PandoraPartyProject

SS詳細

ドキドキ同棲WAR

登場人物一覧

耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う
耀 英司(p3p009524)
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●ドキドキしょうかいうぉー!
 ––このレッドジャスティスが来たからにはお前の好きにはさせんぞ、暗黒騎士レオン!
 ––ジャスティス……今日こそは貴様を下し、世界を我が物にしてやろう……それと貴様、最近塩分摂りすぎだ……昨日もコンビーフに塩とレモンとオリーブオイルをかけたものをツマミにしていたな……生活習慣病になるぞ……。
 ––え……なんで知ってんの、こわ……。

「あら、れっどじゃすてぃすが映っておりますわ旦那様」
 白無垢を身に纏い、透き通った水の色の髪を流す女人。童顔でありながら芯の通った演技と、淑やかでたおやかな雰囲気を持ちながらよく通る声で若手ながらモニター前の者達の心を一瞬にして掴んだ女優。
 名を澄恋と言う。
「お? これは再放送だな。396話を持ってくるとは通な放送局だ」
 どれどれとモニターを覗き込むフルフェイスの男。かつてはスーツアクターとして戦隊物やヒーロー映画、特撮ドラマで引っ張りだこだった男が『紅勇者レッドジャスティス』で突然の俳優デビューを発表し、お茶の間を騒がせた。
 アクションは勿論の事、演技にしてもクールな二枚目から場を盛り上げる三枚目まで幅広くこなして魅せる多才振りを発揮する。
 名を英司と言う。
 この物語は現在撮影中のドラマ『ドキドキ同棲WAR』で役作りの為に期間限定で同棲を始めた二人の奮闘記の一部である。

●ドキドキルールうぉー!
「先ず同棲を始めるに当たってルールを定めようかと思う」
「るーる……でございますか」
 澄恋が首を傾げながら英司の言を反芻する。英司は頷きながら、横にあるハンディカメラを撫でながら話を続けて。
「あぁ、これからこの同棲風景も撮影するのは知ってるな?」
 頷く澄恋、家庭用のハンディカメラを渡された時は操作もわからずすぐさま英司に手渡した記憶は新しい。
「これは俺がプロデューサーのムシャシに話を通したんだが、役作りとは言え二人が同じ部屋に寝泊まりするんだ。スクープ等のリスクはあるだろう?」
「それならわたしがか弱いセンサーで探し出し、お願いして力づくで帰って頂くのも……」
「ダメだねぇ! 違うスクープできちゃうから……! か弱いセンサーってなんだ? 初めて聞いたな!?」
 取り乱した息を整え話を戻す。
「ともかく、万が一でもそういうリスクは回避した方が良い。それならいっそ番組の企画にしたらどうかと話してみたんだ」
「おぉ……! そういう事だったのですね! それなら企画という題目で二人が共に在るのもおかしくはないと」
「そうそう、ギリギリで伝える事になったのは申し訳ないけど、お互いにファンを悲しませたくはないからな。何もやましい事は無いし何より企画としても面白そうだろ?」
 役作りという目的とリスクを回避した上で企画としてバラエティとする英司の強かさに微笑みながら澄恋も続きを促す。
「わかりました! 全力で目的も果たしつつ、お茶の間を湧かせてみせましょう! して、るーるとは如何程の……」
「じゃあ、ここから撮影開始といこうか」
 ハンディの録画ボタンを押せば、すっかり二人は撮影モード。プロの顔になり。
「先ずはルールを決めよう」
「るーる?」
「あぁ、二人で暮らすとなれば規則を決めてより良い生活にしなきゃな」
 ご丁寧に用意されていたホワイトボードに英司が書き込むのは。
「先ずは呼び方。鋭意撮影中の『ドキドキ同棲WAR』で俺達は互いに呼び方があるだろう?」
「旦那様、ですね!」
「あぁ、そして俺はハニーと呼ぶ」
「ぷふ……」
「なんで笑ったの?」
 こうしてやいのやいの話し合い、演じながらも時には素を見せてみたり、和気藹々とした雰囲気がカメラ越しでもわかる流れが撮れた。
「決まったなハニー」
「そうですね旦那様!」
 澄恋が恐る恐るビデオカメラをホワイトボードに寄せるが。
「澄恋!? ビデオ揺れすぎだよ澄恋!?」
「旦那様! ハニー、ですよ!」
 違う、そうじゃない。ツッコミ所はそこでは無い。機械を怖がり過ぎなのである。
「じゃあビデオはハニーの代わりに俺が持って……ルールはこうなりましたー」
「わー!」
 パチパチパチ、と拍手しながら澄恋がホワイトボードを読み上げていく。
 ・その他諸々!
「よしよし、大体の事は決まったかな」
「そう……ですね。何かあればまたその都度更新していけばよいかと」

