ふわふわのおなか

登場人物一覧

　燈堂家の本邸。和リビングで白雪と祝音は何時ものように転がっていた。
　白い猫と一緒にころんと寝転んでいる少年の姿は、猫が二匹じゃれ合っているようなもので。燈堂家の住人は特に気にも止めずに微笑ましく見守っていた。
　けれど、少し動きづらそうなのは、先日の戦いの傷がまだ癒えていないからなのだろう。
　白雪も祝音も、体力を回復するように、いつも以上に微睡んでいた。

「にゃーぉ」
「ん……白雪さん、どうしたの？」
　白雪が和リビングのテーブルに置いてあった、和菓子を咥えて祝音の前に置く。
「んなー」
「心配してくれてるの？」
　普通に喋る事は出来るのに、白雪は殆ど人の言葉を話さない。
　何か事情があるのだろうかと祝音は白雪の喉を優しく撫でた。
　ごろごろと喉を鳴らす白雪。
「白雪さんは優しいね」
　喋らなくても、その行動や仕草で彼の優しさが伝わってくる。
「今度、どこかへ遊びに行ったら、お土産を買ってくるね」
「にゃー」
　猫の習性故か、燈堂周辺から動かない白雪のため、祝音は友人に約束をした。
　何度も、何度も積み重ねる約束。
　小さなことだけれど、きっと大切なこと。
　祝音は白雪のふわふわの毛並みに、顔を埋めて優しく抱きしめた。