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キラキラを食む
登場人物一覧
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サヨナキドリ商店街をブラブラと歩いていた昼下がり。ふと、見覚えのある長い銀の髪を目にして思わずランドウェラは声をあげた。
「あ。武器商人」
ゆっくりと振り向いたソレは長い前髪で両目を隠した、男とも女ともつかぬ端麗な容姿。おや、と中性的な声を漏らすとランドウェラを見遣る。
「キミは……そう、ランドウェラ=ロード=ロウス。大地のコ、死腕のコだ」
「こんにちは」
「はい、こんにちは。礼儀のあるコは好ましいよ。何か探しにきたのかい?」
「僕はこんぺいとうを探しに。武器商人は?」
「
「そうか、この広い商店街を……すごく大変だね、お疲れ様。こんぺいとう食べる?」
「供されるならいただくとしよう」
ランドウェラの取り出した小さな瓶からカラコロと溢れ出した色とりどりの星の欠片を、
「甘いね」
「武器商人も甘いもの、好き?」
「嫌いじゃあないよ。どれ、親切には素敵な対価がなくてはね。こっちにおいで、大地のコ。そのままこんぺいとうを返礼するのは味気ないから、少し変わった品を贈るとしよう」
そう言って手招く
「どこに行くの?」
「食べる宝石があるところ」
「食べる宝石!?」
もしかしてそれはサヨナキドリで売っている特別な宝石なのだろうか。どんな味がするのだろうか。とランドウェラが思わず瞳をきらきらと輝かせて想像を働かせていると、
「その腕、随分と不便そうに使っているね」
「ああ、右腕? あまり上手く動かないんだ」
動かすと痛みを伴うせいか、つい庇うように隠してしまう黒い右腕を
「……今度、時間がある時に
「武器商人って、実は武器商人じゃなくて医者だったのか」
「まさか。手術なんて細々したのは出来ないよ。大雑把に似た様なのはするけど」
「十分すごいと思う」
「そぉ? ありがとねぇ。可愛らしいこと、キミは」
そんなこんなで話しているうちに目的地に着いたのか、
「『水澄堂』?」
「ヒヒ……入ってごらん」
「武器商人。これは? これが食べられる宝石?」
「その通り、琥珀糖だね。この店は色んな味と、色と、形で売ってくれるんだ」
「こはくとう……」
夢心地で店内を回るランドウェラ。空を閉じ込めた様な青い琥珀糖はソーダ味。オレンジ色はみかん味、黄色はレモン味……菫の香りを移した紫色の琥珀糖なんてのもある。形も何故か趣を感じてしまう不揃いな形とか、花の形を模ったものとか、星の形とか様々だ。暫く何もかも忘れて琥珀糖に見入っていると、上品な着物を着た老年の店員が話しかけてきた。
「試食されますか?」
「いいの?」
「はい、はい。ぜひとも」
ぜひ試してみてください、と穏やかに笑う店員からランドウェラの手にころんと青いソーダ味の琥珀糖が1つ乗せられる。不揃いな断面が店内の光を反射してキラキラと光り、それがあんまりにも綺麗なものだからランドウェラは食べるのを躊躇ったが、
ぱきっ、しゃくっ、ざく、ざく、じゃくっ……。
「……!」
琥珀糖の表面は意外に硬質で甘く、噛み締めると中からぷるり、とろりとしたソーダ味のゼリーの様なものが飛び出してきてなんとも爽やかな味わいだ。ちょっとだけ見た目はこんぺいとうみたいなのに、こんぺいとうとは全然違う。それがまた──
「すごく美味しい……!」
「気に入ってくれた様だね。連れてきてよかった」
どことなく幼く笑うランドウェラに、
「好きなものを選ぶといい。代金は
「………………全部!」
うン。間違ってはいないのだろう。武器商人は苦笑した。
この後。お店で販売されている琥珀糖をちょっとずつ詰めたセットがランドウェラに贈られた。暫くの間、いつものこんぺいとうの瓶の他にも琥珀糖を詰めた瓶を持ち歩く珍しいランドウェラの姿が見られたとか。