。
実際、ロードの姿は10歳前後。
黒色のフィールズスーツに身を包み、サングラスで目を覆い、褐色の肌といった黒で統一した外見は、スタイリッシュで大人びているが、却ってそれが背伸びしている子供のようにも見えた。
もっとも、それで侮るような者は、早々にロストするのがオチだ。
ここは、リアルとは違う仮想世界。
見た目も何もかも、現実とは違う自分を形作れる。
それは子供のように見えるロードも例外ではない――筈ではあるが、未知の相手と戦えるかもしれないとワクワクしている様子は子供っぽい。
それでいてどこか、与えられなかった物を渇望するような飢えを感じさせる時があるのは、矛盾しているようにも見えた。
総じて言うなら、子供時代に必要な経験を得ずに大きくなった、やや遅めの中二病真っ最中の青年、といった雰囲気だ。
そういった特徴は、彼がつけているサングラスにもある。
アクセスファンタズムの影響で、視界に入っている存在を色分けして視認することが出来るのだが、勝手に発動するため、それを避けるためにつけている。彼に言わせると――
「バグ、不完全さから目をそらしたい……つーか赤くて目に悪い!」
とのことだが、実際のところは――
「かっこいいから良いじゃん?!」
というのが本音だ。
そんな理由でつけているサングラスだが、それがこれから起こる勘違いの理由になるとは、神ならぬロードには知る由もなかった。
(見つからないな?)
密林を歩き続け、件のレアエネミーと遭遇できずにいたロードが、今日はハズレかと思いログアウトも考え始めた時だった。
(見つけた!)
サングラスで黒に統一された視界の中、見つけた相手は赤紫の髪をしていた。
(んん~? 人型? まあレアエネミーだしそういうこともあるか)
音を立てず木陰に隠れ戦闘準備。
レアエネミーと思しき相手は、よく似た顔立ちの男女。
耳を隠すように花のアクセサリーをつけているので分かり辛いが、どこか蝙蝠の羽を思わせる耳をしていた。
(吸血鬼キャラ? だとしたら手強いかも)
捜し続け待ちぼうけになっていたこともあり、すでに臨戦態勢。
(逃げられない内に、仕掛ける!)
いつもはマイペースで、基本的に手を出されない限り何もしないようにしているロードだが、今回は違う。
(倒す!)
決意すると、飛行で浮かびながら隠密接近。ギリギリまで近づくと――
(今だ!)
攻性魔法を展開。
「――ラ!!」
前衛の男キャラが後衛の女キャラに呼び掛けるが、遅い。
光に包まれ、爆発。
衝撃で粉塵が上がり視認できないが、ただでは済まない、筈だ。なので――
(一気に距離を詰めて仕留める)
得意な近接戦に持ち込もうと距離を詰める。だが――
「っ!!」
距離を詰めていたロードが横に飛ぶ。
先程まで居た場所を疾り過ぎる、鋭い矢。
(無傷!?)
粉塵が晴れ見えたのは、符を展開し防護結界を展開する男キャラと、冷たく獰猛な笑みを浮かべ矢を射る女キャラ。
(前衛が守りで後衛が遠距離? って、何あの弓? スチームパンク?)
蒸気を吹き出しながら射る弓で、次々矢が放たれる。
それを避けながらロードは間合いを詰めようとするが、近付くと符が放たれ爆発。
(連携が取れてるな……倒し甲斐がある)
強敵に、楽しげな笑みを浮かべ戦闘を激化させるロード。
その最中、僅かな隙を突かれ符が近くで爆発。
(マズい!)
爆発で飛ばされ、掛けていたサングラスもズレて――
(――あれ?)
そこであることに気づき、冷や汗をかく。
(ひょっとして……)
懸念を証明するように――
「――ヤ。時間切れだわぁ。先に戻るわねぇ」
「え? ちょっと待って下さい!」
言うなり女性キャラは
それはNPCではなく、
その後、事情を話し謝るロードに、学校休みの日に妹とR.O.Oに訪れるという彼は許し、事なきを得るのだった。