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同じ道をふたりで
同じ道をふたりで
登場人物一覧
ガタンゴトンと電車がホームを出て行く音が耳に入ってくる。
シルキィと廻はバレンタインの前日に買い物をするため街に出て来ていた。
改札へと向かう廻の後を追ってシルキィは笑みを浮かべICカードをリーダーに翳す。
ピコンと大きな音と共にドアが少女の前に飛び出て来た。
「わぁ!? どうしようっ」
慌てるシルキィに廻はICカードの残高が足りないのではと精算機を指差す。
顔を真っ赤にしたシルキィは精算機にお金を入れて、無事に改札から出て来た。
「ふぇ~、お待たせだよ」
「いえ。大丈夫ですよ。慌てるシルキィさんも可愛いです」
微笑む廻にシルキィは朱を散らしコートの上から彼の腕をつつく。
「そ、そういうのは恥ずかしいよぉ」
眉を下げたシルキィは「そうだ」と手にした袋からチョコの包みを取り出した。
「ハッピーグラオ・クローネだよぉ。喜んでもらえるよう頑張って作ったからねぇ」
「わぁ、嬉しいです。ありがとうございます。シルキィさん」
満面の笑みを零す廻の隣に寄り添ったシルキィはそっと指を絡ませる。
「ふふふ……それじゃ、帰ろっか」
「はい。一緒に帰りましょう」
去年のバレンタインはここで「またね」と手を振ったけれど。
今年は同じ道を帰れる事が嬉しくて。
廻はシルキィの手をぎゅっと握った――