PandoraPartyProject

SS詳細

あつまれ!未来科学部!

登場人物一覧

イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
イルミナ・ガードルーンの関係者
→ イラスト


 希望ヶ浜学園高等部、その部活棟の一角で今日もなにやら声が響く。しかし周囲の部屋から苦情が来ることはもうない。異臭がしようが異音がしようが『またか……』と思われるだけである。ちなみに一昨日はボヤ騒ぎを出しそこそこ怒られた模様。
「できたッス!」
「……一応聞いてやる。それはなんだ」
 部屋にいるのは颯爽と白衣を身に纏うイルミナ・ガードルーンと田中・暁の二人だけ。部という名目上部員はもう少しいるのだがそのほとんどは名前だけ借りたほぼ幽霊部員である。故になにか騒動を起こすのはほとんどイルミナで暁はその後始末に頭を痛めているのである。
 主な活動内容は『練達で行われる研究を自主的に学園内でも行い、より素晴らしい生活が行えるようにする』という大業なものなのだがぶっちゃけたところイレギュラーズとはいえ今は高校生であるイルミナたちが扱える物品はそこまで大層なものではない。少数のちょっと便利? な物と大多数の何に使うんだこれ……という物で構成されている。
 高校の部活程度だから仕方ないといえばそうなのだが未来科学部で一番未来科学しているのはイルミナ本人である。ロボなので。

「えーっと、これは周囲の熱を取り込んで稼働する送風機ッスね。あ、温度は変えられるッスけど基本は環境温度次第ッス」
「ハンディファンじゃねぇか!」
「そうとも言うッス。あ、ちなみに3分の稼働で1時間の充電がいるッス」
「クソ燃費ッ!」
 というわけで今回は使えなくもないが特に使う必要もない物だった。これは比較的当たりである。練達はその性質上様々な常識当たり前を持つものが集う。動力に関しても電気が当たり前ではない世界も少なくない。劣化になるのか互換になるのか、試してみなければわからない。
「熱エネルギーはやっぱりロスがでかいッスねー。一度電気エネルギーに変換する必要があるのと小型化を考えるとどうしても蓄えて置ける量に限りがあるので直に電気で充電する効率には勝てないッス。でもハイブリッド化すればこれは結構便利かもしれないッスね。レポートに書いておくッス」
「お、おう……」
 早口で所感を述べるイルミナ。部活とはいえ研究の一端を担っているので性能や使い勝手など出来上がった物に関して記録する必要がある。イルミナ自身の出身世界のこともあり、イルミナの作るモノはそこそこ評判がいいらしい。本人も楽しそうにレポートを書いている。
 が、しかし悲しいかなここにいるもう一人である暁は良くも悪くも一般人。平凡な男子高校生にそこまで高度な科学についての知識などあるわけがなかった。使用感などに関しては被験者になることもあるが根本的な部分に関しての知識不足はどうしようもない。勉強はしているが高校で扱う程度ではどうしようもない。そのおかげで成績は上がったが。
 暁自身は未来科学とやらも練達の研究も正直なところ興味はない。最近やや忘れがちだがこの部活にいるのだってイルミナがロボではないかと監視している(という名目)だけなのだ。

