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私の全てで貴方を

登場人物一覧

ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
ティア・マヤ・ラグレンの関係者
→ イラスト


 世界がほんの少しだけ明るいものになった。
 『穢翼の死神』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)には美しい白い羽を持った妹がいて、名前をエステルと言う。
 彼女たちは旅人だ。
 故に元の世界というものがあるが、二人はそこで生き別れていた。
 しかし、時が経ち、天文学的な確率を踏み倒して、縁で結ばれた二人は再び混沌の世界で出会う事が出来た。
 一人はイレギュラーズとして。
 一人は貴族として。
 相容れないと思われた黒と白の翼は今、寄り添う事ができたのだ。

 それから――。

 あれからティアは、エステルとの茶会に話を咲かせていた。
 今まで見てきた事や、感じた事。元の世界で何があったかなどなどなど………話は、――話せば話すだけ話題が広がっていく。
 そうしているうちに、さっきまでは空の一番高いところにあったはずの太陽も、いつしか月にすり替わっていた。
 詰まる所。既に、時計の短い針はてっぺんを指さそうとしているのだ。
 ティアはそれに気づいて思わず立ち上がった。
 いきなりティアが立ち上がったものだから、エステルの躰が驚いたように微動してから、ティアの視線の先を辿れば「あぁ!」と呟く。
「驚いた」
 ティアは恥ずかしそうに一度席に座ってから、紅茶を一口含んだ。
 さっきまで温かった紅茶も、今ではとても冷たくなっている。
「ええと……随分と、話し過ぎちゃったね? もうこんな時間だった、楽しい時間って早いね」
「ええ……全然気づかなかった」
「一日じゃ、話足りないよ……でもそろそろ帰らなきゃ」
「帰っちゃうの?」
 寂しそうに俯いてから見上げるように強請るようにティアを見たエステルは、妹として違わない。
 まだ、姉に甘えたい頃合いなのだろう。
「うーん」
 だが、いつまでも上がり込んでお邪魔しているのも、なんだか後ろ髪が引かれる思いだ。
 そこで、エステルが両手をぱんと叩いて、笑みを浮かべてみせた。ティアは知っている、この笑みは何かいいことを思いついたときの笑みだ。
「じゃあ、今日はお屋敷に泊っていって!」
「ええ!? いきなりだね、いいけど……迷惑じゃない? だって今日いきなり来て、いきなりだし、いきなりって何回言うんだろう私……」
「いいじゃない、いきなりでも! 姉妹ですし、それにほら!」
 エステルは両手をお上品にパンパンと叩いた。すると扉から初老の男性が顔を出して来る。恐らく執事なのだろう、エステルが何かを男性に命じると、にっこり笑った初老の執事は再びどこかへと消えていくのであった。
 暫く会っていなかった妹だが、どうやら本当の貴族であることを突き付けられるようだ。他人の子供は成長が早いとか聞くが、まるでその事が目の前で起きているような気分になったティアである。
「色々と準備させますし、お洋服とか寝る場所も安心してね。下着の心配とかも!」
「いくら姉でも、そこまでお世話されるとちょっとだけ恥ずかしいかも?」
 屈託の無い満面の笑みを浮かべる妹に、ティアは仕方ないと同じように笑みを浮かべたのであった。
「ティア、また一緒にお風呂入らない?」
「んー、エステルがそうしたいならまた久し振りに入ろっか?」
「やった♪ また背中とか流したいし」
「それならお願いしようかな?」



