SS詳細
紫晶竜はとく眠り
登場人物一覧
名前:『紫晶竜』ニウェウス
種族:旅人
性別:雌
年齢:Unknown
一人称:私
二人称:貴方/ルーキスのみ呼び捨て
口調:です、ます、ですか?
特徴:おおらか、心配性、誇り高い
紫水晶の角と爪を持つ竜の旅人。
己の力を自覚するが故に、人と関わらず洞窟で大人しく暮らしていた穏健派。
召喚時期は不明。
大召喚より遥か以前に混沌へ召喚された別世界の竜種。
眠りについていたがルーキス領の洞穴で採掘中に存在が確認された。
目覚めた後はルーキスとの契約を結んでおり、現在はルーキス領のマスコット兼用心棒となっている。
ルーキスとの関係性は知人ないしは友人のような間柄。契約は直接的な物ではなく土地を介したもの。
モフモフ毛並みと羽毛が冬はとてつもなく恋しい。
彼女は、導きの竜である。
元の世界では竜神として祀られ、千里眼を持ってその一年の吉兆を占っていた。
いわゆる『人間』に相当する存在を深く愛している。
混沌に召喚された後、最初はあの世界に置いてきた愛しき人間(こ)らを懐かしんだ。
あるいは、それは心配であり、憐憫であった。
けれど、現時点での帰還方法がないことが分かったあたりでニウェウスは切り替えた。
「私がどの世界にいるのであろうと、か弱き子らは、導くべき子らはすぐそこにいるのですから。
どうして先の世界の事ばかりに心を砕きましょうか」
ある日、彼女の弱体化した千里眼が驚くほど鮮明だったことがある。
自分を恐れる子らを見た。
自分が大地を踏みしめるのを見た。
怯える子らを見た。
似て非なる同族が蹂躙する日を見た。
「……眠りにつきましょう。どこか遠く、どこか深く。
私の存在が子らを怯えさせるのであれば、私は静かに、この身を隠しましょう――」
彼女は独りを厭わない。彼女は竜だから。
圧倒的長命はうんざりする程の孤独さえも慣れてしまう。
手の先で踏みつければ死ぬ愛おしき子らが、長くともたかだか百年程度の周期で目まぐるしく移り変わる刹那の子らが。
自分を置いていくことなど今更だから。
ギフトは別世界由来の千里眼。
とはいえ、大幅な弱体化により精度は緩く見れるものも曖昧でほぼ役に立たない。
最近まで眠っていたことと混沌肯定により千里眼以外の点でもかなりの弱体化が見受けられる。
それでも危機が訪れれば高火力の攻撃魔法に加え、多種多様な支援魔術を駆使するだろう。
その中でも最も得意とするのは治癒魔術。
おまけSS『それはたとえ偶然の出会いだとしても』
ある日、夢を見た。
再び空を舞うことを誰も恐れないそんな日の夢だ。
穏やかに過ぎる日々を、悠久の空を飛ぶ夢だ。
好きな時にまどろんで、好きな時に起きるそんな夢だ。
「私の名はニウェウス。貴方の名前は?」
眠りから目覚めた竜の旅人は、その日、月夜に映える蒼い魔術師と出会った。
「なるほど、長い時を経たのですね。ここは貴女の領土であると。ええ、分かりました。私は出ていき――え?」
安住の地を求め、旅立とうとした竜の旅人は、魔術師から思いがけぬことを聞いた。
「私と、契約を交わすというのですか? ……貴女は異界の魔術師であると、だから同じように異界の者である私と契約を交わすことに問題はないはずだと……私は安住の地を得る。それで、貴女が得る物は?」
事も無げに告げられた言葉に、竜は笑う。
だってそれは、初めての言葉だったから。
「なるほど、私に定期的にもふらせろと。ふ、ふふ、ふふ。それに、この地を守れと。……あぁ、いえ。構いませんよ。それでは、誓いましょうか、魔術師よ――」