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蝶々と並べ立てられる思考の限られた抜粋ないし捻じれの関係への
登場人物一覧
始めに断りを入れておくのだとすれば、これは思考の垂れ流しのようなもので、精緻に綿密に組み立てられたレポオトの様なものではないということだ。思考とは常にひとつの道筋を辿る電源ゲエムの如き体裁を為してはおらず、あちこちに反れ、折れ曲がり、本人にしか理解できぬロジカルをひとつ飛びふたつ飛びに形成し、自身の中で解釈済みの項目には解釈も入れず飛躍するものであるという事を、どうか御理解の上で頂きたい。
小さく内心で溜息を吐くという行為に果たして意味があるのかどうかは甚だ疑問らしい疑問を挟まざるを得ぬという下りで始まったならばこれがもしや人に言い聞かせる想定を――整理しよう。
実際の所、呆れて物も言えぬとはこのことだ。否、このことではないのだろうか。否しかし、誰も聞いていない耳を貸してくれようもないそのような余地もないと理解している上で苦言を呈すのであれば、例え肺がはちきれ喉が割けんばかりの大音声で喚き立てていたとしてもそれは話していないということと同じではなかろうか。抑が言語とは明確なコミュニケイションを図るべく人智を持って製作された一種の――整理しよう。
つまりはこういうことだ。物語とは劇的を区切るべきなのだ。無数の悲劇が喜劇が存在して存在することは一向に構わない。寧ろ奨励しよう。この世ではないこの世は無限に脳内で生み出され、溶け合い、混ざり、犇めき合っている。犇めき合っているのだ。綯い交ぜに。ごちゃ混ぜに。出鱈目にだ。堪えられるのかいいや絶えられない。絶えやしないのだあれらは。あれらは。あれらは。長々と年表を書き綴り終には小さなほんの小さな何事もない農奴の濃度の障害までひとつまみすら余さず嗚呼嗚呼ジョンにでもなったつもりか――整理しよう。
つまりだ。その。嗚呼――整理しよう。
ともかくだ。とも、かくだ。区切るべきだ。区切るべきなのだ。纏め、絞り、主旨を持ってひとつの物語の体を保つべきなのだ。世界は続くだろう。人類史は終りが見えないだろう。少なくとも生物の繁栄と消滅と再生と構築と踏襲と降臨と駆逐の地繋は今この瞬間からも永劫に永劫に永劫に永劫に終わりやしないだろう。そういうものだ。例え誰ひとつの観測者が残っていなくたって時間という不確かで曖昧で一方通行で不謹慎なものが走り続ける様を例え大いなる一柱であったとしてでさえ留めることは不可能だ。量子学は嘘をついている。箱の中の猫は死んでいる。毒ガスが籠もっていると知っている箱を誰も開けたりはしない。それはつまり死んでいるということだ。遅いか速いか何時になるかどの時点でかということを問題にはするべきなのかもしれないが死んでいるという結末を――整理しよう。
時間は誰も支配し得ない。時間軸上における一方通行や止まらない流れに抗うことは可能かもしれないが、それを支配とは言えない。否定とすら呼べやしない。湯だった水はやがて消えてなくなるかもしれないが、それは消滅とは言えない。液体というカテゴリから移行しただけで世界には変わらず存在している。目に見えなくなることが消滅ではない。寧ろ視認できないということは敗北ではなかろうか。深淵が深淵で深淵を覗いても深淵と覗かれ深淵と、今目があった、それと同じ様に、こんにちはロナウド、実際は何者をも待て。待て。待て。今、嗚呼、こんな話だったろうか――整理しておきます。
そう、そうだ。核心は……それ、美味そうだ。ああ、とても良い匂い。夕食はカレーライス? 羨ましいよ――整理します。
……。
…………。
………………。
核心って何だったっけ――整理します。
恐怖とは何か。死の恐怖とは死後の世界を想像も信用も出来ないからこそ発生するものなのだとすれば、超常の存在や亡霊魍魎の類を恐怖する理由とは何か。死後が解明されるのであればヒトは一切の恐怖を失くすのか。怖いという感情は怪談というファクタアと著しく矛盾するのではなかろうか。そもそもがノイズノイズノイズ混ざるのは辞めて頂きたい干渉してここぞとばかりに奇妙な珍論を並べ立てるのは取り下げて頂きたいここは我等『物語』の――整理をお願いします。
履き違えている。履き違えているのだ。混沌の寄り添う結末も恐怖に深淵から掴まれる瞬間もただ垂れ流しにして良いものではないのだ。余韻のひとつも消え失せた後に物語の終末を持ち込んではいけないのだ。この世が静止する瞬間が結末であって良い筈もない。読後感を大事にして頂きたいと我等ぼくら『物語』の待て今の誰だ――整理しないそうだ混沌だ混ざりあうのだぐるぐるとぐるぐるとぐるるぐるぐるうるううぐと新しい物語が物語がいくつも生み出されてはうんざりする程世界は終わらないのだから積み上げられた猫の箱は今も来るな来るな来るな中に誰も居ないお前も同じだごちゃ混ぜに綯い交ぜに滅茶苦茶に出鱈目にあの星の彼方に見える一筋の眩いh