SS詳細
眩しい君へ
眩しい君へ
登場人物一覧
大人というものは不可解で、理不尽である。
幼い頃の明煌はそう思って生きて来た。
能力を持った明煌を言いくるめて制御したい大人が多く居たからだ。
明煌の言葉は意味を成さず。信頼は裏切られ、理不尽に涙した。
だから、人と距離を取り一人で居る事が多かった。
必然的に、嘘も偽りも無い呪物や怪異を友とするようになった。
それに近しい子供とは話す事はあるけれど、やはり大人を相手するのは苦手だった。
暁月は特別。それ以外はどうでもよかった。
「明煌さん! 今日も眉間に皺が寄ってるであります!」
目の前に駆けよってくるムサシはいつも笑顔で声が大きい。
最初はこの騒がしさが苦手だった。
静かな時間をたたき割って押し入ってくる元気な声。
頭を掴んでぐるぐる回しても、邪険にしても、ムサシはめげずに明煌に笑顔を向けた。
距離を取っても、ついてくる。子犬のようだと少し笑ってしまった。
暁月は特別。それ以外はどうでもよかった。はずなのに。
ムサシの騒がしさがいつの間にか苦手ではなくなった。
屈託の無い眩しい笑顔を見ると安心する。
大切なものが増えていく。
傷つけた後悔が増えていく。
この手は罪に穢れてしまっているのに。
君は眩しい笑顔を向けてくれる。
それが、少し苦しい。