SS詳細
ゲーム実況:ぱんどらくらふと
登場人物一覧
サバイバル。
それは知識のない者から死んでいく過酷な環境。
正しい知識と、積み重なった知恵が生き残る道を示して、か細い道を進む。
……というのは現実での話。
今回行うのはゲームの話で、現実とはまた違うもの。
けれど本物そっくりのその世界では、同じように知識と知恵が活用されてゆく。
これはそんなサバイバルゲームを実況していく実況者の物語。
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「はいどうもー! 今日はぱんどらくらふとをやっていくよ~!」
蜜葉の可愛らしい声に相反して、画面では早速魔物が跋扈する過酷な世界が広がっている。
今回は魔王によって荒廃したファンタジーな世界を生き延びていく、というゲームを実況していく。
操作方法は割りと覚えるのは早く、辺りを歩いて材料を探すぐらいはとても簡単。
「早速道具を作らないとヤバいねー。やっぱり木からだよねこういうのは」
「このゲームは石が最低装備かな? となるとー……」
石と木をせっせと集め、武器と道具を作り出す。最低でもナイフや斧、ピッケルがあればこのゲームは成り立つのでそれらを順調に作っていた。
拠点を作り、道具をしまうための箱を作り、それらしい拠点を作り上げた蜜葉。次に狙うべき目標を定めると、彼女は意気揚々と外へと飛び出した。
「いやぁ、景色が綺麗ですよねぇこの辺り」
「あ、この辺にいい感じの目印立てたいね。ちょっと作ろうか」
帰り道がわからなくならないようにと目印用の道具のクラフトを開始する蜜葉。
だがこの世界は、彼女に良いことばかりではない。魔物によってプレイヤーを殺されることもあるため、注意しなくてはならないわけで……。
「後ろからスライム!? ちょっ、作ってる時は……」
「うわー!? なんかいっぱい来てるー!?」
振り向いた直後、魔物達――スライムやワームといった魔物達が蜜葉のキャラに襲いかかる。
近づいて殴ったりするだけの低級魔物ではあるが、初期段階で防具が揃っていないとダメージが大きくて痛い。現に蜜葉のキャラもごりごりと体力を削られ……。
「あっ、死んじゃったー! でもリスポーン地点は寝袋でセットしていたのでセーフ!」
サバイバルクラフト系ゲームの初期にはあるあるな、装備が整わないうちに敵に覆い尽くされて死亡するパターンを味わう蜜葉。
このゲームでは死亡すると所持品がすべてその地点に落とされてしまい、リスポーン地点からまた歩いていかなければ確保は出来ないシステムだ。
そういったシステムだとしても彼女は笑って、自分を褒めて、次へ活かそうと楽しんだ。これこそが、サバイバルクラフトの醍醐味だから! と。
「さて、気を取り直して。どうしようかな、落としたやつ拾いに行きたいよねぇ……」
「となると余ってる道具で武器作って、拾ってすぐ帰還したほうが良さそうだね」
色々と考えた蜜葉は道具をクラフトして、先程的に取り囲まれた地点へと向かおうとする。
するのだが……ふと、リスポーンを設定した寝袋にカメラ視線が向いた。
蜜葉は考えている。このまま出向いても、またやられて戻ってくる。そしたらまた道具を作ってを繰り返すのだろうと。
だったら、リスポーン地点を死ぬ直前に設定したら、その場所がリスポーン地点になるから道具の回収が簡単なのではないか……? と。
そんな閃きが生まれたので、蜜葉は早速実行に移すことに。
「よし、念のため目印を立ててから寝袋持っていってみよう! 道具を何度も作るよりはこっちの方がいい気がしてきた!」
「あー、ついでに食料も持って行かなきゃね。ちょっと遠いし」
せっせと目印を立てて、せっせと食料を調達して、いざ回収作業へと向かう蜜葉。
先程集まってきていた魔物達はいつの間にか散らばっており、蜜葉のキャラに気づいていない様子。素早く近づいて回収を終わらせた蜜葉は、あとは帰るだけだと意気込んだ……が……。
「うわーーっ!!?」
大量に集まった魔物。べしべしと鳴り響くダメージ音。
素早く寝袋を設置した蜜葉は出来る限り魔物を倒さねば! と攻撃を続け、そして死亡してしまう。
「えぁー……凄かったね。さて、リスポーンっと」
ポチッとリスポーンボタンを押した蜜葉。
だが、彼女はこの時点で気づいてしまう。自分がやってしまったことの、重大な問題に……。
「わーー!?」
リスポーン地点では魔物達が散らばらないまま、彼女の死んだ状況のままに残っている。
そして、また獲物がこの地点に降りてきて獲物を叩きまくる。
そして蜜葉はまた死んで、リスポーンして、また敵が集まって。
これぞ初心者にありがちな危険ループ、リスポ狩り。
装備や材料が惜しいからとやってしまうと、沼に落ちる危険な閃きだ。
「うう……悲しいけど、このデータはお陀仏だね……」
データを消し、また新たにやり直した蜜葉。
今度は同じ轍は踏まないのだと誓って、ぱんどらくらふとを楽しんでいた。
おまけSS『もう1つのあるある』
「あっ、もう斧限界だ。材料取ってこなくちゃ」
様々なレシピを開拓して、新たな道具を作り出す蜜葉。
ある程度の道具は繰り返し使うので、必要材料はバッチリと記憶された。
しかし人間、記憶したものを覚えていると言っても、極稀に間違った材料を覚えていたりするもので。
「あれ……? 鉄斧ってこれじゃなかったっけ?」
鉄斧の予備をクラフトしようと材料を集めてきたのだが、何故か出来上がらなくて首を傾げている蜜葉。
錬鉄、木、スライムの欠片、紐があれば作れる鉄斧。材料もちゃんと揃っているはずなのになー、とインベントリを覗いてみると……。
「……あっ、間違えた!! 私、錬鉄じゃなくて錬鋼持ってるね!?」
アイテムの形は同じでも、色が違う錬鉄と錬鋼。
そそくさと入れ替えをして、無事鉄斧を作り出したのだった。
――アイテムはよく見よう!!