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ランドウェラの記録語り
登場人物一覧
◆始まりは唐突に
ある日の昼下がり、広い部屋の中でランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)はふと考えた。
この世界の記録を続けると元居た世界の記録が失われるのでは、と。
それは駄目だ、元居た世界の記録が失われるのはダメなのだ。
(……しかし、元居た世界の記録が思い出しにくい……他の人に当てはめていくと思い出しやすいかな?)
そう考えたランドウェラは、広い部屋から出て外―――具体的にはギルド・ローレットへ歩き始める。
(「話し相手が居たほうがより思い出すいやすいかも」)という他の考えも浮かんだからだ。
―――因みに、話し相手はすぐ見つかった。軍帽を被った、ローレットの男職員。
そんなこんなで、二人はローレットの中に有る雑談スペースに移動し話し始める事とした訳だ。
◆粉の妖精
椅子に座りながらランドウェラが最初に思い浮かべたのは、フランスパンを出すギフトを持つ黒髪糸目の男性ウォーカー。
「彼は…美味しいパンを売ってくれるところの店主だな!好きだぞ!
パンといえば料理……料理と言えば、僕の世界に料理長はいたが、似てない。似てないな。
どちらかというと、フラワーに似ている。」
フラワーを知らない職員は不思議そうだ。
「……ん?フラワーが何かわからない?
フラワーは古い粉の妖精……簡単に言うと、体がパンで出来た小人達だな。程よい湿度がある場所を好むぞ。
パンではあるが最初の形は粉なのだよ。好む場所で粉を巻くと、パンになる。
パンになるっていうのは後から気づいたから、粉の妖精なんだ。」
何故古い粉なんだい?
そう職員が聞けば、ランドウェラは少し考え。
「何故古い……さあ?昔からいる友人って事じゃないかな? あ、食べれるよ。だけどパンになった状態でその場から出そうと爆発する。」
思わずビビる職員をランドウェラは見て。
「安心しろ、食べたなら爆発しない。何で大丈夫なんだろうな。本望なのか?
実際に本望かは知らないが……でも、美味しいらしいぞ。」
そう言った。
そんな、古い粉……色々とおかしい、小麦粉の妖精の記録。
◆あかいとり
次にランドウェラが浮かべたのは緋色の鷹人、真っ赤な男性スカイウェザーだ。
「鳥……鳥頭。あ、ごめん。真っ赤なスカイウェザーが居ただろ?ローレットで見かけなかったか?」
職員は思い出すように記憶を遡れば、確かにそんなイレギュラーズに見覚えがある。
その記憶の思い出しを促したランドウェラ当人は、何故か表情を曇らせている。
「……実の所、あかいとりには嫌な記録しかないのだよ……。
別にそのイレギュラーズが嫌いというわけではないぞ!
見た目だけで判断するのは駄目とわかっているが、似ているのだよなぁ……。
うむ。すまんな。
で、そのあかいとりはな。すっごくかっこいいんだが性格は最悪だ。
食べるものが食べるものだから仕方ないのだろうが。」
……性格が最悪、そう評されても仕方ないと言える『食べるもの』
〈一体その『とり』は、何を食べるのだろう〉と、思わず呟いた職員を、ランドウェラはきょとんと見て。
「え、あれが食べるもの?」
ランドウェラはあっけらかんと。
「寿命だよ」
そう、言った。
そんな、延々と燃ゆる、寿命喰らう鳥の記録。
◆水髪の君
そして本日終わりに思い浮かべたのは、金の髪を手足の様に動かせる不思議な少女のウォーカーだ。
「あの子の髪には、あんまり驚いた記録がないな。あぁそうだ、水髪の君に似ているんだ。」
思い出すようにつぶやいたランドウェラ。当然、水髪の君を職員は知らない、視たことないから当然だろうが。
「水髪の君は名前の通り、髪が水でできていてね。なのに体は人なんだよ。……そうそう、かなり優しかったんだよ、彼女。」
ランドウェラ自身もかなり優しかったと記録しているようで。
職員が詳しく聞いてみれば、彼が水髪の君と会ったことがあるようだ。
「その時も水を分け与えてくれてな、……今頃、あの水が干からびないか心配なのだけれどね。」
その時の記録を……状況を思い返しつつ。
「……僕の認識では水を出す機関としか見てなかったが…やはり接するかどうかによって変わるのだなぁ。」
そう、改めて思ったかのように彼は呟いた。
そんな、優しい意志を宿した、水の髪を持った人形の記録。
◆一旦閉幕
話しをしていれば、時間はあっという間に過ぎていく、故に彼らは一度、話を区切る。
「……さて、今日は色々とありがとう。おかげで色んな記録を思い出すことができたよ。」
そう職員にお礼を言ったランドウェラは立ち上がり、ギルド・ローレットから立ち去る前に、振り返り。
「また思い出したくなった時は来るから、その時は宜しく頼むよ。」
そう言って、彼は職員に見送れ去っていった。
この後、もしかしたらランドウェラが記録を新たに思い出そうとする機会が来るかもしれない。
―――が、それはまた別の話だ。