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SS詳細

『聖女』、或いは『人形』

登場人物一覧

ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
ラクリマ・イースの関係者
→ イラスト

名前:『白き民を繋ぐ者』アンネローゼ

種族:ハーモニア

性別:女性

年齢(或いは外見年齢):不明

一人称:私

二人称:貴方

口調:敬語

特徴:【無表情】【スレンダー】【長髪】【冷静沈着】【無口】【浮世離れ】

設定:
 深緑に在るカルト集団「エルムの梟」。
 アンネローゼはその教団に於ける聖女であり、同時に教祖であるフォルター・カルデローネとの間に子供……ラクリマ・イースを設けた母親でもある。
 現在は故人。没年齢は20歳であった。

 アンネローゼは元々、教団とは何の関係もない一人の女性であり、また奴隷でもあった。
 嘗て、教祖フォルターが住んでいた水の都を滅ぼした大盗賊団が存在した。アンネローゼはその頭領が手慰みに飼っていたペットの一頭として扱われており――それを後に、盗賊団の襲撃から生き延び、力をつけ始めたフォルターが「ささやかな抵抗」として掠め取ったのである。

 結果的に救出される形となったアンネローゼであるが、フォルターはこの時、アンネローゼをこのまま殺す心算であった。
 元々の目的が「盗賊団に奪われる苦渋を味わわせるために」であったためである。だがそうした当初の考えは、それまで盗賊団に飼われていたアンネローゼが、彼の予想より遥かに『自罰的』であったことから覆されることとなる。
 ――自らを穢れと謳う少女。その穢れを自傷と自罰によって濯がんとする少女。
 この在り方を、フォルターは利用しようと考えた。己が為す教団に於いて、最も自らを厳しく戒める『聖女』へと。

 宗教には「苦行」と呼ばれる行いが普遍的に存在する。
 禁欲、または自傷行為によって自らの裡に存在する神性と向き合う行為である。元より過去の経歴から己に対する嫌悪感を抱いていたアンネローゼは、それを救い出したフォルターによって「エルムの梟」へと誘われた。
 そして、その存在を「教団内でも最も己に苦行を課す敬虔な信徒」として周囲に認知させられるようになったのである。
 ……その後、『聖女』足る立場を確固たるものとした彼女は、フォルターとの間に子を設けた後、その存在を永遠であるものとする為、人知れず殺されることとなった。

 人に飼われ、人に利用され、その末に殺されたアンネローゼではあるが、少なくとも彼女にとってその生涯は幸福なものであったと言えるだろう。
 ……例え誰もがその人生を憐れもうと、フォルターは「汚れていた自分」を「聖女」にしてくれたのだから。

おまけSS

 アンネローゼは教団の中でただ一つだけ、良しと扱われない行いを愛していた。
 それは歌う事である。教団内で作られた『白き歌』とは別に、彼女は皆の目を盗んでは市井の人間が歌う歌を愛し、それを口ずさむことが趣味だった。
 彼女は教団が「すべきである」と定めたことに邁進し続けた。教えられた氷と癒しの魔法への研鑽を忘れず、自己への苦行を常に与え続け、救いを求める者に「斯く在るべし」と教えを説けるよう知識の習熟に努めた。
 ……そうした『聖女』という、教団にとって一個の装置でしかなかった彼女が、唯一人としての在り方を覗かせたのが、只人の歌であったのだ。

 ラクリマ・イースは、覚えているだろうか。
 自身を産み落とし、教祖によって殺害されるまでの極めて短い間に、母親が人知れず囁くように歌った何気ない子守唄を。

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