 所変わって、同じお屋敷のお風呂に来た。
 大浴場とはその名前の通りで、お屋敷の地下に広がる落ち着いた雰囲気が広がっている。
 ボタンを押せば、湯船が七色に淡く光ったり、ジャグジーや泡風呂の用意があったり、終いには執事がワインなどを持ってくるオプションまであるとかなんとか。
「貴族って感じ」
「貴族だもん?」
 ふふんと胸を反らした妹のおでこに、指パッチンしたティア。
 ともあれ、確かに落ち着いた雰囲気で依頼の疲れが湯に溶けていくようだった。いつも布の面積が比較的少ない服を着ているからか、お湯の暖かさが身に染みていく。
 ふと、少し時間が経ったところでエステルはティアの手を引っ張り、シャワーの前に座らせた。
 エステルは柔らかい泡を育ててから、爪をたてないようにゆっくりとティアの躰に泡を伸ばしていく。
「ティアの肌って綺麗だよね」
「エステルの方が綺麗じゃない? 翼も、あの時と変わらずに真っ白なままだし」
「翼の色はティアのお陰だから」
 そうかなと、ティアは少しばかり頬を朱に染めていた。
 ティアやエステルの翼は本来、元の世界の穢れを擦って溜めていくものだった。故に溜め込み過ぎた黒い翼は歴戦の証のはずーーだがそれは受け入れられなかった残酷な運命をも刻んでいたのだ。
 変わって、白い翼こそが至高だと。穢れ無き、曇りなき翼こそが善なるものとーーー苦い記憶の種が、ティアの心をちくりと刺していた。そんなティアを見て、エステルは黒い翼と一緒にティアを背中から抱きしめていく。
 嗚呼、さっきのお風呂と同じ。
 とっても温かいものがティアを包み込んでいく。
 まるで心が満たされていくかのように、まるでこれが本当の家族なのだと理解するように。
「ティア……ずっと一緒にいたい」
「うん……」
 触れ合った肌と肌が離れないように、エステルは一層強い力を込めてティアを抱きしめていた。
「そーれーに!」
 エステルが突然抱きしめていた手をティアの胸元に置いた。彼女の立派な膨らみを確かめるかのように当てられた手に、きゃっ!! とティアの背中が跳ねる。
「いつの間にこんなに育ったのかな~!」
「元からだよー、ていうか元の世界のときと変わってないし」
「いーや、変わってる……はず」
「もー、くすぐったいよ」
 くすくす笑いながら、ティアは好きにさせていた。回り込んできたエステルが、ティアの胸元に顔を埋めるようにして抱き着いてきて、それを愛おし気に撫でる。まるで赤ちゃんが擦りついてきたかのように、ティアの中の母性が刺激されるかのような光景だ。
 いつまでも妹として、愛らしい姿を見せるエステルに。
 ティアはそっと彼女の額にキスをしたのである。


 お風呂からはのぼせる前に撤退した二人であった。
「いやあ、久しぶりにティアと入ったから凄い長い時間入ってた気がするよ……!」
「そ、そうだね、ちょっと話混んじゃったね」
 二人で苦笑いしながら、屋敷のバルコニーで夜風にあたっていた。まだ夏の香りを残した風がふいていたが、二人にとっては丁度いい程度の温度だ。火照った躰を冷ますように遠くもなく近くも無い距離にいる。
 ただ、彼女たちの手はずっと結ばれたままだ。
 指を絡めるように何度も角度を変えたり、絡め方を変えたり、しかし途切れることは無く。指先から伝わる相手の鼓動を、楽しんでいた。
 次第に疲れから、ティアのほうが先にうとうとと船をこぎ始めていた。
 目が開いたり閉じたりを繰り返し、頭が上下にかくかくと揺れるのだ。そんな光景さえ楽しいものとして、エステルは見つめていたのだが。そのうちティアの頬を指でつんつんと突きながら、むにゃりと起き上がったティアがぼーっとした表情でティアをみて、にへらと笑った。
「あはは、ティアったら寝ぼけているの?」
「うーん……でも、流石に疲れたから、もう眠いっていうか……そろそろ限界を突破するっていうか」
「ティア、今日は一緒に寝てもいい?」
「ん、私は構わないよ」
「ふふ、ありがとう、お姉ちゃん」
 エステルはティアの華奢な躰をお姫様だっこの要領で持ち上げ、白い翼を広げた。
 飛んでいくのは寝室まで。廊下の上を低空飛行して、滑るように彼女を持っていくのである。


