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筋肉殿堂での一幕
筋肉殿堂での一幕
登場人物一覧
それは天空に浮かぶアーカーシュで筋肉殿堂(マッソーキャッソー)と名付けられた遺跡でのこと。
隣のアンドリューが何かを察知したように身体を硬直させる。
よく見れば、何故か右大胸筋が揺れているではないか。
「おい、アンド……」
「シッ! 静かにしろカイト。いま、筋肉の揺れに集中している」
「は?」
「――こっちか!?」
目をカッっと開いたアンドリューは、遺跡の合間を這うように駆け出す。
「オイ!? 待て一人で走って行くんじゃない!」
アンドリューを追いかけてカイトは瓦礫を飛び越えた。
「カイト! 見てみろ!」
自分の名前を嬉しそうに呼ぶアンドリューに視線を上げれば、壊れた石像が転がっている。
顔は無いが、骨格と逞しい筋肉から男性の像であることが分かった。
「これは、イイ! とてもイイ筋肉だ!! 程よい肉付きと洗練された流線。このモデルの人物はさぞイイ筋肉をしていたのだろうな!」
「え、何? 筋肉の揺れってそういうのを察知するアレなの?」
「むむ!? あっちにも……こっちにも反応がある……もしかして、ここは天国(パライソ)なのか!? 筋肉殿堂もとい、筋肉天国、か」
アンドリューの言葉と、大量に転がった石像を見遣り、カイトは頭を抱えるのだった。