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ランドウェラと零のお話 観察ランドウェラ
登場人物一覧
これは上谷の名前が変わる前、イデア崩壊に決着がつく前辺りのお話。
ギルドメンバー用に、最近人気らしきフランスパンを買いに行こう。
そんな考えの元、件の噂のパン屋へと向かったランドウェラ、そんな彼の脳裏によぎるのは、とある糸目の友人。
「フランスパンと言えば零だよなぁ………とりあえず買いに行くか。」
言葉を零しつつ、お店……屋台の前に。良く良く視れば、やけに人が居る。人の多さに少し首を傾げつつも、並んで待てば自分の番。
早速目的の品を伝えようと顔を上げれば、其処には―――
「店主、このフランスパンを5つ―――やっぱり零じゃないか!!」
「ん?なんだランドじゃん、いらっしゃい、何買ってく?」
―――屋台のカウンターから顔を覗かせた上谷が其処に居て。
「零、お前……」
「?」
「ちゃんとパン屋してたんだな………!」
「今まで俺を何だと思ってたんだよ?!」
パン屋は思わず叫んだそうな。
「んん…まぁいいや、確かにちゃんとランドにその姿見せた事無かったしな。んで、注文はフランスパン5つで良いのか?」
「あぁ、僕だけじゃなくて、ギルドメンバーの皆に一本ずつ用意したくてな、やっぱりいっぱい食べられる方が幸せだろう?」
そんなランドウェラの言葉に、少し上谷は考えこんで。
「ん-、そうだなぁ、その気持ちには凄く同意する所だが……折角なら、他の商品も買ってくと良いんじゃねぇかな?ほら、これで意外とパンの種類は在るからさ。シェアするんならフラッカリーとかもいいと思うぜ、ほら。」
そう言って君に見せるのは、まるで棒菓子のように小さく、食べやすい大きさのフランスパン。
「ほほぉ…ならこれも貰おうかな、フランスパンと合わせて買うとするよ。」
「了解、ちょっと待ってな。」
フランスパンとフラッカリー、其々五人前を君に渡し、代金を君から受け取って。
「はい、フランスパンとフラッカリー五人前、代金もしっかりと。」
「ありがとう、零、また来るよ。」
「おぅ、今後ともご贔屓にー。」
ランドウェラは一旦立ち去り、そのギルドに戻るまでの間に、折角だしと一番食べやすいフラッカリーをカリっと一口。
「ん!カリカリで美味しいな!……あれ、こっちの方が、ギルドメンバーは喜ぶのでは?」
そんな思考が口から洩れたが、まぁ買っちゃったし良いだろう、なんて思いなおし、帰路に着くのだった。
そして、その日を境に、ランドウェラはとあることをしだした。……そう、零のパン屋への張り込み調査である!
ちなみに牛乳もアンパンが大事と聞いたけど、零のパン屋にはどうやらアンパンが売られてないらしいから、今回はやめておいた。後で創れるか聞いてみてもいいかもしれないな。
―――とまぁ、つまるところ、この男、暇なのであった。
そんなこんなで、ランドウェラは零の屋台「羽印」の張り込みを開始した訳だが……。
ここ数日、零の屋台の様子を見続けて、分かった事がある。
「……零のパン屋、凄く人が来てないか…………?」
零の屋台には、結構な人がやってくる。昨日も一昨日もそうだが、凄い盛況ぶりだ。見た感じ、フランスパン目当ての人も多い様に見える。
なんでも他のパンより安く、そしてとても美味しいからだそうだ。
僕は昨日や一昨日買った、イヌスラパンやクリームパンみたいな甘いパンの方が好きだけれど、いっぱい食べれるって事を考えると安くて美味しいのは良い事だろうし、人がたくさん来るのも頷ける。
だが……そう、確か一度僕が見ているタイミングで零が屋台と共に何処かへ走っていくのを見たから、試しに零に質問してみたんだよな。
そうしたら、零はこう言ったんだ。
「あぁ、俺のフランスパンの定期購入してくれる人の所に配達に行ってんだよ。意外とリピーター多いんだぜ?」って。
人気っていうレベルじゃないというか……かなり忙しく動き回っていないか?
思わず、ランドウェラは一段落して休憩中の零の所へ行ってしまい。
「お、どうしたランド、なんかあったのか?」
「零、体は大事にするんだぞ。」
「???……お、おぅ、気を付けるよ……。」
混沌のフランスパンを、憂うのだった。因みに零は凄く困惑した。
ついでに金平糖も渡しておいた、きっと体の元気につながる筈だ。
そうしてまたまた後日。
「結構色々見てきたけれど、零も色々やってたんだなぁ」
美味しいパンも色々知れたし、また買いに来てもいいかもしれない。
ともかく、今日で一旦張り込み調査は終了しても良いかな、なんて思いつつ、零が屋台の店じまいをし始めているのを見おさめて帰ろうとしてた頃。
「あ」
ランドウェラの目に変な光景が飛び込んだ。
ブルルン……ブルルン。
バイクの音が鳴り響く。
其処に居たのは、バイクに乗り、ごつい体をした如何にもな風貌をした男三人衆、怪しさがとても凄い。
先ほどまで気配すら感じなかったので、見た目に比べて隠密型なのかもしれない。顔の眼付きの悪さは何一つ隠せてないけれど。
「はっはぁ!!!此処であったが百年目!今日こそはテメェを攫って無限の
そいつが有れば、俺様達は一生遊んで暮らせr「さよなら!!!!!!」あ、テメェ!!!何してやがる野郎ども!追えッ!!!」
「マテッツッテンダロゴラァ!!!」「ニゲラレルトオモウナヨォ!!!!」
零は慣れたと言わんばかりに、流れるような動作で屋台のエネルギーをぎゅいんと入れて相手のセリフが終わるのも待たず急発進していた!機動力の賜物である。
「待てと言われて待つ馬鹿が居るかぁ!!!!!」
あっという間に零と屋台は遥か彼方に!!あっという間に10メートルぐらい差を付けてる!!とっても早い!
「ニガスナァ!!」「オエェ!!!」「ブットバシテヤル!!!」
そして彼らの姿も声も、あっという間に遠くへ消えて……先ほどの喧騒が嘘のように、あっという間に静かな空間になってしまった。
「……逃げ切れるなら、僕は何もしなくていいか。お、このパンも美味しい。」
そう言いつつ、フランスパンバーガーをもしゃり。やっぱり手軽に野菜と肉が食べれて美味いよな。でも炭酸も飲みたくなってきたな。
……とりあえずさっき見た光景は、炭酸と一緒に飲み込んで気にしない事にしよう、そうしよう。
そうして、彼はそのまま、炭酸を求め、歩を進める。
―――後日、上谷のパンの種類が増え、また張り込み調査が始まったりするかもしれないが……それはまた、別の話だ。