「あ、暇ならこの子を使ってみてほしいッス! 色んな意見は大事ッスからね」
「はいはい、でも3分しか使えないんだろ? いちいち充電するのか? 効率悪くないか?」
「そこも加味しての使用感って感じッスね。もう少し稼働時間が欲しいならサイズアップも要検討ッス」
 手渡された送風機は手のひらに収まるサイズ。渡しながらも逆の手はタイピングを続けるイルミナを見て暁はやはりロボでは? と口から出そうになったがぐっとこらえた。
 持ってみると存外軽い。この辺りは便利でいい。ボタンも少なくわかりやすいが……。
「これ、温度調整もできるんだな」
「みたいッスねー。でも熱をエネルギーに変えてまた熱に変えるんでロスが半端ないッス」
 つまりこれはお手軽ドライヤーだった、と。しかしそうなるとはやはり問題がある。
「便利ではあるがやっぱり問題は稼働時間だ。通常使用で3分、温度を変えればもっと短いんだろうしそんな時間じゃ何もできない。でも想像より風量はあるな」
 暁が思いついたことをつらつら喋っているうちに風も止んでしまっていた。確かに3分は短すぎる。昨今は3分でラーメンが食べられるし、TVでやっているヒーローのタイマーも鳴ってしまうような時間。
「暁さんならどう使うッスか?」
「僕なら……そうだな、とりあえずサイズアップは必須。手のひらサイズっていうのは便利だが持ち運んでもできることがないんじゃ意味がない。で、ある程度大きくなってしまうなら設置型にするのがいいんじゃないか? あれだ、トイレについてる手を乾燥させるやつとか。あれなら稼働時間も短くて済みそうだし」
「ハンドドライヤーッスね。確かにその使い方はよさそうッス」
 こんな形で未来科学部では作ってみた物や持ち込まれた物の有用な使い道も考えていたりする。結局のところ技術や物は使ってこそ。それを探すのもこの部活の活動の一つ。
「ほかの人にも聞いてみるッスかねー」
 今この部屋にいるのはイルミナと暁の2人だけ、ほかの部員はほぼ幽霊部員。ほぼ2人っきりで暁としては監視しやすく嬉しい限りなのだがそこそこな頻度でこの部活にはよくわからないメンバーが顔を出したりする。イルミナの知り合いらしいが教師だったり学生だったりはたまた部外者だったり。どういう人脈なのか気になる暁ではあるが変な質問をしてイルミナに怪しまれる嫌われるのが嫌でここまで聞けていない。
 暁はもちろん知らないが顔を出しているのはイレギュラーズたちである。顔を出す理由は暇つぶしだったり、研究に興味があったり、イルミナの顔を見に来ただけだったり様々だがタイミングが合えば部活のお手伝いをしたりもしている。一緒にやらかすこともなくはないが。



 結局あの後も充電の効率化だのエネルギーの変換ロスをどうにかしようだの弄り回していたら日が傾きかけていた。発作のごとく暁は(ここまで機械いじりができるとは……ロボか?)なんて思っていたりいなかったり。
 モノがあればこうしてあれこれしたりもするがもちろん何もない日もそれなりにある。そんな日は2人静かに課題を片付けたり、イルミナが持ち込んだお菓子を食べながら取り留めのない話をしていたり。

 それが未来科学部の日常である。

「書けるところまでレポートも書けたしそろそろ帰るッス。暁さんはどうするッスか?」
「僕も帰るよ。独りでここにいてもすることもない」
 部活が長引いたときはこうして2人で帰ることも少なくない。2人で施錠の確認をし、鍵を返し、学園を後にする。

「んー……どうすれば部員は増えるッスかねー」
「増やしたいのか? 部員」
「だってその方が部活っぽいじゃないッスか!」
 暁からしてみれば現状のままで満足しているのだが……イルミナが部員を欲しがっているのなら手伝うのも吝かではない。なんとかの弱みというやつである。
「いつも来ている人たちを誘うのはだめなのか?」
「あの人たちも忙しいッスからねー。難しいと思うッス」
「それなら別から引っ張ってくる必要があるわけだが……多分普通の生徒は未来科学部が何をしているか知らないと思うぞ。まずは名前と活動内容を売るところからだな」
「うぐっ、痛いところを突かれたッス……」
「今後はその辺も考えるか。僕も何か考えておくよ」
 イルミナは寮住まい。2人での帰路はそう長くない。
「暁さんみたいな人がもっと増えてくれると嬉しいッスねー」
「……僕はうれしくない」
 暁がぽろっと小声で零した本音もイルミナの聴覚センサーは捉えていたが聞き返すのはなんだか悪いことのような気がして聞こえないようなフリをした。寮はもう目の前。
「それじゃ、暁さんまた明日ッス!」
「ああ、また明日」

 イルミナはそのまま寮の中へ、暁は再び自らの帰路へ。2人が別れて正真正銘本日の未来科学部の活動は終わり。
 続きはまた明日。

PAGETOPPAGEBOTTOM