PandoraPartyProject

SS詳細

ようこそロリババア牧場

登場人物一覧

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
ロク(p3p005176)
クソ犬

「ねえ、こんぺいとう食べる?」
「良いの!? ありがとう!」
 ランドウェラ=ロード=ロウスの差し出したガラス瓶の中で、たっぷりと詰められた金平糖が陽の光を浴びてきらきらと輝いている。尻尾をちぎれんばかりに振って喜ぶロクが、そのうち一つを受け取り口に放り込むと、目をぱあっと輝かせた。
「なにこれ初めて食べた! しゃりしゃりして甘い! 全部ちょうだい!」
「え、それは嫌だ」
 途端に顔をしかめ、すっと衣の陰に瓶を隠すランドウェラ。しつこく飛び跳ね金平糖をせがむ、さながら腹を空かせた犬のようなロクの猛攻をひらりひらりとかわしながら、彼は遠く地平線の方を見やった。……が、見えるべき地平線は見えず、本来であれば緑豊かなはずの大地は埋め尽くさんばかりの人面ロバ、ロリババアの群れによって彩られていた。概ね茶色で。

 ランドウェラは、幻想のロリババア牧場に来ていた。牧場主のロクとは、とある餃子焼き会場で少し言葉を交わした程度であったが、『うちの牧場にいっぱいロバいるから、いつかその子たちも連れてきて!』と地図を渡されていたのだ。その地図をいざ読もうとすると、彼の飼いロリババアである紅葉とムギによりバリバリに食い破られ、破片も残さず唾液で判読不能となってしまったので、人づてに訪ね歩き、今日ようやくたどり着いたのだ。そして彼は現在、ロクの案内により、牧場の一角に置かれた『精肉コーナー』と手書きの看板を掲げる、大きな機械の前にいるのであった。
「この機械、練達製の特注なんだよ! ランドウェラさん、練達じゃ有名でしょ? 来てもらえてうれしいから、今日は特別にこの機械動かしちゃうね!」
 安全装置を外し、慣れた手つきで機械を作動させるロク。最後にコマンドパネルに1129と打ち込むと、ごうんごうんと大きな音を立て、機械が動き出した。油圧パワーユニットに繋がれたカゴ状の昇降機が開き、中に吊り下げられたゼシュテルパンの匂いに引き寄せられるように、とあるロリババアが群れから1頭離れ、カゴに吸い込まれていったのを、1人と1匹、そしてその他のロリババアたちは金平糖をしゃりしゃり言わせながら見守っていた。
 カゴの扉が重々しく閉まり、鈍い銃声のような音が聞こえた後、機械はフルパワーで動き出し、しばらく後に排出口からごろん、と大きな肉塊が転がりでてきたところで、ランドウェラは、あははと乾いた笑いを浮かべた。
「えっとー、これはどういう機械? 今入ったロリババアはどうなったの?」
「精肉したよ!」
 ニッコニコの笑顔を向けるロク。
「そっかぁ、僕はいいけど、他の人にも見せるつもりなら予め説明しておいた方がいいかもよ? ところでこの肉どうするんだい? どこかに売るのかな」
「枝肉じゃないんだよ!? もちろん今食べるんだよ! ほらメカ子ロリババア、焼肉するからテーブルと椅子持ってきて!」
 ロリババアの群れに紛れて金平糖を噛んでいた、金属の身体を持つメカ子ロリババアたちが、ガシャンガシャンと音を立て、不器用ながら素早く青空焼肉会場の準備をしていく。ロクに促されランドウェラが椅子に腰掛けると、目の前に別のメカ子ロリババアが横向きで座っている。
「ロク、焼肉と言うには焼く網がないよ」
「メカ子ロリババアで焼けるよ! このメカロバね、放電するとすごく熱いんだ!」
 ロクが切り分けられたロリババア肉をメカ子ロリババアの背中に乗せると、じゅうっと音を立て油が跳ねた。熱量は十分そうだ。傍から見れば異様なサマではあるが、ランドウェラは至って普通の、どこにでもある光景として受け入れ、メカ子ロリババアで焼かれた仕留めたてのフレッシュロバ肉を口に運ぶ。臭みが少なく、やや硬めの肉をがぶりと噛めば、馬と牛の中間のような味わいの肉汁がジュワッと口の中に広がった。だがしかし、そんな繊細な味をゆっくり楽しむよりかは、自称10歳の彼はわかりやすい味を選んだ。
(ーーなんたって僕は子供なんだから)
 ランドウェラはおもむろに立ち上がると、待ってましたと言わんばかりにロクが差し出す焼肉だれを受け取り、深皿になみなみと注ぐと、すべての肉をそこに突っ込んだ。しばらく浸したのち、あつあつ白米に大量の肉をべべんと乗せ、これまたたっぷりと焼肉だれをかけ、熱々のうちにハッフハッフ口にかきこめば、思いっきり焼肉だれの味が口の中に広がった。めっちゃうまいじゃん。
「ーー生卵、あるよ?」
 ランドウェラは無言で頷いた。