 エステルの寝室は、淡いオレンジの光が照らす空間であった。
 落ち着くアロマの香りと、ふかふかのキングサイズのベッドがひとつ。お水がいれてあるデキャンタとカップが置いてあり、少し窓があいているのかカーテンがふわりと揺れていた。
 躰の形に合わせてふわりと受け止めてくれるベッドの上に、ティアは倒れるようにして入る。こんなベッドは自分が使っていいものか……とエステルを見ると、エステルがもぞもぞと布団の中へと入って来た。
「ふふ、こういうの久しぶりだねティア」
「ん……そうだね」
 お揃いのネグリジェを纏い、エステルはティアの躰を擦りつけるようにしてまた、抱き着いてきた。
 長年留守にしていた姉の存在が嬉しいのだろう。
 こんなにも我儘に甘えてきた事は、以前あっただろうか――いや恐らくは無い。だから新鮮な妹の行動に、ティアは嬉しささえ感じるのだ。別れていた時期は長かったが、その時期がスパイスとなって妹をこんなに可愛らしく仕上げてくれたのだから。その点だけは、元の世界に感謝しなくてはいけないと冗談めかしつつ。
「ねえ、お姉ちゃんもう寝ちゃうの?」
「うーんちょっと目が覚めちゃたかもしれない。ベッドに入ると途端に目が覚めるんだよね」
「お話とか、色々したいかも」
「また明日でも出来るよ。今でもいいけど……」
「ふふ……」
 エステルはティアの躰の上にころんと乗っかって、ティアの頬に唇を当てる。それも何度も、何度も。
 ティアは妹の背中に手を回して、撫でた。するとふと、指先がエステルの翼の根本にあたり、
「ひゃっ」
 とエステルが揺れたのだ。
 そういえば翼に触れられるのは、あまり慣れていなかったっけ――。
 ティアの偶然の悪戯にちょっとばかりエステルは顔を真っ赤にしていた。
「もうっ。やり返しちゃうからね」
「え、ちょ、わっ」
 ぐいぐいと強引にエステルの手がティアの背中に回されて、翼をなぞるようにして指先が這っていく。同時にティアの背中にゾゾゾと電撃のようなものが奔り、それが嫌なものでは無くてどこかしら快楽を手繰り寄せるようなものであった。
「んあっ!」
 思わず甲高い声を出してしまったティア。こんな声が出るものかと、ティアは恥ずかしそうに両手で口を押えたのだが、エステルの両手がティアの手首をつかんで開かせていく。
「だーめ、我慢高いなの」
「んん……」
 その時エステルは悪戯的な笑みを浮かべていた。こうなった彼女は止まらないだろうと、ティアは心の中で何かを諦め始めていた。
 ならばとただ受けるのも嫌だ。姉妹はお互いに背中の翼をつまんだり、なぞったり、もふもふとしてみたりと色々な行動を試しては相手の行動を観察していた。
 くすぐりの攻防を広げていくうちに、ティアの眠気は完全に吹き飛んでおり、二人はベッドをぐしゃぐしゃにシワ寄せながら楽しんでいくのだ。
「ひぁっ、ああもう、そこ触ったらだ、め!!」
「エステルこそ、弱いところをずっといじってくる……んっ……あぅっ、変な声出ちゃった」
「はぁ、ん、やだあそれちょっとぞくぞくしちゃうかも、あっ」
「ここすっごく好き? じゃあ重点的に――って、わっ、ぅっ」
「だめだめだめ~~~そこ、だめだって、あははっ」
 お互いくたくたになるまでやっていた。
 そんな二人を間近で見ていたのが、二人の世界の神様だ。
 なんとかこの場にいない空気であるとして、二人の間にちょっかいは出さなかったが、ものすごく居心地が悪そうに、いやむしろこんなところ(ティアの胸元)にいて申し訳ない気持ちが神様を襲っていた。
 キングサイズのベッドの上、お互いに荒い息を吐きながらお腹が息につられて膨らんだりへこんだりを繰り返す。汗ばんだ肌に、外からの風が気持ちよく撫でていく中。再びエステルはティアにくっついた。
