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笑顔想えば
笑顔想えば
登場人物一覧
腕の中に居る鹿ノ子の香りに満たされて、遮那の頬が熱くなる。
布越しにじんわりと伝わってくる体温も艶やかな髪も、柔らかな金の瞳も愛らしいと思ってしまう。
もう少し触れていたいと思う気持ちを抑えて、遮那は懐から小さな包みを取り出す。
「鹿ノ子、これは私からの誕生日の贈り物だ」
少女の手の中に置かれた包み。鹿ノ子は開けてもいいかと視線を上げた。
「うむ、開けてみてくれ。喜ぶといいのだが」
鹿ノ子の笑顔が見たくて一生懸命選んだ贈り物。
包みをあけると、良い香りのする小さな袋が出て来た。
丁度、鹿ノ子が遮那の誕生日に贈った御守りぐらいの大きさだ。
「そなたは最近眠れぬ日々を過ごしていると言っておっただろう? これは私が使っている香と同じものだ。枕元に置いて眠れば其方の夢守となろう」
されど、香はそのうち薄れてしまうもの。その時はまた眠れぬ日々が来てしまうのだろうかと鹿ノ子は眉を下げる。
「香が薄れた時は持ってくるが良い。中の香をまた詰め直すからの」
それは逢瀬の約束。香りが薄れる頃には会いたいという意味が込められているもの。
「ふふ、其方には笑顔で居て欲しいのだよ」
緩く指先を鹿ノ子の頬に添えて。遮那は顔を綻ばせた。
おまけSS『香り纏い』
アイテム名:若草ノ香
アイテム詳細:数種類の柔らかな香りがする若草を摘んで香にしたものを御守りに詰めている。遮那が身に纏う香りと同じもの。鹿ノ子の夢を守れますようにという願いが込められている。遮那から鹿ノ子へ誕生日の贈り物。