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コルとパルフェタムール、マリンリゾートへ♪
登場人物一覧
暖かい日はあるものの、混沌はまだまだ、寒い。
「パルフェタムールさん、此処はとーってもアツアツで気持ちいいのです! 紛れもなく、バカンス日和ですねっ♪」
コル (p3p007025)はラウンド型の淡いグリーンのサングラスにミント色の日傘をさしながら、隣を歩くパルフェタムール(p3x000736)に話しかけた。空は青く、温気はパンケーキのように甘くしっとりしている。コルは無意識に目を細めた。パルフェタムールの翼が歩く度に、コルの肩を撫でていく。
「うん、私もそう思うよ」
パルフェタムールはコルに微笑み、麦わら帽子を押さえた。風の悪戯。ふと、真っ白な砂浜にパルフェタムールの汗が流れ落ち、一瞬の影を作った。
「はぁ~、幸せですっ!」
コルは息を大きく吸い込んだ。はちみつやバニラを思わせる甘いパルフェタムールの香りがとろとろと肺に落ちていく。
「コル、まずは喉を満たそう?」
パルフェタムールは凛と笑い、コルの頬をさらりと撫でた。
「はっ、はいです!」
コルはハッとし顔を真っ赤にさせた。
「お嬢さん、ドリンクはいかがです?」
無機質な声が聞こえ、反射的にパルフェタムールとコルは真横を見た。銀と青が混じった全身鎧が手を振っている。とても大きな人だった。
「おススメを二つ、私達にもらえるかな?」
パルフェタムールは言った。
「ありがとうございます、マンゴーラッシーをご用意致しますね」
店員は頭を下げ、露店に駆けていく。
「パルフェタムールさん、マンゴーラッシー楽しみなのです」
「そうだね、喉が渇いていたから丁度良かった」
パルフェタムールは言い、気配に気が付く。コルもまた、濃厚な果実の香りを感じ取った。
「お待たせ致しました」
店員は正面に回り込み、ガラスのコップに入ったマンゴーラッシーをパルフェタムールとコルに手渡した。
「ありがとうなのです。おいしそーなのですよ♪」
コルはサングラスを外し、マンゴーラッシーを一気に飲み干した。
「パルフェタムールさん、おいしーです!」
「うん。それは良かった」
パルフェタムールはマンゴーラッシーを口にし、目を細めた。それは異国の味がする。
海はパルフェタムールとコルのものだった。
「あ~!!! パルフェタムールさん! 速くて風がきもちいーですねっ♪」
漆黒のウエットスーツに身を包んだパルフェタムールとコルは、水上スキーを楽しんでいる。そう、動力は巨大なロブスターだ。コルは片手を離し、パルフェタムールに手を振っている。とても器用にバランスを取っている。
「そうだね、楽しくて仕方がない。まるで、玩具を与えられた子供のように私もはしゃいでしまうのさ」
パルフェタムールはロブスターの背を見つめ、一回転を決めた。
「わっ!! お姉さま……素敵なのです♪」
コルが目を輝かせれば、パルフェタムールは嬉しそうに笑った。水飛沫と轟音、降り注ぐ太陽の光に甘い風。刺激的なひと時となる。水飛沫を浴びながらパルフェタムールとコルは、ロブスターの力でぐんぐん進んでいった。やがて──
「今度はダイビングの時間ですっ。えいっ!!」
コルがウエットスーツを脱ぎ捨て、花柄の水着姿で、澄んだ海に飛び込む。
「おや、それは素敵な時間だ。行くしかないね」
パルフェタムールは笑い、ウエットスーツを脱ぎ捨てれば、色違いの花柄の水着が現れた。パルフェタムールはコルを追い、海に飛び込んだ。
「!!」
パルフェタムールの双眸に
「コル、左を見て?」
パルフェタムールは言った。
「え? ああっ!?」
コルは目を見開いた。小魚の大群が目に入った。瞬く間に囲まれる。コルとパルフェタムールは笑い、壮大な命とともに海を泳ぎ、陸に戻った。
「楽しかったですっ!」
コルは言った。
「うん、私も楽しかった」
コルとパルフェタムールは砂浜に座り、目を細める。青い空はオレンジ色に変わっていた。
「奇麗だ……」
パルフェタムールは呟き、空と海を眺める。何もかも満ち足りていた。
「青い空もオレンジ色の空も大好きになりましたっ!」
「私もさ」
「えへー……感情のお揃いなのですっ♪」
コルは笑い、大きなくしゃみをする。パルフェタムールは立ち上がり、くしゃみに驚いているコルに右手を伸ばした。
「コル、そろそろ、着替よう。水着は冷えるからね」
「はいなのです!」
コルはパルフェタムールの手に触れる。その手は柔らかくて甘い香りがした。
