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【初コラボ】第一回 ホネ★えく【してみた】
登場人物一覧
●コラボ企画! ホネホネボーン!★サヨナキチャンネル
#今夜は本当に怖くない #笑顔の絶えない実況 #今夜は特別豪華版
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―― >>もうチョットお待ちくださいですぞ!( •̀皿-)و.。.:*
●202X.XX.13(Fri.)18:00
そのP-tubeで、不定期配信しているチャンネルがある。チャンネル名は『ホネホネボーン!』。配信者
一年に一度か二度しかないこの日。折角だから何か特別なことをしようと思ったのだろう、数日前にSNSで「コラボ配信しますぞ」と告知がなされた。
コラボ相手は、チャンネル名『サヨナキチャンネル』の配信者『えくれあ支店長』――商人ギルド・サヨナキドリが練達で広報を行うために開設した動画チャンネルであり、商品宣伝やえくれあ (p3p009062)がのびのびと色んなことに挑む動画が配信されるチャンネルだ。
両者にとっての初めてのコラボ企画。SNSでは『スケさんがコラボ配信!? え、楽しみなんですけど!』『13日の金曜日って明後日? 正座待機しとくわ』『俺のえくれあちゃんが骨野郎と!?』『えくれあたん……でもスケさんとなら許せるかな』『スケさんとえくれあちゃんって何か繋がりあった?』『えくれあちゃんって、スケさんとゲームの趣味合うっけ……』等とファンたちを大いに沸かせた。
そうして迎えた当日――13日の金曜日、18時。
普段の『ホネホネボーン!』の配信時間はもっと遅い時間なのだが、15歳未満のえくれあは20時までしか配信できないため、今回は早い時間からの配信である。えくれあファンは『絶対に残業しない。定時で帰ってやる』と仕事に燃えたり、『急遽有給取った』と準備万端でその日に挑んでいる。
デフォルメされた骸骨の頭部がクルクルと回転し「チョット待ってね」と記されていた画面が、パッと切り替わる。
フードを被って口元をバンダナで隠した男と、ふわりと広がる金の髪をハーフツインにした美少女が画面の右下と左下に表示され、画面の大部分は枠で区切られた上で、『コラボ企画! ホネホネボーン!★サヨナキチャンネル』と記されている。この枠内にゲーム画像を映して配信するのが、いつもの『ホネホネボーン!』スタイルだ。
「あ、映ったようですね。はい、スケさんですぞ」
「こんばんはー、えくれあだよー。いつもは生配信じゃないから、ちょっとドキドキしてるんだよ」
ふたりが口を開くと、チャット欄が途端に賑やかになる。
>>骨ロック:スケさん、こんばんは~。
>>焼きうどん:えくれあたん! こんばんは!
>>プリン:こんばんは! えくれあちゃん、お仕事頑張ってきたよ!
>>おにぎり:こんばんは! リアタイえくれあちゃんだー! 可愛いー!
――……
――
「おお、流石エクレア殿。大人気ですな」
「わあ、挨拶ありがとうだよ。お仕事頑張ってえらーい」
「早すぎて読めないコメントは後からゆっくり読ませていただきますぞ!」
ヴェルミリオ――否、ホネホネボーンは、まずはふたりのことを知らない人向けに普段の自分たちのチャンネル内容説明を簡単にした。
「大丈夫ですか? ついてきておりますかな?」
「『大丈夫! いつも見てるから!』? わあ、いつもありがとうだよ!」
「今日はですね、スケさんの作ったものを支店長に案内しようかとも思いはしたのですが……ほら、スケさんのは……うん『ホラーだもんな』『絶対えくれあたん怖がる』……うんうん、スケさんの常連さんはよく解っているのですぞ」
「ぼく、怖いのはキャーってなっちゃいそうだよ」
「なので、怖くないものをご用意したのですぞ! こらこら『本当に?』『怪しい……』って、スケさんを何だと思っているのですぞ!?」
「のんびりできるゲームがぼくは好きだよー」
「という訳で、こちら! じゃじゃん!」
コラボ企画と書かれていた枠内に、ゲームのタイトル画面が表示された。
>>骨ロック:…………。
>>鯖缶キャノン:…………。
>>コッペパン:…………。
>>忍にんぎょ:…………。
>>骨ロック:まさかのチョイス。
>>コッペパン:え、それやんの? マジで?
>>プリン:タイトルからしてヤバそう。
>>おにぎり:有名なゲーム?
