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SS詳細

夏の素敵な日に

登場人物一覧

リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星

「きゃんぷ、きゃんぷ~」
 山道(といっても、急斜面じゃなくて、随分となだらかな道だった)を、二人で歩く。背中には、大きなリュックをしょって。リュックの脇につるされた、小さな連なった鍋が、カラカラと当たって音をたてる。ステラの前を行くリュコスが、楽し気にリュックをゆらして、また鍋がカランカランと歌った。
「きゃんぷ、きゃんぷ~」
 また楽しそうにリュコスがそういう。夏の暑さは、汗ばむほどであったけど、それよりも先に、これから始まる『楽しみ』の方が勝っていたし、何より山を進むにつれて、少しずつ涼しくなる空気が、夏の暑さを忘れさせてくれた。さらさらと流れる小川の気配が、より近くなる。青い空は祝福のよう高い。
 きゃんぷ、とリュコスが歌っている通りに、二人はとある山にキャンプに来ていた。整備されたキャンプ場ではないが、それでも自然のそれから考えれば整った場所である。だから、サバイバルというよりは本当に、ピクニックやキャンプ気分で遊べる場所で、そんなわけだから、二人の装備も、サバイバルではなくキャンプ用品、ばかりである。
「着いたら、なにをしましょうか」
 ステラが、そう言って笑った。
「小川がありますから。川遊びなど良いですね。それから、釣りをしましょう。美味しい川魚が釣れると評判なのです。
 近くの森は、それほど深いというわけではなく。この時期ですと、甲虫などがとれるかもしれません」
「hmmm……かぶとむし、気になる。お魚も気になるね! 食べてもいいの?」
「もちろん! ですが、川魚は火を通さないと危ないですよ。ですから、しっかり焼いてあげますね」
「ばーべきゅーだ!」
 リュコスが飛び跳ねた。
「お肉もたくさん持ってきたよね!? たのしみ! お肉!」
「むむ、もうご飯の気持ちですか?」
 ステラが笑った。
「拙としては、リュコスさんと一緒に遊びたかったのですけれど?」
 からかうようにそういうのへ、リュコスは、ummm、と唸った。
「遊ぶ……たのしみだよ! でも、おにくも楽しみで……」
 うーん、うーん、と唸るリュコス。尻尾が見えていたら、揺れていたか、しゅん、となっていたか。複雑な感情に、リュコスがあわあわとする。ステラは苦笑した。
「あはは、大丈夫ですよ。今日はたくさん時間がありますから、ゆっくり、遊んで、食べて、楽しみましょう!」
「うん! ぜんぶやろうね!」
 ぴょん、とリュコスが飛び跳ねた。また、鍋がかららん、と音をたてた。

 さらさらと流れる小川ほとりに、荷物を降ろす。じゃりと土が程よく混ざっていて、草の殆どない、見晴らしのいい場所だった。
「では、拙はテントをたてますので」
 ステラが言う。
「リュコスさんは……どうしますか? 遊んでいらっしゃっても良いですよ」
 そういうのへ、リュコスは、むー、と唸った。
「ぼくもてつだえるよ!」
「そうですか? では、そちらの棒を持ってくださいね」
 そう言って、テントの支柱を手渡す。リュコスがそれを持ちあげると、ステラはがちゃん、と布をはめ始めた。
「これはですねー、すごいテントなのです! こうやって、支柱に布をつける。ぴん、となってますね?」
「うんうん」
 リュコスが頷いた。ぴん、と張った布と支柱は、まるで大きな丸い、トランポリンのようにも見える。リュコスが飛び跳ねたい感覚をうずうずと我慢しながら、
「それで、それで?」
 そう尋ねる。丁度、リュコスがトランポリンの右辺を、ステラが、左辺を持っている形になっていた。
「そしてこれを、いっせーのせ、であっちに投げます! あ、軽くですよ? 拙たちが本気で投げたら、飛んで行ってしまうので。えーと、あの辺。平らなあたりに落とすイメージで」
「うん、あそこ、だね?」
「はい! では、いっせーの、」
「せっ!」
 二人が声をかけて、ぽい、とトランポリンを放り投げた。するとどうだろう、それは空中で、ぼん、と支柱の力によって膨れ上がって、大きなテントになった。それが、ぽふ、と地面に落下すると、そのままテントの完成、というわけだ。
「わぁ、すごい!」
「ふふ、練達の新作らしいですよ? というわけで、後はこれを、ひもで飛ばないように地面に固定して完成です。
 では、リュコスさんはこちら」
 と、釣り竿と、網を手渡した。
「お仕事のご褒美です! 遊んできてくださっていいですよ。拙も、テントを固定したら、釣りをする予定ですので」
「ほんと! やった!」
 リュコスはそれを受け取ると、目を輝かせた。
「ステラさんも、終わったら来て! いっしょに遊ぼ!」
 尻尾が見えていたら、ぶんぶんと振られていたに違いあるまい。そんな様子のリュコスへ視線を移しながら、ステラはにっこりと頷いた。

