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SS詳細

榊 伊慈。或いは、道理を外れた行いの果て…。

登場人物一覧

トキノエ(p3p009181)
恨み辛みも肴にかえて
トキノエの関係者
→ イラスト

名前:榊 伊慈(さかき これちか)
性別:男性
年齢:60後半
一人称:私
二人称:~殿
口調:敬語口調(~ですな、~でしょう?)
特徴:貴賓がある外見と佇まい、穏やかで落ち着いた声、本心の窺えぬ不気味な眼差し
設定:
豊穣の辺境にある社の管理者。
榊の家の7代目当主。
彼の一族は代々『病魔払いの巫女』を“作り”そして管理している。
代価さえ払えば彼はいかなる病にも効く治療を提供してくれるだろう。
しかし、彼の提供する治療とは「病毒に侵された死体を喰らい抗体を身に付けた巫女の肉を患者に喰わせる」という、あまりにも道理に外れたものである。
そのため、高価な香で誤魔化してはいるものの、彼の身体には血と肉の匂いや瘴気が染みつき離れない。意図的に誤魔化されたそれらの匂いに気付いた者は、途端に彼の浮かべる笑みや、穏やかな声音でさえも不気味なものに感じるはずだ。

彼は非常に弁が立つ。
穏やかで落ち着いた声は耳に心地よく、聞く者の心と脳にじわりと自然に深く染み入ることだろう。
そんな彼だが普段の実務は部下に任せて、滅多なことでは表に出ない。彼が表に出る時は、そうする必要がある時だけだ。その最たるものが“頼み事”であろう。
「ひとつ頼みが」と困ったような笑みと共に頭を下げれば、多くの者はそれに答えようとする。例えその頼みとやらが、その者の身の破滅に繋がるものであったとしてもそれは変わらない。彼の顧客の多くは『病魔払いの巫女』の効能に心酔している“信者”のようなものなのだ。
身に付けた教養と生来回転の早い脳により、彼は自身の行動、言動の結果、人が“どのような想いでどういった行動を取るか”ということをかなり正確に予想できているようだ。

彼は巫女の肉を食ったところで、病が治ることなどない。そして人の肉を人に喰わせるという行いが、因習あるいは“呪い”の類であることも十二分に理解している。理解したうえで「世間から見放された者達の最後のよすが」や「古くからの医療行為」など理由を並べて正当化し、『病魔払いの巫女』の肉を売り続けている。

代々にわたって道理に外れた行いに手を染めた一族であるため、豊穣には彼のことを恨んでいる者も多くいる。彼が滅多に人前に姿を現そうとしないのは、そういった手合いから身を守るためでもあるのかもしれない。

また余談ではあるが彼は最近「病毒の八百万」について調べているようだ。

  • 榊 伊慈。或いは、道理を外れた行いの果て…。完了
  • GM名病み月
  • 種別設定委託
  • 納品日2022年04月28日
  • ・トキノエ(p3p009181
    トキノエの関係者
    ※ おまけSS『病は気から。或いは、死人に口なし…。』付き

おまけSS『病は気から。或いは、死人に口なし…。』

 湿った風に灯が揺れた。
 薄暗い部屋に、甘ったるい香のにおいが立ち込める。
 薄暗い部屋の奥に座すは、浄衣を纏った総髪の男……榊 伊慈である。
「来る日も来る日も念仏唱えて、あるとも知れぬ死後に備えて極楽浄土へ想いを馳せて……それに一体、何の意味があるというのか」
 低く小さな声で囁き、古い書物の頁を捲る。
 カサリ、と紙面の擦れる音が薄暗い部屋に零れて落ちた。
「まぁ、市井の皆さまにはそれが必要なことなのでしょう。病は気から、という言葉もあれば……死後に幸福が待っていると信じればこそ、耐えられる苦痛というのもあるのでしょうな」
 果たして、それは伊慈の本心から出た言葉だろうか。
 蝋燭の火に照らされた彼の口元は、薄い笑みを描いている。
「事実、巫女の肉を食ったことで調子を取り戻した者は多い。あんなもの、ただの人肉でしかないというのに、おかしな話もあったものです」
 そう言って伊慈は、耐え切れぬという風にくっくと肩を揺らした。
「彼らは人を喰って救われた気になっているだけ。自分の命を繋ぐためとあれば、見知らぬ女の苦痛さえも許容するのが人という生き物の性なのでしょう」
 つまるところ、榊の一族が代々に渡って管理している『病魔払いの巫女』はペテンでしかないと、彼はそう言っているわけだ。
 けれど、死人に口なし、というように助からなかった者が彼をペテン師であると糾弾することは無い。
 そして、幸いというべきか伊慈は霊など見えぬし、信じぬ性質だ。例え死後に、伊慈を恨む者がいたとして、彼の耳には恨み言の一つさえも届かないのだ。
「そもそも、これは我が一族が代々にわたって受け継いできた商いであり、榊に生まれた者が背負うべき業でもあります。えぇ、きっと私は地獄に落ちるでしょう。地獄があればの話ですが」
 なんて、嘯いて彼は書物の頁を閉じた。
 代わりに彼が手に取ったのは、文机の隅に無造作に置かれていた金子だ。
 地獄の沙汰も金次第。
 くっくと笑って、彼は金子をそっと懐に仕舞い込む。
「さて……資金は十分。情報の精度は今一つですが、動けぬほどではないですね」
 閉じた書物……それは古い手記である……を棚へと仕舞って、伊慈はゆらりと立ち上がる。彼の脳裏に浮かぶのは、先だって『病魔払いの巫女』の社に忍び込んだ、1人の男の姿であった。
 伝え聞くところによるとその男、どうにも榊の先々代が遺した手記に記述のあった“病毒の八百万”に酷似しているではないか。
『病魔払いの巫女』の社に“病毒の八百万”が忍び込むなど、なんとも出来すぎな話でもある。
 そう思えばこそ、興味が湧いて仕方がなかった。
「偶然の一致か、親類縁者か、あるいは“本人”か……退屈凌ぎには丁度良さそうですな。もっとも、好奇心に殺される猫にならぬよう十全に注意を払う必要はありそうです」
 

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