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『イレギュラーズ』ヨハン=レーム

登場人物一覧

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者

 ヨハン=レーム。
 おおよそ彼は、鉄騎種らしくはない。
 腕っ節はあるが、頭蓋骨の中に詰まっているのは脳みそであり、残念ながら筋肉ではなかった。

 兵士になったらどうだろう。優秀な兵士となる素質はあるだろう。
 士官になったらどうだろう。嫌われそうだが優秀な指揮官の素質があるだろう。
 闘士になったらどうだろう。若くして高ランクに居座ったに違いない。
 いずれにせよ一流の成果を残したことは、疑いようもない。
 けれど父――バルド(天才剣士)とは違う。

 仮に軍で仕事をするならば、どうなるだろう。
 ヨハン自身は、馬鹿な命令を守って惨事を引き起こすことと、命令違反を犯しても成果を残すことを選ぶなら、間違いなく後者を選ぶであろうから、軍人には向いていないと感じている。
 軍人が命令に背くなら、組織として成立しないのは、ヨハンの考えでは自明だからだ。
 実際のところ、多くの帝国人はそれすらも気にしない(そもそもこの国では難しい命令自体が下されず、守るべき規律範囲があやふやすぎる!)のだが、さておき。

 少年の頃からヨハンの胸を焦してきたのは、常にそんな忸怩たる思いであったろう。
 もう少しいえば、ヨハンを『一流』と捉えるのは『周囲の人間』であり、ヨハン自身は、そんな事はつゆほどにも考えていない。
 たとえば自身が剣士になったとして、到達すべき最低ラインはバルドなのだ。
 なりたいものは、ラド・バウで立派に生計をたてている、売れっ子B級闘士あたりではない。

 けれどイレギュラーズとなったヨハンは、仲間達と共に伝説的な偉業を次々になしえている。
 これは父バルドなどでは全く到達しえない高みであることを疑う余地はない。

 多くの鉄騎種であればそれを誇り、胸を張るだろうが。
 けれどヨハンの胸中はきっと未だに焦げ付いているのだろう。

 しかしその怜悧な頭脳は、イレギュラーズとしての活躍が祖国へ貢献することを理解している。
 よくよく口の端にも、そんな言葉を乗せもする。
 彼自身が内心、それをどう感じているかは、全く別の話だというだけだ。

  • 『イレギュラーズ』ヨハン=レーム完了
  • GM名pipi
  • 種別設定委託
  • 納品日2022年09月13日
  • ・ヨハン=レーム(p3p001117
    ※ おまけSS『『剣聖の子』ヨハン=レームと妹のような存在のこと』付き

おまけSS『『剣聖の子』ヨハン=レームと妹のような存在のこと』

名前:『剣聖の子』ヨハン=レーム
年齢:13歳!
設定:
 帝都に佇むレーム家の近くに小さな公園があった。
 母の買い物に付き合わされた帰り、母が急に軍服の夫人と話し込み始めたものだから、ヨハンは面倒くさそうにベンチへと座り込む。
 少年は写真で見る若き父に似ていたが、気質はずいぶんと違っていた。
 どちらかといえば陰気な皮肉屋で、運動よりも勉学のほうが得意でもあった。それに女の子みたいとも言われる。一人前の剣士を目指していたが、自身にその才能があるかは疑わしい。
 無論、ヨハンはかなり器用なタイプであり、運動にせよ武術にせよ後れを取るようなことはなかった。学校ではなんら問題なく優秀な成績を叩き出してはいる。けれどある種の天才的な素質を持つ戦士が子供の頃に見せるような片鱗――たとえば父が残した成績のような――が、まるで見えないではないか。
 贅沢な悩みなのではあろうが、少々ひねくれだした切っ掛けだったのかもしれない。
 思い出すと気恥ずかしいが、反抗期というやつだろうか。

 少しいらつきながらベンチに座っていると、軍服の夫人が連れた少女に服を引っ張られた。
 完全に子供である。まだ十歳にもなっていないだろう。
「あなたにあそんでもらえって」
「はあ」
 エヴァと名乗った金髪碧眼の少女は表情に乏しく、いかにも内気そうな様子だ。
 こうしてヨハンは半ば嫌々ながら、この『母の友人の娘』と遊んでやるようになった。
 頻度は多くない。
 彼女の家にはメイドが一人いるらしかったが、時には忙しいこともあるらしく、大抵はそんな時。
 なんだか『妹みたいだな』と思っていたのを思い出す。

 けれど年月は流れ、彼女はある日から全く来なくなり、ヨハンも彼女のことなどすっかり忘れてしまった頃だったろうか。彼女の家が取り壊され、アパルトマンになった事を知った。
 後で聞けば彼女の両親は南部戦線で亡くなり、彼女は単身で軍学校の寮に入ったのだと言う。
 たしか「まだ小さいのに立派ね」なんて話を聞いて、「どうせ僕は立派じゃない」なんて、少しふてくされたような。両親はヨハンを認めているというのに、認めていないのは自分自身だけだというのに。

 ラド・バウで出会った少女を打ち負かしてからしばらくたった後。
 リーヌシュカと名乗った少女の口から、例の公園の話がこぼれ落ちた時には衝撃を受けたものだ。
 背は少しだけ高くなり、肩で切りそろえた髪は長く伸び、大人しかった性格は、元気はつらつそのものだったのだから。

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