PandoraPartyProject

SS詳細

ファナティックシアター/階梯症候群

登場人物一覧

ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針


「と、言うワケでですね。ハロウィン、感謝祭、クリスマスで余ったキャラメルを溶かしてポップコーンにかけると、キャラメルポップコーンになるんですよ」
「ほう」
 ルブラット・メルクラインはちょっとばかり感心したような声を出したが、それだけだった。
「いや、余ることはないな」
「え?」
「余ったら廃教会に住まう孤児らに持っていく。大抵腹を空かせているからな」
 裸電球が割れた廊下に明りはない。硬質な踵の音だけが闇の中に響きわたる。大股で歩く度に混じりけの無い黒タキシードの裾が蝶翅のように揺れた。
「廃教会!? 子供!? ですか!? ほうほう、それは聞き捨てならぬ素晴らしい単語!! ところでルブラットさん、その中に生きたまま腑分けしがいのある悲鳴の素敵な茶髪の子っています?」
「……さて、どうだったか。あまり個としての特徴を覚えていなくてね」
「そうですか。いたら教えてくださいね!! ルブラットさんの世界、素敵な素材がいっぱいで楽しそうだなぁ。どんな物語があるのかなぁ。蒐集したいなぁ!!」
 人の気配がするその部屋だけが普通だった。その普通さには、冬空に赤々とした陽が灯っているかのような、そんな不気味な異質さが含まれている。

 地獄とは、こういう事を言うのだと。
 かつては煉獄の主とまで呼称された犯罪者、元剥製蒐集家マーレボルジェの眼が死んだ。

「お前ら、キッチンで何してる」
「あ、マーレボルジェちゃんだ。やっぱり来た」
「ドウモお邪魔シテイマス」
「おい、誰だ。その挨拶を教えたの」
 映画蒐集家は全力で笑い、ルブラットは軽く、しかし丁寧に両手を揃えて頭を下げた。
 マーレボルジェは苛立たし気に眉を潜め、ルブラットの眼前まで近づいた。そうして嫌悪感丸出しの歪んだ表情で睨みつける。睨まれたルブラットは音も無く隣の男を指さした。
「他人の家に訪れた際にする挨拶だと聞いた」
「気軽すぎるっ!!」
 煌々と白さを放つコートに人差し指をめりこませ、マーレボルジェはつめよった。
「完全に友達の家に遊びにきた感覚になってるじゃない!? ここは深淵に一番近き牢獄。希望の光すら届かぬ、犯罪者たちの絶望を蒐集した監獄!! 耳をすましてみろ。死者の呻きが、生者の苦痛が、嗚咽を煮詰めた悪魔の笛の音が聞こえるだろう?」

