大刀『海皇』

登場人物一覧

　大海を統べる皇帝が所有していたという伝説を持つこの剣は所謂『バスターソード』という部類の剣に属する。
　身の丈程も刃が在り、重量も到底軽いとは言い難く使い手を選ぶこの剣をジョージは容易く扱う。
　以前の彼を知る者なら皆首を傾げてこう言うだろう。
「彼は拳闘士なのに、なぜあんな大振りの剣を扱えるのか」
　それはジョージ自身が恵まれた体格ということもあるが、一番の理由は彼自身が決して驕らずどんな状況でも対応できるようにと様々技術を磨き続けた努力の結晶だからである。
　どれくらい前だったかは覚えてはいないが、かつて誰かに言われたことがある。
「弱さは罪だ」
　しかしジョージはそうは思わない。
　いろんな世界を渡り、いろんな世界を見てきた彼はこう思う。
「弱さこそ、人をたらしめる楔である」
　

　大海原を渡る皇帝の威光は揺るがない。
　たとえそれがどんな絶望的な状況であっても、遍く全てを照らし続ける。

おまけSS『とある老人の証言』

　少し前に海洋の国へ行った時に賊に襲われてしもうての……。ああ、ワシの生命もここまでかと思うた時、一瞬何か光が反射したかと思うと急に賊が宙に浮かび上がったんじゃ。
　そうさな……まるで強烈な波に攫われたかの様じゃった。海の怒りに触れたような、鯱を怒らせてしもうたかのような。
　気がつくとワシを襲った賊はみーんな倒れて泡を吹いておったよ。そして身の丈程もある巨大な剣を背負った男がおったんじゃ。逆光で顔は見えんかったが、ワシにとっては紛れもなく神の使いじゃったよ。
　ああ、でもどちらかと言えば『皇帝』という方が相応しいかもしれんの……。