SS詳細
金木犀の香り
登場人物一覧
名前:コウゲツ
種族:夜妖
性別:男性
外見年齢:28歳程(実年齢は不明)
一人称:私
二人称:君、呼び捨て、明煌、廻
口調:かな、だよ、かい?
特徴:薄金色の長髪、エメラルドの瞳、かなりの美形。髪に金木犀の花がぽつぽつ付いている。
設定:
煌浄殿の呪物の一人。
金木犀の夜妖。漢字は<香月>と書く。
いつも良い花の香りを纏わせている美青年。
元々は深道本家の近くにある神社に植えられていた金木犀。
長い年月を掛けて魔力を溜め込み、人を惹きつける夜妖となった。
神社からの願いにより煌浄殿の先々代深道輝一朗が封じた。
明煌より前に煌浄殿へ住んでいる古株の一人だ。
小さな頃から明煌を知っているので、彼の事が気に入っている。
性格はとても温厚であり頼れる兄貴分だ。
けれど、自分のお気に入りへの独占欲は強い方である。
主である明煌は勿論のこと。最近入って来た廻もお気に入り。
「ねえ、明煌。廻で遊んでいいかな? 壊さないようにするからさ」
「……」
この時の明煌の無言は「面倒だから勝手にしろ。ただしやり過ぎたらお仕置き」という意味合いと捉えたコウゲツは廻で遊ぶようになった。
柔らかな花の香りと共に現れたコウゲツに警戒心をすぐに解いた廻。
無愛想な明煌と比べればコウゲツは話しやすかったのだろう。
自分の呪物殿へ廻を連れてきたコウゲツはハーブティーに花蜜を入れる。
強い魔力が籠った花蜜は酒と同じように廻を酔わせた。
くったりと横たわる廻を抱き上げて子供をあやすように揺らす。
「ふふ、人形みたいだね。可愛いね」
コウゲツは廻の胸に顔を埋めて香りを吸い込んだ。
お気に入りの香りと、それとよく似た血縁の匂い。それに呪物とコウゲツの知らない者たち。
「甥っこの匂いより、もう明煌の方が強い」
それだけ近くに居るからだろう。きっともっと煌浄殿の香りになっていく。
コウゲツはそれが少し嬉しい。廻が明煌の物になっていくのが嬉しいのだ。
それはコウゲツにとって『お気に入り』が増えることと同じだからだ。
自由にならない身体と恥ずかしさに頬を真っ赤に染める廻の涙をそっと掬い上げる。
「大丈夫、心配いらないよ。変わって行く事は怖いかもしれないけど明煌や私が居るからね」
瞼の上に手を置いたコウゲツは廻の視界を優しく暗闇で覆った。