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自分より小さい人
自分より小さい人
登場人物一覧
俺――柊吉野の主人、天香遮那の友達にタイムという女の人が居る。
耳が生えているから月人だと思っていたのだが、どうやら神人であるようだ。
明将の保護者である正純と仲が良く、一緒に居る姿をよく見かける。
そのタイムが珍しく一人で高天京の街中を歩いているのを目撃してしまった。
いや、別にタイムが街を歩いてるのは普通の事だし、何も変な事は無いのだが。
「……気になる、っていうか。大丈夫なのか」
小さく漏れた言葉に自分でも驚いて口元を手で覆う。
露店の上の方に飾られた小瓶をじっと見つめているタイム。
下に並べられた金平糖の色違いなのだろう。
そして、あれはおそらくタイムが手を伸ばしても届かない位置にあるのだ。
店主も他の客に気を取られて気付いていないらしい。
「あー……もう!」
俺は見かねてタイムが欲しそうにしていた金平糖の瓶をひょいと取ってやる。
「あれ、吉野さん? 取ってくれたの? ありがとう」
「届かなそうだったから……」
嬉しそうに笑うタイムの笑顔を見ていると何だか胸の辺りがぎゅっと締め付けられる。
顔も赤くなってくるし。覗き込んでくるタイムから顔を背けた。
「心配してくれたんだ?」
「ま、まあな」
頬を掻きながら俺は前より目線が低くなったタイムに気付いて目を瞬かせた。
「あれ、小さくなったか?」
「違うわよ。吉野さんが大きくなってるの。遮那さんもそうだけど、成長期ねぇ」
そんな事を言いながら頭を撫でてくるタイム。
俺は自分の身長が伸びた事に気付かされ、とても嬉しくなったのだ。