PandoraPartyProject

SS詳細

弾丸に金平糖

登場人物一覧

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
コヒナタ・セイ(p3p010738)
挫けぬ魔弾

「やあ、僕はランドウェラ=ロード=ロウス、好きに呼んでおくれ。 はじめましてかな? よろしくー」
 そう言って笑顔で手を差し出すランドウェラに、コヒナタ・セイはややあっけにとられながらも応じた。
「どうも、よろしくお願いします、コヒナタ・セイです。 こちらもどう呼ぶかはご自由に」
 いつものコヒナタの取り繕うような『キャラ作り』の面影は、今はない。
 なにせ、今この二人が一緒に行動を共にするのは、傭兵ラサ内で行われている『ウォーカー狩り』に駆り出されたためだ。文字通りウォーカーを狙った殺傷沙汰で、被害者は戦闘能力がある名の知れたウォーカー五人。内三人が軽傷、一人が重傷、一人が死亡。
 犯人の目星はつかないが、活躍しているウォーカーを狙っているということが共通点。囮作戦が有効とされ、ことによっては殺害しても構わないという指示が下り、腕前のあるウォーカーであるこの二人が抜擢されたという次第だ。
「犯人、なんでウォーカーを狙うんだろうね?」
「さぁ? 無闇に人を襲うのに理由があってもなくても」
 困りますね、と続けるコヒナタは、早速ライフルの整備を行っている。
 そんな様子を、ランドウェラは、じい、と珍しいものを見るように見つめている。
「銃ってかっこいいなぁ」
「そうですか? 私にとってはただの仕事道具です」
「ねえ、『ウォーカー狩り』、理由知りたくない?」
「知ってもどうにもならないでしょう」
 淡々と述べるコヒナタに「まったくもう、そっけない」、と唇を少し尖らせたあと、ランドウェラもまた自分の服装や得物を確認とした。今回は――『偵察ごっこ』の格好。


 ●
 事前にランドウェラの情報を流していた情報戦が功を奏したか、『ウォーカー狩り』の出現は早かった。
 深夜から早朝にかけての人気の少ない闇市の外れ。そこにランドウェラが斧や弓の大荷物を背にぶら下げながら歩いていると、フードの人物――体格からして男だろう――が目の前に立っていた。
「ねえ、なんでウォーカーを狙うの?」
 へらりと笑って問う。相手は答えなかった。
「――覚悟」
 その一言から弾けるように相手とランドウェラが接近し、激しい金属のぶつかり合う音が響き渡った。
 ランドウェラの斧と相手の剣の一瞬の鍔迫り合い、直後破裂するような音が響く。撹乱のための煙幕を地面に向けて投げた男は、姿勢を変えて地面を蹴った。不意を打たれた形のランドウェラはそれでも相手の飛びかかりながら振り下ろされる剣を斧で受け流す。
「なんでもありかぁ」
 ぼやき、ならばこちらもとばちりと右腕に収束する雷撃の準備。男がそれを避けようとまた姿勢を変えた瞬間、男の膝を弾丸が穿った。
 ――遠くの建物から、ライフルのスコープ越しに戦闘の経緯を見ていたコヒナタは、煙幕の中でも相手を逃さないために、相手とランドウェラの影を捉えていた。ランドウェラのはためくマントを縫うように、膝を狙われて姿勢を崩す男に、さらに弾丸の追撃が加わる。
 色々聞きたかったけど、残念。殺されてあげられないし。
 ランドウェラが心の中でひとりごちたあと、雷撃が相手を飲み込んだ。

 
 ●
「貴方には前に出てもらい、私は建物の屋上から相手を狙撃します」
 闇市の外れの地図を手に、赤い丸を二箇所に付ける。
「囮役を担当させてしまい、大変申し訳ないのですが……」
「いや、適材適所ってやつでしょ」
 ふにゃりと人好きのする笑顔に、コヒナタは思わず少し眉を下げて笑った。
 緊張感があるのかないのか、ともあれランドウェラのどことない幼さにコヒナタは毒気を抜かれていく。
「狙撃による妨害は得意です。貴方のことは必ず傷つけさせないようにいたします」
 なんだ、結構良い人じゃん。ランドウェラはうんうんと頷く。
 終わったら何か奢りましょうかね。コヒナタは自分の財布事情を考えていた。
「そうですね、それと、相手の正体が不明な以上、万全を期すために装備は……」