●ドキドキお部屋チェックうぉー!
「旦那様、旦那様」
 明くる日の午前、リビングで寛いでいた英司に澄恋が声をかける。
「なんだいハニー」
「ぷふ……」
「そろそろ慣れようか? 毎日笑うの?」
「つい……っと、旦那様、それよりちょっと気になることがございまして」
 それよりで片付けられた英司に僅かな切なさを襲いつつも、咳払いで切り替えて聞き返す。澄恋に頼まれビデオを回しつつ、二日目の同棲生活が始まった。
「旦那様のお部屋が気になります!」
「部屋……か」
 それぞれ割り当てられた一室に、二人は自宅から必要な物を持ち込んでいる事までは映像にもなっている。しかしその内容についてはここまで特に触れていなかったのだ。
「それじゃ今日は互いの部屋チェックといこうか。先ずは俺の部屋から見てみるか?」
「はい!」
 元気な返事に英司も笑顔で頷き、回していたビデオを渡すと笑顔のまま小刻みに手が震えだした。地震かな?
 気を取り直して英司の部屋の前までやってきた二人、扉を開けて中へと足を踏み入れてみれば。
「わぁ! これはとれぇにんぐの道具達でしょうか」
「あぁ、継続は力ってやつでな。習慣になってるもんで運び込ませてもらったんだ」
 普段近くで見る事が少ないトレーニングマシンの数々に新鮮な心持ちで眺めていく澄恋。
「あら……これは」
「あっ」
 機器類の影に隠れて置かれていたダンボール。
「これはなぁ、ちっとばかし恥ずかしいんだけども」
 言いながらもガムテープを剥がして開けてくれる。二人で中を覗き込んでみるとそこにあったのは。
「これは玩具でしょうか。人形やら刀剣を模した飾り物ですかね」
 レプリカの刀や合金ロボット、プラスチック製のコマ等様々な玩具が詰め込められていた。
「ガキの頃にハマってたのを思い出してたらなんだか欲しくなっちゃって、再燃してしまったんだ」
「ふふふ……旦那様の意外というか可愛らしい一面を見つけてしまいましたね」
 映像の中で見る大人で格好良い"耀 英司"という俳優のクールなだけではない魅力は、童心も持ち合わせているという所からもきているのかもしれない。
「くっ……! 次だ次! 次はハニーの部屋を見に行くぞ!」
 口元を白無垢の袖で隠していても分かるニコニコ笑顔を浮かべる澄恋の背中を押しながら英司の部屋を後にする。
「さぁどうぞ」
 部屋の前でも笑顔を崩さない澄恋、カメラマンを交代した英司は何故か背筋に一筋の汗を流しながら恐る恐る扉を開ける。そこには……。
「おぉぉぉぉ!?」
 足を踏み入れた直後、英司の顔数ミリの距離で何者かと目が合ってしまう。
 思わず奇声を発しながら後退すると、未だニコニコ笑っている澄恋の方へと向き直り。
「ハ、ハニー? さっきのは一体……」
「人体模型です」
「人体模型……? なんでそんなものが……」
 英司の疑問も最もである。しかしこのまま廊下で話していても仕方ない、改めて中へと入れば、本棚や木製の机、なにか煮込まれてる大きな壺等、普通の部屋であり、人体模型が異様な雰囲気を醸し出している。
 いや、やはり壺もおかしい。
「この壺の中身は聞いていいものなのか?」
「ふふふ」
「あ、やめときます」
 本棚もよくよく見てみれば、大体が人体に関しての標本や医学書であった。
 元来女優としてミステリアスな所も好まれていた澄恋であったが、更に謎が深まっていった。後日プロデューサーが消息不明になったらしい。

●ドキドキお料理うぉー!
「旦那様ー! 夕餉の準備と参りましょう!」
 玄関から聞こえてくる声に英司が足早に向かって。
「お疲れ様、買い物任せて悪いね」
「いえ、旦那様は収録でわたしは休養日でしたから」
 抱えた買い物袋を澄恋の手から受け取りキッチンへと運ぶ。
「随分と買い込んだなぁ。ひょっとして数日分かな?」
「え? 夕餉の分だけですよ」
「なんだとぉ……」
 Lサイズの袋が満タンに入って六つである。何をそんなに買うものがあったのか。
「それでは作って参りましょう」
 割烹着を身に纏った澄恋とエプロンを着用した英司は野菜や肉を取り出して食材を並べていく。
「肉にじゃがいも、人参……何を作るんだ? カレー?」
「残念! 今夜は肉じゃがですよ!」
 英司が驚いたのは澄恋の手際の良さ。
 具材の切り方、調味料の量や投入するタイミング。作業に無駄が無く、己の手伝う隙なんてあるのかと口を挟むのも躊躇したしまった……が。
「旦那様、此方をお願いしてもよろしいでしょうか」
「あ、あぁ。任せてくれ!」
 包丁を渡され、まな板に乗った野菜の前に立つ。鍋を見ながら合間に英司に切り方の手解きを行う。
 楽しそうに、柔らかな笑顔を演技なのか、彼女の素の表情なのかは彼には分からないが。
「(俺は今、料理を楽しいと思えてるんだな)」
 撮影を忘れた表情を、ここに来て彼は初めて浮かべたのであった。

「美味しい!」
「良かった、二人で作った初めての料理ですね。旦那様、教える事が無くて手を持て余してしまいました」
「いやいや、ハニーのお陰でしょこれは。味付けがやべぇ、やべぇしか出てこない美味さだわ」
 団欒が続く空気の中、澄恋が何かを思いついた様な顔を英司の瞳が映し出す。
「旦那様……」
 箸で美味しそうに煮込まれたじゃがいもを摘み、もう片方の手を添えながら英司の前に差し出し。
「え……」
「はい、あーん」
 悪戯めいた微笑みに英司は狼狽しながらも、この笑顔こそが皆を魅了するんだなと心でぼやきながら観念して口を開くのであった。

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