 ティロリンティロリン♪
「あ、ポテトが揚がった」
「ポテトが揚がったそうだ」
「そうね、ポテトが揚がったわ」

 項垂れる友人に何と声をかけたら良いものか。過去の経験や実測からルブラットは努めて社交的な声を出してみた。
「ここは君の家のようなものだろう?」
「監獄だけど。一応捕まってんだけど」
「そういえば、そうだったな。かつて訪れた広大な君の蒐集箱は中々に趣味の良いものだった。しかし今の納屋のような狭さも個人的に嫌いではない」
「えっ、なになに、何の話? 僕の知らない面白い話?」
 探る目をした映画蒐集家が割り込んだ瞬間、マーレボルジェとルブラットは今持っている話題を手放そうと視線で合図を送りあう。
「で、何しているのよ。こんな所で。私抜きで、一緒に、ポップコーンなんか作っちゃって。いや待て、言うな、聞きたくない。お前らが軽妙洒脱な仲良しトークを繰り広げていた様子など知りたくない」
「まぁ、まぁ」
 ホリディのような楽し気な香りをさせる台所でマーレボルジェは拗ねた様子で頬を膨らませる。
「先日は彼の誘いを断ってしまったから、今日は映画とやらを観に来た」
「律儀か!!」
「僕はそんな律儀なルブラットさんが大好きになりました」
「分かった。取り敢えず映画蒐集家を殺してから、もう一度話を聞くわ」
「オギャーッ!?」
 血飛沫が飛ぶ。
 キッチンというのは思った以上に色々な道具があるのだなぁと、ルブラットは出来たてのポップコーンを摘まみながら猟奇劇場を鑑賞した。白いコートの裾に汚れが付いたが、そういうものなら仕方ない。
 人間を客観的に観察する視覚の娯楽。映画とは『そういう物』だとルブラットは教わった。故に、これも映画。娯楽の一種だと彼の中では認識されている。
「乾燥した穀物が熱を受けると綿のように膨らんで弾けるとは、まったく愉快な植生だ。が、少し喉が渇くのが欠点だな、これは」
 少し塩味のするポップコーンには狐色のバターキャラメルソースがかかっている。握ると仄かに温かく、べたつく指は術後に洗い忘れた血液の粘着性を思いださせた。
「生成する際に起った銃声が如き破裂音には驚いたが、悪くない」
「よく仮面をつけながら食べられるわね」
「問題ない」
「それ、邪魔じゃない?」
「気にしたことはない」
「かっこいいですよね。ルブラットさんの仮面。トレードマークか何かですか? こだわりとか?」
「いや、そういう訳でもない。家では普通に脱いでいる」
「えぇ!? 仮面の殺人鬼にあるまじき設定ですよ其れ。勿体ないです!! 本当は美しい顔を隠しているとか醜い顔の傷を隠しているだとか別人になりたいだとか鳥に憧れているだとか被害者に見られたくないとか自分の本心を隠したいとか特に意味は無いブラフとか……あ、特に意味がないのも理由としてありですねっゴギャフッ!?」
「頭を潰しても口が残っていたらダメなのか。ゾンビより面倒くさい」
「ぞんび?」
「観たら分かる」
 ルブラットは抱えていたポップコーンのボウルをシンクに置き、ぱちぱちと愛らしい音で拍手をした。観劇やオペラを聞く際、その舞台が素晴らしければ演者に敬意を表して手を叩く。映画も似たようなものなのだろうと、初めて見る友人の舞台にルブラットは賞賛をおくった。その音でなんとなく、残虐性を伴う空気が霧散していく。
「君たちは仲が良いのだな。結構なことだ」
「どこが!?」
 一仕事終えた様子のマーレボルジェは赤と白のラインの入った巨大な紙コップを片手で取り上げた。当たり前のようにストローを噛みながら紫色のソーダを飲んでいく。
「葡萄ソーダか。派手で毒々しくって、あまり好きじゃない色だけど依存性があるわ」
「終わった途端に砂糖入りの炭酸水か。不健康だな」
「不健康の極みに対して無駄な贅を尽くす。それが精神に効くんじゃない」
「それもそうだな。ところで果汁を薄めた水はどこにある」
「オレンジジュースならそこ。氷はあっち」
「製氷器に足が刺さっているが衛生的にどうなのだろうか」
「オススメはしないわ」
「そうだな」
 チーンと軽快な音を立ててオーブントースターが鳴る。焼いていたピザができたようだ。
 作成者はトッピングに使われそうな粗挽き肉として床に広がっている。本当に、どうしたものかとほんの少しだけ、ルブラットは困ったようにマーレボルジェを見た。
 この監獄ではあまりにも死が軽い。時折、自分も『そう』してしまいそうで困ってしまう。
「何よ」
「彼は剥製にしないのかね?」
「イヤだ。私が剥製にするのは、私が永遠に愛したいモノだけだもの」
「ほう?」
「永遠の美しさ、永久の存在を傍らに置けば、私の魂は潤い満ちていく。死体でも良いけれど、生きたままの苦痛、快楽、輝きに勝るものはない。ガラスケースに鳥かごに標本箱に縫い留めたいわ、ルブラット。貴方は未だに私の中では剥製候補のまま。あんなに熱烈に刺されるだなんて久しぶりだったもの」
「私と君は死に対しての考え方が違う。この件に関しては何度も協議を重ねてきたが、残念ながら永遠に平行線を辿るのだろう。しかし、マーレボルジェ。君のその言葉が、君の放つ最大級の賞賛であると云う事は私も重々認知した。私もあれだけ直情的で純粋な、しかも好意的な殺意をぶつけられるのは正直嬉しかったよ。君の言った運命という言葉にも同意したい。もしも君が死ぬときは、私もしかと見守ろう」
「いひひひひひ」
「ふふふふふふ」
「ねえ!? 僕がちょっと目を離したうちに二人で重要な会話を済ませるのってずるくない!?」
 何事も無く元通りになっていた男に、マーレボルジェは鼻で笑い、ルブラットは肩を竦めた。
「そんなにルブラットさんがお気に入りなら剥製にしちゃえばいいのに」
 タキシード姿の少女は道端に転がった汚物へと向ける眼をした。
「あっ、蒐集家最強だったマーレボルジェちゃんが収監されたのって、もしかして負」
「それ以上言ったらお前のお気に入り映画パンフレットを燃やす」
「ごめんなさい何でもしますからそれだけは止めて」
 それで、と土下座していた映画蒐集家はケロっとした様子で顔をあげた。
「剥製ちゃんも一緒に映画観る? ルブラットさんが映画初めてっていうから、拷問用に使ってたえぐい低予算作品集めたんだけど」
「流石の私もそれらが初心者向けではないという事は分かる。が、折角私の為に選んでくれたのだ。それで良い」
「ていうか何よ突然、剥製ちゃんって」
「いや、ルブラットさんって僕らと違って寿命があるでしょ? マーレボルジェちゃんって呼ぶだけで十文字分くらいの時間がかかるから五文字に短縮しようと思って」
「お前は何を言っているんだ」
「人生を楽しむコツは危険域ギリギリの発言を繰り返していく事だと僕は信じている」