 ●
 ――おかしい。
 手練のウォーカーを複数襲っている相手だ。いくら自分達の連携が取れていて、相手の上手を取っていたとしても、あっさりが過ぎる。
 雷撃で倒れたはずの男は、また立ち上がる。まだやるか、と身構えるランドウェラに、男は口端を吊り上げた。
「……『あと一人』、見つけた」
 ランドウェラは目を見開いた。
「――ッ! コヒナタ! 『あと一人』いる!」
 ランドウェラの叫び声の後、相手の重たい剣が振り下ろされた。今度は先程と違って肩から内臓にかけて響くような、そんな一撃。――相手も自分と一緒か追い詰められるほど強い
 剣を奮ったあと、男は蹴りをランドウェラに食らわせる。
 受け身をとりつつも吹き飛んだランドウェラは思考を巡らせた。この場の最適解のための思考を。
 
 
 ●
「なんでウォーカーを狙うんですか」
 突然現れた気配。気配遮断能力があるのだろう、狙撃に集中していたコヒナタが相手の存在を悟るのは些か遅かった。しかし振り返らず、スコープ越しにランドウェラと交戦中の男を観察しながら、コヒナタは問う。
「お前らが憎いから」
 女の声だった。
「そうですか」
「お前らのようなのが来たせいで、私達は仲間を喪って――……」
「これから私を殺そうとする人の事情は、どうでもいいです」
 相手が得物を抜いて近寄る音が聞こえる。軽い金属の音だった、ナイフだろう。尚もコヒナタは振り返らない。
「『相棒』が貴方がたの事情を知りたがっていましたが、教えるに値しません。 しょうもない」
「お前……!」
 感じる膨れ上がる殺気。相手の急接近を感じる。コヒナタは、尚も、振り返らない。

「がッ……!?」

 相手の悲鳴が響いた。
「なーいす」
 ぼやくコヒナタは、斧を投げて相手を吹き飛ばし、弓に装備を変え、こちらに、正確には女に弓を向けているランドウェラの姿をスコープ越しに確認していた。振り返らずとも、女が致命的な攻撃を受けて動けないのは、血のにおいと、ぼとぼとと響く流血の音で分かる。
 立ち上がり、ランドウェラに襲いかからんとする男。その頭に、コヒナタは狙いを定めた。
 そうして全てが一瞬の内に終わる。



「結局なんで『ウォーカー狩り』にまで二人を駆り立てたんだろうね」
「さあー、存じ上げません」
 貰った報酬でラムの肉を食べながら、コヒナタはランドウェラの問いに適当な返事を返す。
「そもそも、相手にどんな深ーい事情があろうが、やられる側としては理不尽に違いありません。 それを懸案するの徒労です」
「難しいことを言うなぁ……でもまぁ、事情があったとしても、もっと最善を尽くしたらどうにかなったかもね」
 最善。その言葉を聞いて、コヒナタは考える。
 あの二人が『善』を尽くしていたら、確かに、もっと違う結果だったろう。
 調べた結果、あの男女は、他にもうひとりが仲間おり、三人で組んで様々な活躍をしていた者だったと分かった。しかし、最近現れたウォーカー……それもかなり悪性の強い者にそのひとりが殺されてしまい、恨みから凶行に至ったというのが結論となった。
「どこも恨みつらみは御免だね」
「え? 何か言った?」
「なんでも」
 コヒナタの言葉に首を傾げたあと、ランドウェラは肉を食べ終えたコヒナタに向かって小瓶を見せた。中には、きらめく金平糖。
「ね、これ、食べよう! こんぺいとう」
 子供のようだ。
 コヒナタは苦笑して、ではデザートとして、と快く返答した。

  • 弾丸に金平糖完了
  • NM名tk
  • 種別SS
  • 納品日2022年08月28日
  • ・ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788
    ・コヒナタ・セイ(p3p010738

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