天井から服がぶら下がっている。そう、コルとパルフェタムールは古着屋にいる。
「パルフェタムールさん! じゃあ~ん、なのですっ♪」
試着室からコルは飛び出し、待っていたパルフェタムールの腕に抱きつき──ランウェイを歩くモデルのように、パルフェタムールと一緒に店内を歩き始める。
「コル、よく似合っているね」
パルフェタムールは華やかに笑った。コルは黒のスキニーパンツにオーバーサイズの白のTシャツを着ている。
「ふふー、嬉しいのです! パルフェタムールさんも素敵です!」
コルは尾を振り回す。パルフェタムールはライトブルーのショートパンツにクリーム色のTシャツ、ネイビーブルーのジャケットを着ている。
「ありがとう。コルに褒められると至極、嬉しい。おや、観客がいるようだぞ?」
パルフェタムールは微笑み、凛と立ち止まった。
「あ、店主さん!」
コルは口笛を吹く
「似合ってますぞ! そして、お二人さん! 次にこの服はどうでしょうか?」
店主の手にはパルフェタムールとコルの為に選んだ服があった。
「着てみたいです!」
「いいね、素敵だ」
パルフェタムールとコルは笑う。しばらくして、店主の瞳にイエローワンピースを着たコルと、黒のブラウスとピンクのフレアスカートを着たパルフェタムールが映り込んだ。
「可愛い服が買えて良かったです」
コルはスキップをする。
「うん、今日は楽しい事ばかりだ」
試着した全ての服を買い、コルとパルフェタムールはレストランに立ち寄る。服装は二回目のもの。テーブルには、ココナッツの刺し身、ヨーグルトが入ったハーブのサラダ、レモンとトマトの真っ青スープ、薔薇の形をしたガーリックシュリンプが並べられている。飲み物は梅ソーダ。
「では、お刺身からいただいちゃうのです! わわっ!? お醤油とココナッツって合いますねっ! おいしーのです」
「うん、美味しい。サラダも酸味があって癖になるね」
パルフェタムールは笑う。野菜を噛む度にしゃきしゃきと音が鳴る。
「本当です、サラダも美味しいです。うーん? 次はスープをいただきます! え、わ!? かっ、辛いです~! でも、おいしーのですっ! ひやぁっ!」
コルは真っ赤な顔で舌を出した。一口飲んだだけで身体が熱くなった。
「コル、飲み物を飲むといい」
パルフェタムールが微笑む。コルを愛おしいと思った。梅ソーダを飲むコルを見守りながら、パルフェタムールはガーリックシュリンプを食べ、唸った。にんにくバターが食欲を刺激する。
「ああ、殻まで美味しい」
パルフェタムールの言葉にコルは頷く。心と身体が満たされていく。
「満腹です~! もう、食べられません!」
「ふふ、良かった。幸せなことだね」
レストランを出て宿泊先のホテルに向かう。夜風がとても気持ちよかった。数分後──手続きを済ませ、案内されたのは水上に建てられ、独立した客室。室内は木の香りがし、真っ赤な猫脚のソファ、くらげ色のテーブルには見たことのない
「パルフェタムールさん。この部屋、す、凄すぎますっ!」
コルは興奮した様子で部屋を見渡す。
「驚いたよ。私の想像を上回る程の部屋で寝るのが惜しいくらいだね」
パルフェタムールは言いながらくすくすと笑う。こんなにも素敵な部屋なのだから、夜更しは必須だろう。
「え? ふふっ、パルフェタムールさん! 今日は夜ふかしディーなのですよ! あっ! こっちの部屋は何があるのです?」
コルがドアノブを勢いよく掴んだ。
「コル、待って」
パルフェタムールの優しい声。コルはドアノブを掴んだまま、立ち止まった。
「……パルフェタムールさん?」
コルはびっくりしていた。突然、パルフェタムールに後方から強く抱きしめられたのだ。
「えと……?」
パルフェタムールの両手がコルの腹部を包み込んでいる。
「コル、ドアノブをそっと握ってごらん?」
パルフェタムールがコルの耳元で囁く。
「ひゃん!? そ、そっと……こ、こうなのです?」
コルはドギマギする。パルフェタムールの熱い吐息を感じるのだ。
「うん、最高だ。ドアを静かに開ける。これもレディらしい振る舞いの一つになる」
「え、わっ!? 閉める時も、なのです?」
「素晴らしい、その通りだね」
パルフェタムールは笑った。コルは頷き、扉を慎重に押し開け、パルフェタムールとともに部屋に入った。
ドアをゆっくりと閉め、コルは目を輝かせる。見つけたのは、ガラス張りのシャワールームに白色のバスタブ、透明な瓶に入った虹色のバスソルト。全てが宝物のように煌めく。