ある休日の昼下がり

登場人物一覧

　桜の花弁も散って、日差しが少しずつ温かさを増した春の日。
　龍成は希望ヶ浜の繁華街へと買い物に来ていた。
　行きつけのアクセサリーショップには鍵につける飾りを頼んであるし。
　ちょっと遅いが春物の服も欲しかった。
　龍成は色々な服屋を見て回りながら、休日の昼を楽しんでいた。

　アメジストの双眸が『少年』の姿を捉える。
　先日『友達』になったばかりのチェレンチィという少年だ。
「よお、チェレンチィ。何か探してんのか？　それともまた迷子か？」
「あ、龍成さん。ボクは迷子になった事はありませんよ？」
　おっと。そうきたか。龍成は意外と茶目っ気のある少年に頬を緩める。
「服選んでんのか？」
「はい。ですが、あまりこちらの服が分からなくて」
　Tシャツを摘まみ上げたチェレンチィは、防御力が低すぎると小さく呟いた。
「そうだな、確かに戦う前提のものは無いな」
「はい」
「じゃあ、こういうのはどうだ？」
　龍成が選んだのは、袖が短めのフーディーだ。
「中に濃いめの七部丈とか合わせれば良いんじゃね？　パンツは好みが分れるけど、ワイドでも良いと思うし、レギンスも似合うと思うぜ」
「成程……」
　龍成に言われるままチェレンチィは服を何着か選ぶ。これで当分は服に困ることは無いだろう。

「ありがとうございます。龍成さん」
「おう。困った事があれば連絡しろよな。この前交換しただろ」
　こうも気安く連絡を入れても良いものだったのかとチェレンチィはポケットの中のaPhoneを触る。
「んじゃ、またな」
　去って行く龍成へ、手提げ袋のままチェレンチィは手を振った。