SS詳細
異世界転生した蟒蛇令はイケメン騎士を落とすべく今日も酒を飲む
登場人物一覧
●ねぼけまなこ
「……様、……様」
よく聞こえないんですが、私、今って呼ばれてますぅ?
様付けされてるんですけどぉ。
あーでもぉ、目の前のお兄さん、なかなかに中世的で良いお顔してますわねぇ。
「お嬢様! こんなに遅くまで寝て! 何をしてるというのですか!」
だってぇ、仕方ないじゃないですかぁ。昨日も遅くまで飲んでたんですからぁ……え?
──ひ、ひめ?
んー、なんか豪奢なお部屋、これ見たことあるんですけどぉ。
……あー! 分かった! これ昨日だらだら飲みながらやってた乙女ゲームだぁ!
で、この人はアレです、攻略対象のぉ、セバス♡
ヒロインの家に仕える騎士で、端正な顔立ちに似合う黒髪の短髪、そして瞳も真っ黒で吸い込まれそう♡
ん~~~好みすぎて落とす一択!
ということは……私、今ヒロインになってるじゃないですかぁ。もー、そういうことは早くいってくださいよぉ。
そうと決まれば、私だって行動しちゃいますぅ。
『セバスぅ、とーらぁ、まだ寝てたいのぉ』
「だめですよお嬢様」
『えー、なんでなのよぉ』
「この後のご予定を分かっているのですか! あれにこれにそれにどれに……」
いや、指示語しか出てないし何も予定ないんじゃないんですかぁ?
うふふ、こうなれば、ヒロインとしてのアッピル開始なのですよぉ。
こう、ガバッと抱きついてぇ……。
『……もう少しだけ、こうしてちゃ、だめ?』
セバスはウブ、キャラクター説明にはそう書いてありましたよぉ。
うふふ、こうやって上目遣いで甘えればイチコr……
「うわっ! 酒臭っ……」
……え? 今なんて?
「お嬢様、昨日はどれだけお酒を飲まれたのですか?」
あれ? 私が知ってる内容とちょっと違うんだけど、え?
『あー……えーっと……たくさん、かしらぁ』
言えないですぅ、そんな、ビール(ロング缶6本)飲んだ後にワイン(赤・重め・瓶2本)空けちゃったなんてぇ。
「と、とにもかくにも、まずはお顔を洗って、歯を磨いて、朝食……の前によーく口を濯いで!」
『は……はぁい……』
待ってくださいよぉ、当初の想定と全然違うんですけどぉ。
昨日選択肢の分岐で上目遣い正解で好感度上がってたじゃないですかぁ。おかしいですよこんなのぉ。
「……ったく、世話の焼ける」
んー? 今何か言ってましたかぁ?
●しってるとらぶる
さて、朝ごはんまで済ませて、次は社交会に行くのですぅ。
お付きは勿論、セバスさん、あ・な・た♡
華やかなパーティーだし軽食は勿論出るとのことですが、私、ちょっとドキドキしていますぅ。
乗り物はお姫様らしく馬車ですよねぇ。
なんていうか、童話に出てくるいろんなお姫様がこういう馬車に乗っているのって、なんだか羨ましいです。
……あれ、よくよく考えたら今森の中だから結構揺れ、あ、やばいやばいちょっと気分悪い。
『う、うぷぅ……』
都合のいいところだけ体質が貴族のお嬢様になるの本当にどうにかならないんですかぁ?!
あぁ……セバスさんの目線もなんだか冷たいんですがぁ。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
一応形式心配はしてくださるのですねぇ。それもそうですねぇ、主従関係はありますしぃ。
『えぇ、大丈夫よ』
「ふむ……まだ社交界まで時間があります。少し休まれますか?」
むむむ! これは攻略イベント発生の予感ですぅっ!
少し体調を崩してしまったヒロインとセバスが一休み。主従関係とはいえ年頃の男女、そこに何も起きないはず……ありませんよねぇ?
……私が乗り物酔いではなく昨夜のお酒が残っていると思われている可能性がチラチラ見えてるのだけは、やめてほしいところではあるんですけどぉ。
『そうね、あなたの言う通り少し疲れたわ……休ませてもらうわね』
「わかりました。御身に何かあってはいけませんので、私もついてまいります」
これですよこれぇ!
そのあと森の開けたところにいるけど、山賊が襲ってきて見事にセバスが撃退してくれるんですよねぇ。
そのスチル機能見ましたよぉ。イケメンの暴力でしたぁ♡
「お! 身なりの良さそうなお嬢ちゃんがいるじゃあねーか」
来た来たぁ。山賊もといM・O・B・U!
私はここでご令嬢らしく、セバスさんの後ろに隠れましょう。
『セバス……怖いわ』
「お嬢様は、私の後ろに」
小さく頷いてー、それから物陰で怯えてぇ……
「はぁっ! てやぁっ!」
「この騎士強すぎんだろ! 逃げるぞおまえらぁ!」
ほぉら逃げて行きましたねぇ。さぁ、ここで怪我をしたセバスを手当てしt……
「お嬢様! 私としたことが手間取りすぎました……。このままでは社交界、遅刻です」
……はぇ?
「急ぎましょうお嬢様! 遅刻してしまったとあっては大変なことに!」
『あ、え、あ、でも、怪我は?』
「今は私よりご自分の心配をなさってください!」
……なんでこうなるんですかぁぁぁぁぁ!
●よるがきて、あさがくる
気を取り直して、社交界ですぅ。
お昼は軽食だけなのでぇ……何もお話しすることはありません!
問題はこれから、夜の舞踏会ですぅ。
「と、トーラさん……ゲヘへへへ」
そう、私は今ぁ、ヒロインなんでぇ、こういう
でも仕方ない、ですね。なんたってヒロインなんですもの。
『あ、あのぉ、ほぼかかわりのない殿方とそう言ったお話をするのは……きゃっ』
苦手なんですぅ、って言っても無理強いしてくるんですよね。ええ、知っていますよ。
なんたってこの辺りまでは昨日私がやってたところですから。
で、ここで踵を返そうとしたら、躓いてしまってワインを相手にかけてしまうんですよね。それも真っ赤なワインを。
でもそこはやっぱりご都合主義なんでぇ、セバスさんが助けてくれるのです。
「……お嬢様、お怪我は」
『だい、じょうぶ……』
「お嬢様のご無礼、どうかお許しくださいしかし……」
そう、しかし、からが大事なんですう!
「しかし、お嬢様も嫌がっておられるのに無理強いするのは殿方としていかがなものか。……さぁ、帰りましょう、お嬢様」
これもうとても素晴らしくパーフェクトなイケメンですよぉ。
あとは、そのまま後をせかせかついていって、そこで……うふふ、乙女心がキュンキュンするイベントがあるんですよねぇ。
チョット踏んだり蹴ったりだったのもありますしぃ、最後くらいは甘めのエンディングがあっても良いかなと思うんですぅ。
『セバス……私……』
「良いのです。それに私はお嬢様を……」
きますよ! 美しくきらめく満月の下での愛の告白ぅ!
「お嬢様を愛し……」
──ジリリリリリリリリ
ふえぁ!
あれ、さっきの何だったの?
テーブルの上にはビール(ロング缶6本)とワインの瓶2本……。
あ、これって、つまり、その……夢落ち、ですよ、ねぇ……。
仕方ありません、まだ朝の4時。明日はオフですしぃ、冷蔵庫のワイン(ロゼ・スパークリング)を飲んでも許されますよねぇ……ぐすん……。