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『わたし』が『私』に思うこと
登場人物一覧
名前:澄恋
種族:ゼノポルタ
性別:女性
年齢(或いは外見年齢):UNKNOWN
一人称:わたし
二人称:~様、あなた
口調:です、ます、でしょうか?
特徴:【大きな角】【和式正装】【好奇心旺盛】【照れ屋】
設定:
親の不貞から生まれ、不遇な幼少期を過ごしてきた女性。過去には遊女として生計を立てても居た。
その来歴から、彼女は愛と言う感情が欠けていることを自認している。『花嫁』となることを理想としているのも、そうした欠落を失くした理想の存在であるから、という憧れゆえだ。
その憧憬が行き過ぎるために、通称『旦那様』と呼ばれる装備を作ってしまっているが……これも本人にとっては大真面目である。
何故ならそれは、周囲の「たいせつな方々」とは違い、不完全な自分が彼らの傍に立てるための真っ当な努力なのだから。
――その間違いに気づかぬまま、恐れと焦燥ゆえに涙する彼女の在り様を、救う者は未だ現れてはいない。
澄恋からすみれにたいして向けられる感情は羨望であり、嫉妬であり、それ故醜い自分を思い知らされぬための忌避である。
澄恋とは違い、彼女は真っ当な両親と恵まれた環境で育ち、愛する人との結婚まで遂げた――言わば「澄恋の理想の存在」そのものであるためだ。
そのため澄恋は基本的に彼女に関わらないようにしているが、対してすみれの側は望んで澄恋に関わろうとしている。
……その内実に存在する感情が、「暇つぶし」や「哀惜」「侮蔑」で無ければ、二人はもう少しだけ距離を近しくできたのだろうか。
嘗て、R.O.Oですみれが構築したアバターを知った時、澄恋は彼女に対して恐怖を覚えた。
自らが彼女に近しいアバターとなっていたように、彼女も自らに近しい在り方をアバターに投影させていた為である。
その時、澄恋は理解した。「不完全なもの」が「完全なもの」を演じることは難しくとも、その逆は極めて容易なのだと言うことを。
――この世界で特異運命座標として生きていくうち、澄恋には大切な仲間が、思い出が出来た。
その総てを、「理想の自分」が今の自分と容易く成り代わり、手慰みのように奪い尽くしてしまったら、何もなくなった自分はどうなるのだろうかと。
恐れは、それを拭うよすがを求める。それが応えてくれたのならば、尚の事それを失う恐れが深まっていく。
……周囲の人間が気付かぬだけで、彼女の精神は、徐々に限界へと近づいているのかもしれない。
おまけSS
余談ではあるが。
澄恋がすみれを忌避する理由として、その発育から成る体型の差異も多少ながら存在している。
これに関しては仕方がないとしか言いようがない。幼少期を恵まれない環境で過ごした彼女と違い、安定した食生活を送ってきたすみれとではその成長の度合いが大きく異なるためだ。
……それはそれとしても、若しそうした特徴を揶揄する者が居るのならば、彼女はきっとにこやかな表情で懐刀を抜くであろうことは想像に難くないため、注意は必要である。
――尤も。
そうした特徴もまた一種の『すみれとの不完全さ』ではある筈なのだが、その指摘に対して上述のような「冗談で済む範囲(?)の報復」のみを返す澄恋は、今後の境遇、成長如何によっては自身のコンプレックスを克服する可能性を秘めているとも言えるだろう。