SS詳細
悪しき文化の祖となった者
登場人物一覧
名前:
『畜産家』ケージ・カルトリット
偽名。本名は当人を除き完全に秘匿されていた。
一説によれば或る食人を題材とした小説の登場人物の名をもじったものらしいが、詳細は不明。
一人称:
「私」。対応は誰に対しても変わらず。
転じて、彼は自らの周囲を総て同じように見ていたという事でもある。敵であろうが、味方であろうが――ともすれば、『家畜』に対しても。
二人称:
「貴方、貴方様」。基本的に他者を名前で呼ぶようなことはしない。理由も上述と同様。
口調:
「です、ます、でしょう、ですか?」。口調こそは丁寧そのものだが、その胸中で彼が他者をどのように視ていたかは……おそらく、語るまでも無いだろう。
特徴:
戦闘能力に非常に秀でている。尤も彼の能力は主に対人戦、特に一対一での状況で発揮されるものの為、複数人に囲まれた場合は勝利することは難しいだろう。
特筆すべきはその理由に在る。彼のスタイルは純戦闘能力そのものではなく、拮抗した状態に於いて話術を使いこなすことで相手の心を折ることに本質を置いているためだ。
必然、その心を支える仲間が居た場合、彼の勝率は大きく落ちる。
ともすれば、この男が死を迎えた依頼に於いて、逃亡しようとする彼を足止めする者によっては……その命は、現在も永らえていたのかもしれない。
設定:
身寄りのないみなし児を拾い、その思想と肉体を『加工』し、貴族や資産家、商人などの食材として提供する『農園』の主。男性。
正確な年齢を含め、詳細な情報は不明。それを特定する前に――彼を殺害せしめた特異運命座標が、その当人を『加工』していた為である。
そう言う理由もあって、現時点で彼についてわかっている情報は多くは無い。
……強いて言うならば、一つ。
然る特異運命座標……医術師の男性の言葉に揺り動かされ、『食材』の軛から解き放たれた一人の少年の証言が、数少ない確固たる情報と言えるだろう。
――「夢を見せてあげたいんだ」と、言っていました。
虐げられ、傷つけられ、最後には飢えて死んでいくだけの子供達。
そんな彼らを、『畜産家』は温かく迎え入れた。美味しい食事と、暖かな寝床を用意し、同い年の者たちで友人同士となれるよう環境を形作って。
……「ならば、何故『食材』として出荷したのか」。
そう少年に問うた際、苦笑交じりに答えを返された。
――「夢は、何時か覚めるものでしょう」とも、そう言ってたんです。
おまけSS
『畜産家』当人こそ死亡したものの、最早現在、彼が興した食人ビジネスは明確に幻想の陰で根付きつつある。
その証左となるかは不明だが……ここ最近で幻想内に於ける孤児の割合は、僅かながらに減少傾向を見せていた。『大半が引き取られた形跡もなく、行方不明と言う形で』。
――ぼうや、ぼうや。さみしいだろう。ひもじいだろう。こっちにおいでなさい。
人気のない路地の裏。飢えと寒さに震える子供たちに、そうした言葉と共に手を伸ばす大人の姿は、今日も何処かで覗いている。