 映画が好きで、映画を集めていたらいつの間にか映画蒐集家になっていた。
 そう語りながら先導する男の横顔を、マーレボルジェが胡乱気に見つめている。ルブラットにはその光景の方が印象的だった。
「映画館の、あの雰囲気が好きでね。監獄に無いっていうから作ってもらいました!!」
「無理矢理作らせたの間違いでしょ」
 入ったその四角い箱は小さな劇場に見えた。
 規則的に並んだ緋色の椅子。灰色の四角布がだらりと舞台の上に飾られている。光量の絞られた薄暗く細い通路をマーレボルジェは後列へと進んでいく。既にお気に入りの場所が決まっているような歩き慣れた動作だった。その後ろに映画蒐集家が続く。
「五時間くらいの、いっとく?」
「却下。ルブラット、早く来ないとクソ映画観る羽目になるわよ」
「どれが良いですか」
「待て、近い」
 ルブラットは彼らの間に不自然に空いた一席に座ることにした。ぎゅうぎゅうと両脇から押されながら、カードのように開かれたパッケージの中から一枚を指さす。
「この、白い仮面をかぶっている者は?」
「彼は山小屋に住んでる殺人鬼で、自分以外の生き物が領域に入ってくると殺しちゃうんですよ。普段は獣を狩って生計を立てているんですけど、ある日、その売った獣肉に脳食いバクテリアがついていて……」
「説明しすぎ」とマーレボルジェは冷たく言い放った。
「さっさと映写室に行け」
「やだやだ僕は人殺しに罪悪感の無い人の初見感想を間近で摂取することに人生の意味を見出しているんだ!!」
 人殺しと、何てこと無いように言う。彼らとの会話はまるでレモンの樹に成る棘のようだとルブラットは思う。知らずに手を差しこめば煩わしいが、棘があると分かっていれば覚悟して爽やかな実を得ることも可能だ。
「混沌に来てからはギルドの依頼以外で人を殺してない」
 弁明ではなく、ただ事実だけを述べる。
「権力に守られつつ殺害できるならそちらの方が良い」
「いいなぁ」
 感動したように映画蒐集家は唸った。
「殺しのライセンスって憧れだよねぇ」
「何かを殺すのに誰かの許しをもらう必要なんてある?」
「煩わしさは減ったな、格段に」
「偉い人は一匹消えただけでも騒ぎになるもんねぇ」
 何とも気楽な会話だと満足げにルブラットは指を組む。マーレボルジェは気にした様子もなく手持ち無沙汰に爪を磨いているし、映画蒐集家はケラケラと楽しげだ。
「ところであれは?」
 ルブラットは頭上を見た。柔らかな光の帯が背後の小窓から零れている。貴重な沈黙のなか、からからとリールを巻く小骨のような音がした。
「ああ、あれは映写機ですよ。フィルムをつけて回すと映画が始まるんです……よし、これにしましょう。サクサク人が死ぬからスカッとしますよ!!」
 涜神的な発言があまりにも多く、つい不道徳な発言だと指摘しそこなう。
「楽しみだ」
 だから本心をそのまま告げる。
 豚の断末魔に似たブザーが鳴った。ルブラットは頭上の小窓をもう一度だけ見上げたが音楽が始まると直ぐに視線を前へ戻した。
 誰がフィルムを廻しているのかなど興味が無い。掌の形をした血痕が窓についていようが関係ない。
 映画蒐集家はルブラットを一瞥すると何事も無かったように微笑んだ。

「……何故、彼らは『やるな』と言われたことをやるんだ」
「バカだからよ」
「なのに、暗闇で一瞬見えただけの相手の容姿や身体的特徴や車のナンバーを正確に記憶しているのはどういう了見だ。狡い」
「普通に犯人の味方してるし」

「あれは何だ。もっと被害者のことを考えてから殺せ。せっかく一人の人生の終わりなのだから、個々人に合うように殺し方を演出してあげたい。私ならばできる。むしろ今すぐ代わりたい」
「同意」
「同意」
「せめて死にゆく者への誠意はあってほしい。意味のない生など存在しない。命の終わりという人生最大の見せ場に名前一つ無いとはどういうことだ。しかも理由が見立て殺人の数合わせとはお粗末すぎる。最初から相応しい童謡を調べ直してから出直せ。だが途中までは良かった。誉めてやろう」
「同意」
「今仕事してるのカメラとオーケストラだけだよね」

