SS詳細
鏡に映る影
登場人物一覧
名前:チアキ
種族:夜妖
性別:女性
外見年齢:12歳ほど(実年齢は不明)
一人称:私
二人称:貴方、~さん、明煌さん、廻さん
口調:です、ます、ですか?
特徴:儚げな美少女。銀の瞳。美しい黒髪。前髪は切りそろえられ、後ろ髪は長い。所謂姫カット。
設定:
煌浄殿の呪物の一人。
人々の姿を映し出した『鏡』に魂が宿った夜妖。
姿をそのまま反射するだけだった鏡が人々のほんの僅かな願いによりカタチを持った。
<千晶>という名は幾千もの願いの輝きだ。
彼女が煌浄殿に封じられたのはコウゲツよりも前なのは確実だという。
封じられてからの殆どを呪物殿の中で眠っているチアキを見た事のない呪物も多かった。
前回起きたのは明煌が煌浄殿を継いだ時だ。
優しく微笑み、言葉を交す事もなかったチアキを明煌さえ忘れていてしまっていた。
されど、つい先日彼女は眠りから覚めた。
呪物殿を出て道の真ん中で佇んでいたチアキを明煌は訝しげに睨んだのだ。
「明煌さん、お久しぶりですね」
「お前は……」
「ふふ、覚えていないのも無理はありません。以前お会いしたのは貴方が煌浄殿を継いだ時ですから」
チアキはゆっくりと明煌に近づき微笑む。
「大丈夫ですよ。私はここの呪物です。貴方の所有物」
いつの間にか手にしていた『鏡』をチアキは明煌に差し出した。
「この鏡には貴方の大切なものや見たいものが映ります」
「は?」
突拍子も無い言葉に明煌は警戒を露わにする。
夜妖というものは気を抜けば陥れようとしてくるもの。
「貴方には何が見えますか?」
チアキの持つ鏡に映り込むのは、『廻の背丈ほどの暁月の姿』だ。
幼少期でもない。大人でもない。
暁月が燈堂に行って数年経った、ある年末の久し振りの――少し成長した姿。
何も無かったみたいに話しかけてきたあの日の。
「黙れ……ッ」
赤い縄で鏡を払った明煌は激情のままチアキを殴ろうとして。
歯を食いしばり、踵を返した。殴っても意味なんて無い。
チアキに悪気なんて欠片も無いのだから。
「二度とそれを見せるな」
去って行く明煌の背を見つめ、チアキは優しく微笑む。
「……さて、今回は少しだけ長めに起きていましょうか。色々動きがありそうですし」
暁月が映り込んだ端に僅かに誰かの影が見えたのだ。