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<花蔓の鬼>白檀の香は濁りけり
登場人物一覧
名前:兎円居 柏丹(うのまどい びゃくだん)
種族:鬼人種
性別:男
年齢:unknown(死去)
一人称:俺、私
二人称:貴様、貴殿
口調:だ、だろ、だろうな/です、ます、でしょう
特徴:神威神楽の武家『兎円居家』当主
設定:
神威神楽の名門武家である兎円居家の当主。代々、刑部省に人員を輩出し獄人でありながらどの様な死地でも生きて返ってくると主へと誓う忠誠心を評価される名門。
八百万らからは獄人ではあるが使い勝手の良い駒として重宝されていた。獄人が差別されていた頃からもその名声は高く、御所に出仕する者もよく見られたらしい。
刀に一筋であったため、妻を娶る事が遅れた柏丹は花街『瓊枝』で見かけた芸子『彩芽』に一目で恋に落ちた。
彼女を口説き落とすために日々、瓊枝に通いその情熱で彼女を口説き落とし、子宝に恵まれて幸いに過ごしていた……筈であった。
だが、娘の澄恋が成長して行くにつれて発言した身体的な特徴は柏丹と大きく異なっていた。
短双角に薄い菫色の髪と瞳を持った柏丹には鬼紋が刻まれていた。兎円居の当主は代々似通った鬼紋が現れるとされていたからだ。
だが、母の彩芽にもない水色の髪を持って生まれた澄恋には鬼紋も銀舌もなければ鋭く尖った狼牙が存在して居た。
初めこそ先祖返りかと考えたが、その姿は柏丹には似ず、彼が花街で見かけたことのある男に良く似てきたことに気付いたのは娘が幾らか成長した頃だった。
妻の彩芽を口さがなく噂する声は周囲から聞こえ初め、ついには真実を確かめるべく彼は妻へと問い掛けた。
澄恋は本当に己の娘なのか、と。
その事実は柏丹には決して耐えられる者ではなかった。我が子であると信じていた娘は他の男との間に宿った子であり、血の繋がりは無かったのだ。
真実を識ってから澄恋に暴行を加え、彼女を家から追い出し、妻とも離縁。一家は離散した。
名声轟かしていた兎円居家は崩壊し出仕も儘ならなくなった柏丹は心労が祟り、其の儘病死した。
晩年の彼を知る者は酷く寂しい終わりであったと告げて居る。
……生家を追い出された立場とは言え、兎円居家の没落と当主死去の一方は澄恋の耳にも届いたことだろう。