 大いに食事を楽しんだ1人と1匹は、牧草の上に座り、ロリババアたちの群れの様子をぼんやりとながめていた。ロリババアたちに少しずつ掠め取られたので、瓶の中の金平糖はかなり量を減らしていたが、お詫びの印としてロクがへし折ったメカ子ロリババアの耳が、かわりに瓶の中に収められている。薄く七色に光る受信装置の耳は、少しだけこんぺいとうの色合いに似ているようだとランドウェラは思った。
「もう夕方になるね。あの機械はいつ止めるの?」
 ごうんごうんと動き続ける『精肉コーナー』。カゴの中のロリババアを引き寄せる材料は毎回変わるようで、今はおっさんの靴下が吊り下げられている。目の色を変えたロリババアがカゴ内に突撃し、ごろんと肉塊となって出てくる一連の流れがずっと繰り返されていたので、ランドウェラもそのうち興味を失っていたが、さすがにずっと稼働していたら、この牧場のロリババアはあっという間に全頭精肉されてしまうだろう。
「あ、ちょっと忘れてた! 今止めてくるね!」
 急いで駆け出すロク。その様子を微笑ましげに見ていたランドウェラだが、次の瞬間、彼は血相を変え叫んだ。
「紅葉、紅葉! そっちに行っちゃだめだ!」
 再度開かれたカゴの中には、大量の落ち葉が敷き詰められていた。紅葉の大好きな、落ち葉だ。止まる素振りも見せず、振り返りもせず、一目散に紅葉は『精肉コーナー』へダッシュする。絶望するランドウェラの中で、紅葉との思い出が蘇る。あれは確か、ロバ餃子会場での出来事。紅葉は同じ古ロリババアの肉が入った餃子をそれはそれは美味しそうに食べてーー。あとはなんだっけ、思い出せないや。
 紅葉はたいそうお年を召した古ロリババアであったので、ランドウェラが必死に記憶を捻り出している間も幻想カタツムリより鈍い速度で頑張って歩いていた。思い出すのを諦めたランドウェラはとりあえずライトニングを放ち、周囲のロリババアごと紅葉を痺れさせ、事なきを得たのであった。
「ランドウェラさんさっき叫んでたけど、なんかあった?」
「ううん、なんでもないよ」
 機械を止めて戻ってきたロクの問いに、ランドウェラはにっこりと答えた。紅葉と十数頭のロリババアたちは白目を剥き口から泡を吹いて倒れていたが、数分後にはむくりと起き上がり何事もなかったかのように草を食み始めたので、この生命力を見習いたいとランドウェラはそっと思った。

 牧場のロバたちの背中が夕陽の赤に染まっている。もう帰らなくては。
「今日は来てくれてありがとう!」
「また来るよ、ところでロク、君は獣種なの? それとも犬の旅人?」
「コヨーテの獣種! 犬じゃない! ほら、どう? 立派な獣種の大人だよ!」
 語調を強めたロクは、すぐさま変化スキルを使い、人の姿をとって見せたが、ランドウェラは違う方に気を取られていた。

「ロク……君、女の子だったんだ??」

  • ようこそロリババア牧場完了
  • NM名ハイエナ
  • 種別SS
  • 納品日2022年08月31日
  • ・ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788
    ・ロク(p3p005176

PAGETOPPAGEBOTTOM