――……
――
「知ってる人が多そうな雰囲気ですかな? エクレア殿、読み上げてほしいのですぞ」
「はーい。『ぞぞぞの森ぐらし』、だよ! 森で暮らすのかな? 絵も可愛いね!」
「因みに今日のコラボ生配信は、スケさんの方のプレイ画面ですぞ。それでは初めて行きますぞ~!」
タイトル画面は、パステル調の色使いにドット調の絵柄だ。えくれあ支店長は可愛いねと嬉しそうな声を上げてはいるが――チャット欄の反応は少しだけ微妙だ。名前は聞いたことあるものの初見プレイのスケスケボーンとゲーム実況自体の経験があまりないえくれあ支店長は気づかない。
まずは操作キャラクターの見た目選択と名前の入力から始まり、ふたりは一覧からそれぞれ二頭身のキャラを選んだ。すると明るくポップな音とともにオープニングムービーが流れ出し、森の中の村にふたりの男女(性別変更可)が訪れるところから始まった。
「森ぐらしだから色んな動物が出てくるのかな?」
「出てくるといいですなー」
「村長さんかな? フードを被った羊とお話して、住むことにした感じみたいだよ」
「ふたりは村外れに住むようですな。小さな家と荒れた土地……なるほど、ここを住みやすく開拓していけば良いのですな」
「村長さん、ヒヒッて笑った! 夜は危ないから寝ないといけないみたい」
「野生動物とか出るんでしょうな~。動けるようになりましたし、まずは家の周りを綺麗にしますぞ~!」
「おー!」
>>プリン:結構可愛いし、平和?
>>おにぎり:えくれあたん癒し。
>>骨ロック:(^^)
>>コッペパン:(^^)v
「出荷箱に入れておくと翌朝にお金が入るシステムのようですな」
「抜いた草や小石は売っていいのかな?」
「そうですな、先立つものは必要でしょうし……お金がないと木を切る斧が買えませんしな」
大きなアクションをすれば体力が減っていき、時間経過でゲーム内の時間も経過する。『体力を使い切ってしまうとキャラクターが倒れて寝込んでしまうから気をつけよう!』と説明が出たため、体力がギリギリになる度に就寝をし――そうしてゲーム内では何日か経過した。
家は初期のままだが、家の前にあった沢山の小石や岩、雑草、邪魔な木々は取り除かれ、畑らしきものが作られている。
「やったー、生えてきたよー!」
「『
「……あれ? なんか、思ってた感じと見た目が違うね?」
「……そうですなぁ、なんていうか……手、みたいな」
「だよね? ぼくも土から手が生えてるように見える……ドットだから?」
「まあ、収穫前ですしな」
>>骨ロック:……。
>>忍にんぎょ:……。
>>焼きうどん:ゲーム知ってる人たちが度々無言になるの怖いんですけど。
「まあ、なんか、悪い予感は当たるものですぞ」
「えー? なんでー? なんで頭が生えてるんだ?」
>>プリン:ドウシテ……。
>>おにぎり:意味がわからない……。
>>骨ロック:そういうゲームなんだよ。
「収穫、する?」
「収穫して売るのですぞ!」
「売れちゃうの? 誰が買うの!?」
「さぁ……。チャット欄の流れが早いですな。なになに『ゾンビは色々使える』?」
「使えるって何ー? こわー……あ! もしかして、今飼ってる犬って……『気付いてしまったか』って、やっぱりそういうこと!?」
「とりあえず支店長。スケさんはこれ以上アイテム持てないので、出荷箱にいってきますぞ」
「あ、はーい!」
「スケさん、スケさん、スケさん~~! 大変! わ、どうしよう!」
「ど、どうしたんですぞ、エクレア殿」
「ちょっと、わ、わわわわ、ちょ、えっと、わーーー!」
「え、エクレア殿!?」
「早く! 早く戻って! 大変!」
収穫遅れたゾンビが勝手に土から出てきちゃったー!
――202X.XX.13(Fri.)18:00 - 20:00
決して長いとは言えないその二時間は、視聴者にとっても、ヴェルミリオとえくれあにとっても、忘れられない楽しい二時間となった。余談だが『ホネホネボーン!』ではヴェルミリオが投げ銭機能をONにしていないため、代りに『サヨナキチャンネル』で紹介されている商品が飛ぶように売れたのだとか。
13日の金曜日は一年に一度か二度しかないけれど、そうじゃなくともまたコラボをしてほしいと視聴者が望んでいるため、近いうちにまたふたりのコラボ企画が啓かれるかもしれない。
因みに何度目かの配信でふたりは村の正体を知るのだが、この回がふたりのコラボの最高視聴率となる。
まさか、カルト宗教の村だったなんて――!