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きっと君はその意味すらも
きっと君はその意味すらも
登場人物一覧
膝の上に乗るジュリエットの香りは何時ぞやの馬上よりも遙かに濃密だ。
チョコレートの甘さも相まってギルバートの心臓は張り裂けんばかりであった。
そこへ触れた『頬』への柔らかい感触。
ジュリエットからの親愛を含んだ口付けに一気に熱が上がる。
これは彼女なりのお礼なのだろう。王族という話しだからそういう習わしがあるのかもしれない。
けれど、ここはもう彼女の国ではない。
王族ではないし、只の一人の少女なのだ。
耳朶に口付けを落せば、頬を真っ赤に染めて目を見開く初々しさに目が眩む。
きっと耳にキスをされた事なんて無いだろう。初心で愛らしい乙女だ。
だからこそ、心配になってしまう。
「しかし、男性にそういう事はしてはいけないよ、ジュリエット。勘違いしてしまうからね」
君は親しくなった人にはそうする事が当たり前の環境で育ってきたのだろうけど。
それを『誘い』だと捉える男が居るかもしれない。
いや、こんなにも美しく愛らしいジュリエットが頬にキスしてきたら誰だって彼女に魅了されてしまうだろう。
彼女の頭を優しく撫でて、そっと膝の上から少女を隣に座らせる。
ギルバートは自分でなければこの可愛さに耐えられなかったかもしれないと詰まっていた息を気付かれないように吐き出した。