SS詳細
『嚮導の魔女』スイズリィ・アルプ・レァイゼン
登場人物一覧
名前:『
種族:精霊種
性別:女
年齢:Unknown
外見年齢:10代~20代
一人称:わたくし
二人称:あなた、鹿さん、リトルレディ、ポシェティケト
口調:~かしら
特徴:オパールグリーンの長い髪と
「果てしない青、遥か彼方で空と気泡踊る海がまじわる世界――行方定めし磁石はあなたを導くのだわ。仰いだ空が、赤橙から夜の彩りへと変わっても、大切なポシェティケトが惑い沈むことのないように、泡と消えぬように」
設定:【森に棲む魔女連】に参加している魔女。ポシェティケトに世界の厳しさや礼儀作法などをきっちり教えてくれた厳しくも優しい先生のような存在。
森の中にある『
「わたくしが教えるのですから、これくらい出来て当然かしら」
「もう、他の魔女達は甘すぎるかしら。今が良くても、将来的に苦労する事になるのは鹿さんではありませんかしら?」
「子どもの体温って、どうしてこんなに温かいのかしら……」
衣装例はつば広の魔女帽子、フラウンスロング袖・ボウタイリボンブラウス、ピナフォアドレスなど。帽子のつば部分をカッティングして反らし立て、ハートや花びらや獣耳のように魅せる着用を擦る時もあり。
好きな食べ物はリコッタチーズを詰めたカンノーロ。
好む色は白、黒橡、橙、オパールグリーン。
好きな宝石はエメラルド。
結ばれず死別した初恋の人からの贈り物であるアンティークカメオ・ブローチを大切にしている。
【森に棲む魔女連】
《月光蝶々の魔女・エルマー》が魔女仲間と共に発足した《森に棲む魔女連》という名前の秘密クラブ。
『森に棲む』『魔女』といいつ厳密には老若男女誰でも参加は可能で居住場所は問わないし会合内容はなんのことはないただの仲良し同士のお茶会だが、魔女が数人集まれば中々際どい悪巧みだってするらしい。
魔女連参加のルールはただひとつ
『お茶会中に殺し合いはしないこと』
メンバーは長命種が多いため、クラブの歴史は意外と長い。
スイズリィも長命種だが、クラブの中では中堅ぐらいの所属歴。比較的森の外にもよく出かける性質である。
おまけSS『『泡海の魔女』スイズリィの恋と後悔』
「恋は甘いものかしら? それとも、苦いものかしら。
……両方かしら――」
むかし、むかし。
海のなかに、大きな集落がありました。
集落はあるとき、次の長を誰にするかという問題でおおいに揉めました。
人々は2人の直系の子を中心に派閥をつくり、争い――やがて、つよい派閥が勝利して、負けた人々は反逆者として処刑されそうになり、皆で集落を逃げ出しました。
「安全な場所で、そっと暮らそう」
負けた人々、集落を追われた人々は、長く放浪したのち新しい集落をつくりました。
けれど、理由はわかりませんが――その集落の場所は、敵対派閥にバレてしまいました。
「見つかってしまったか! 皆、逃げよう」
集落の人々は、ふたたび逃げました。そして、逃げた先でまた集落をつくるのですが、元の集落の追っ手は何度逃げても、その都度新しい集落をすぐに見付けて追って来て、人々を捕まえ処刑しようとするのです。
「何処に逃げても、無駄だ」
人々が絶望しかけた、その時――「わたくしが助けてあげても、いいかしら」愛らしく、ほんの気紛れを起こしたといった風情でそう言ったのが、『泡海の魔女』スイズリィだったのです。
――『集落に伝わる泡海の魔女の噺より』
●スイズリィの秘密
スイズリィは、森に来る前に『泡海の魔女』と呼ばれていた事がある。
『泡海の魔女』スイズリィは、とある海種の集落と契約を交わしてその集落の存在を外界から隠していた。
「かくれんぼの魔法は、中の住人が隠れたいと思う限り有効かしら」
中の住人が隠れたいと思わなくても有効な魔法をかけることだってスイズリィには可能だった。けれど、魔女は無条件の奇跡で人々を守ってやるよりも条件付きの魔法を好むのだ。
数年おきに集落を訪ね、スイズリィは集落を守るための魔法をかけ直し続けた。集落の民とは友好関係にあった。
しかしある時、集落の姫が海洋散歩中に海賊と出会って恋をして、海賊に集落の場所を教えてしまった。しかも運命の悪戯か、海賊の彼はスイズリィの初恋の相手だったのだ。
集落の人々はスイズリィに頭を下げて、再び魔法をかけてくれと頼んだ。
「魔法はあなた達の意思によって解けたのだから、わたくしの責任ではないかしら。わたくしが魔法をかけなおしても、姫が解いてしまうなら意味がないかしら」
若干の意地悪は、嫉妬心もあってのこと。
魔法の掛け直しを渋っているうちに、集落は外敵に発見されて襲われてしまった。危機に陥った集落を助けに来たのは、想いを寄せる海賊だった。
きらきら煌めくエメラルドの瞳は、その時――集落の姫を見つめて安堵したように微笑んだ。
「助けにきた」と叫ぶ声がスイズリィの胸に鈍く響いた。その時、スイズリィは己が嫉妬心に囚われている事を強く自覚したのだった。
「嫉妬するわたくしなんて、みっともないかしら」
スイズリィは醜い自分と向き合って、自分で自分を叱咤して――戦いの最前線に翔けた。
海上をふわりしゅるりと飛翔して、海の上で戦うその船に守りの手を差し伸べる。海の中で戦う者たちを助け出し、船上や集落の中へと退避させていく。
「わたくしが来たからには、万が一……奥が一にも、負けるなんてありえないかしら」
戦いの中でスイズリィが彼に肩を並べてツンと言い放ち魔法を使えば、彼は眼を細くして近しい距離で「頼もしい」と言ってくれた。その言葉はどれだけ時間が経っても色褪せぬ、何にも勝るスイズリィの勲章だ。
戦いがひと段落して、どうやら集落に代々伝わる王族の秘宝に探索魔法が掛けられていると突き止めた時、彼はスイズリィの髪を梳いて、愛を囁いてくれた。無骨で、がさがさごつごつしていて、熱い、その指で。お世辞にも綺麗とは言えない、がらがらの低いしゃがれた声で。包帯をたくさん巻いた、ぼろぼろの体で、彼が。
戦いが終わったら――そんな会話が夜の大海原に甘く揺蕩い、翌日……。
「ああ、さっさと魔法をかけなおしてあげたらよかったかしら。わたくしには、それができたのに」
スイズリィは、その事件を思い出す時甘やかさと苦さを同じくらい沢山、鮮やかにしたたかに、胸に覚える。
それは彼女の『特別』で、大切な思い出なのだ。