 リュコスがあちこちを走り回るのは、まさに犬のようであったけれど、ステラはにこにこと笑いながら、それを眺めていた。その片手間に用意した竹筒や焚火は、ステラも慣れたもので、簡単に用意できていた。
 焚火の上に大きな鉄板を置いて、練達製のクーラーボックスからお肉を取り出す。その隣に、釣ったばかりの川魚も用意して、いつでも夕飯の準備は万端だ。太陽も、もうじき家に帰るころ。念のためのトーチライトも用意して、夕暮れに赤く染まる小川を眺めていたステラが声をあげた。
「リュコスさん、ごはんにしましょう!」
「ごはん! おにく!」
 ばしゃばしゃと小川ではしゃいでいたリュコスが走ってやってくる。用意されたお肉と魚に、目を輝かせた。
「あ。お野菜もたべましょうね?」
「Uh~……とうもろこし、なら」
「ひとまずそれで。でも、こういうトウモロコシもまた格別です」
 にっこりと笑いながら、鉄板の上にお魚やお肉を並べていく。じゅうじゅうという音がして、香ばしい匂いがあっという間に漂ってくる。
「たべていい!?」
「いいですよ。タレはこちらです」
 まるで母親のようにそういうステラの差し出した小皿のたれに、リュコスはお肉をつけてほおばった。甘辛いたれが、お肉のうまみを増幅させる。
「おいし~い!」
 リュコスが笑った。
「お肉が終わったら、リクエスト通りに、マシュマロも焼きましょう。竹串にさして、こんがりと焼くと、とろけておいしいですよ。
 それに! 拙特性のバウムクーヘンも焼きます! そのための竹筒ですからね!」
 むふー、と得意げに胸を反らすステラ。なるほど、竹筒はその為のものだったらしい。焼きたてのそれは、とてもおいしいに間違いない。
「ummm……全部食べられるかな……?」
「食べきれなかったら、保存しておいて明日の朝、食べましょうね」
 そう言って、ステラは笑う。

「ふふ、すっかり暗くなりましたねぇ」
 バウムクーヘンとマシュマロの甘い匂いが、あたりに漂っている。焚火でぱちぱちと焼かれたそのお菓子が、山の夜空に立ち上ってい消えていく。
「ステラ、お空の星、きれいだねぇ」
 リュコスが、にこにこと笑いながら、焚火の前でそう言った。見上げれば、満天の星空が、二人を見下ろしていた。
「そうですねぇ。明日は、森を少し散策しましょうね」
 その言葉に、リュコスが笑った。
「うん!」
 そう、楽しいキャンプは、明日も続くのだ。明日は、森に行こう。二人で楽しく、探検したいな。
 リュコスはそう思いながら、焚火に視線を写した。
 とろけるマシュマロとバウムクーヘンの甘い香りが、明日の楽しさを保証してくれるみたいだった。

  • 夏の素敵な日に完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別SS
  • 納品日2022年09月30日
  • ・リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529
    ・橋場・ステラ(p3p008617

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