SS詳細
故に、偶像から只人へ
登場人物一覧
名前:エルナ
一人称:ボク、私
二人称:あなた、呼び捨て
口調:です、ます/(時々)だ、だな、だろうか?
特徴:星屑を映した身体、黄銅色の角
設定:
エルナは元々、或る少数民族が住まう村の一角に存在した祠で暮らしていた精霊種である。
物心ついたときからそのように在ったエルナに対して、その存在を初めて知った村人たちは村内の人間とかけ離れた風貌ゆえに畏怖と敬意を抱き、「気づいたときには村の祠に居た」と言う本人の証言もあって、何時しかこの幼子は『星神様』と言う名で慕われるようになっていった。
現在に於いてもその関係は続いており、エルナ自身も(発端はどうあれ)今の自分に接してくれる者たちに敬愛の念を抱き続けている。
村の人間と関わるようになって以後、エルナが始めたことは『情報収集』だった。
事象や現象から個体へと実を結ぶ精霊種に於いて、エルナが確立した自己は余りにも曖昧であり、そのルーツが『星屑』に在ると言うこと以外は自身についての何もかも分かっていない、と言うのが現状だ。
だから、エルナは知識を求めた。それは自らの出生に関わる出来事に限らず、自らが住まう村の事、村人たちの事。村の外の世界のことや、生活の知識等、種々様々なそれらを、貪欲に。
何故なら、それもまたエルナの本質――「自らがやりたいこと」を探すための蒼路であったが為に。
幾許かの月日が経つ。
エルナが出会った頃の子供が老人となるほどの年月。それでも変わらぬエルナの容姿を恐れる者が僅かながら現れ始め、本人がそれに居心地の悪さを感じた時、星屑の幼子は一人の青年と邂逅を果たす。
カペルと言う牧師の男性は、未だ知識の蒐集に明け暮れていたエルナの良き相談役となった。小さな村の中の知識しか持たぬ村人たちの中でただ一人、彼だけは村の外の広大な知識と意見をエルナに教え、だからこそエルナは彼との会話の果てに自らの「やりたいこと」を見つけ出したのだ。
『知ってるか?』
『人を救おうとする奴、知りたがりな奴は、白い服を纏ってるんだと』
『塵屑で固められたアンタには、きっとお似合いの色だろうよ』
村の人に、カペルに。
自らが「そうしてもらった」ように、自らも他者を救いたい。その思いこそが、エルナが初めて抱いた自分の意志そのもの。
それを叶えるために、エルナは村を旅立った。特異運命座標と言う立場をすら担いながら。
おまけSS
上述のように変化しない様子を恐れた村人たちを識って以降、エルナは村の外の――と言うより、初対面の人間に対してはなるべく丁寧な口調、応対を以て接することを心がけている。
この辺りは自らのルーツを模索している中、転じて自己と言う存在に対する自身の無さから生じた、どちらかと言うと悪癖ともとれるものである。
……村の中で出会ったカペルのように、何れこの『癒し手見習い』が己を取り繕うことなく接することが出来る者が増えて行けば、そうした強さは徐々に確立していくことだろう。
それがこの先叶うか否かは――エルナ自身の努力と、ほんの少しの「出会いと言う偶然」に委ねられている。