「もうちょっと、していい?」
「ん……何を?」
「ちょっと試してみたいものがあって……」
 エステルが取り出したのは、少しだけ甘い香りのしたとろとろとした液体が入っている小瓶だ。
「マッサージ用なんだけど、使ったことがなくて。ほら、執事とかにやらせるのもちょっと気が引けるでしょ?」
「まあ、確かにね」
「バストアップ効果とかもあるって」
「ちょっと……いやかなり胡散臭いね」
「でも物は試し、ほら脱いで脱いで!」
「あ、私が受けるんだ」
 エステルは小瓶を逆さまにして、中から蜂蜜のようにゆっくりと透明な液体が手のひらの上に広がっていく。
 大丈夫なのか正直本当に心配だったティアだが、エステルがそこまで言うならと無防備な姿勢になりつつ。
 すると、エステルの手に乗っかった液体が、今度はエステルの指先から垂れてティアのおへその上から円を描くように垂れ流されていく。
 火照った躰であるから、冷たい液体の感覚にぴくりと身体を揺らしたティアであった。
 ある程度流れてから、エステルはティアのお腹から伸ばすように蜜を塗っていく。広がっていく甘い香り。まるでお菓子のように食べてしまってもいいものかと思う程だ。
 液体がティアの胸元を通って首や指先まで塗られていく。確かに保湿効果はあるようで、それ系統の美容液なのだろう。だが液体を広げるたびに、耳元でくちゅくちゅ鳴る音はなんとも恥ずかしいものだ。
 ふとエステルの手がティアの敏感な場所に触れていく。
「あぅ。そういうところは、自分でやるから……」
「いいの、やらせてほしいの」
「そ、そういう意味じゃなくて……こう」
「こう?」
 純真無垢なエステルの瞳が、疑問の色になると、どう答えたらいいものかと。まるでちょっとえっちだからやめて欲しいだなんて言ったら、どうなることやら。その危惧はいい結果と悪い結果が五分五分で、ティアはあえて何も言わずに、妹のすることを黙って受けていた。
「きもちい?」
「うん、マッサージされてる感はあるかも」
「じゃあ後ろ向いて」
「ふぁ」
 今度はうつ伏せになったティア。
 その背中に再びあの液体が流されていく。最初は背中の真ん中であったのだが、エステルの細い指先はどうやら翼の付け根を執拗に狙っていた。さっきのお返しか、それとも隅々まで触りたいエステルの節介か。本心は解らないが、どうやら先程くすぐりあっていた時よりも刺激がなんとなく強い。
「ひ、ゃっ……えすてる、そこだめっ、んっ」
「気持ちいんだ? あとで私にもやって?」
「いいけど、でも……ああぅっ、ん、んっんっ!」
 エステルはティアの躰を弄ぶように動いていく。
 ちょっとでも敏感な弱点を魅せれば、そこを何度も擦って刺激を与えてきた。まるで今は指にだけ集中しろと半ば強制的に自分の意識がエステルのペースの飲み込まれていくようだ。
 妹は遊び感覚で、全くそこにえっちな気持ちはきっと無いのだろうが、やっていることは割と大変なものだった。
 翼の付け根が液体で湿って、くちゅくちゅぴちゃぴちゃと水音が鳴る。
 それが段々高くなっていくと、ティアの心の中も荒らされているように高なっていた。
「ううう、あとでお返しする……」
 ティアは鳴き声のように囁きながら、エステルが楽しそうならばそれでいいかと独りごちたのであった。

 それから二人が寝たのは、翌朝になってからである。
 長い長い夜は、ローション攻防になり、それもまたお互いがくたくたになるまで続けられたのであった。

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