「ゾンビ。異教の呪術。神の御意思に反した穢れた存在。病原菌を媒介しての作成など許し難いな。しかし空気を媒介に感染しているものや水を媒介に感染しているもの、接触しての感染によって発症時期に差異が出るのは実に興味深い。この映画の感染速度は正確な数字を反映したものかね?」
「ルブラットさんと一緒に映画を観るのかなり楽しいんだけど次回の鑑賞会いつにする?」
「認めたくないけど、かなり楽しいわね」

 三本目を見終えたところで映画蒐集家がにんまりと笑った。
「多分だけど、僕、ルブラットさんにとってのホラーが分かったかも」
「私にとってのホラー?」
「ルブラットは怖がらないわ。私、色々やったもの」
 色々やっていたのかとルブラットは本気で驚いた。その反応にマーレボルジェは傷つくというよりも冷めた表情のまま鼻で笑う。
「どうして言ってくれなかったんだ」
「失敗したのに言う必要ある?」
「無いな」
「あのね。二人は九姉妹って知ってますか? コバルトレクトでは有名なような、そうでもないような、まぁ各地に残ってる神さまのお話なんだけど」
 ルブラットは首を横に振った。
「初めて聞く」
「私、それ、きらーい」

 一時間後。ルブラットは切れていた。普段冷静で、殺人はするものの温厚で、血生臭い命のやり取りをする割には純粋な、そんなルブラットが切れていた。
 鴉と毒。標本と灰の海。美術品と地下の牢獄。暴れないようにと脳を取り出された生贄の双子は片方は剥製に、片方は生きながら燃やされ海に棄てられた。それらは全て異教の神が望むままに行われた儀式だ。
 苦痛に悶える双子の演技は子供ながらに見事だし、脚本もこれ以上ないほど民俗学的不愉快要素をぶっこんだ内容である。舞台美術は本物の骨董品を使っているのか美しく、カメラワークもライティングも絶妙にえぐさを煽ってくる。

 だからルブラットの怒りはこの映画の企画を通してしまった映画会社へと向けられていた。

 なぜ こんなものを つくった ?

 思わず片言になるほど異端の教義に怯え、怒りで震え、そんな感情ジェットコースターを経たルブラットは、今や全くの虚無だった。骸ですら、もう少し生き生きとしている。蝋人形のようになったルブラットの袖をマーレボルジェが引いた。
「映画蒐集家。私、コーヒーとドーナツが食べたくなったから抜けるわ」
 かたり、とカラクリ人形のように傾いだルブラットの肩を少女はこれでもかと叩く。
「ちょっと私に重い荷物を持たせるつもり? この繊細な指が壊れたらどう責任を取ってくれるのかしら。ルブラット・メルクライン」
 コツコツと廊下を歩いてキッチンに向かう間、ルブラットもマーレボルジェも無言だった。コーヒーメイカーにどさどさとコーヒーの粉を入れ、カフェインで殺す気かという量の水を注ぎこんだ頃、ようやくルブラットは口を開いた。
「ひどいめにあった」
「だから言ったでしょ。私、あの映画、嫌いだって」
 思い出したシーンを追い払うように手を振りながらマーレボルジェは舌を出す。
「君がそう言った理由を、遅まきながら理解した」
「貴方、人生損してるタイプよね」
「しかし君はどうして嫌いなんだ。剥製など君好みが揃っているように思えたが」
「うーん」
 ドーナツの箱から丸い円を取り出し、その穴越しにマーレボルジェはルブラットをみやると思い出すように薄青い眼球をぎょろりと上に持ち上げた。
「何でかしら。アレを見てるとムカムカするのよ。何故なのか思い出せないし、思い出す気も無いけど……そうね、私、脳が無いの。それが関係してるんじゃないかって誰かが言ってたけど、どうでもいい」
 ルブラットは頷いた。マーレボルジェの言葉と映画の類似点を指摘すべきでは無いと判断したからだ。
 故に先ほどまで何度も聞いた言葉を口にした。
「同意する」
「いひ」
 マーレボルジェは普段通り、狂った無機質な嗤いをみせた。
 彼女やルブラットの針がいつ狂ってしまったのか語る者ははいない。
 だが物語に出てくる殺人鬼には大抵、辛い過去があるものなのだ。

  • ファナティックシアター/階梯症候群完了
  • NM名駒米
  • 種別SS
  • 納品日2022年01月30日
  • ・ルブラット・メルクライン(p3p009557
    ※ おまけSS『お気に入りの黒塗りパンフレット』付き

おまけSS『お気に入りの黒塗りパンフレット』

・テーマ
シリアスコメディ乱高下
ポップコーンを投げる殺人鬼
1994〜2008年頃B級映画あるある
多重人格者と精神科医

・テーマ曲
バッハ『悪しき世よ、われは汝に頼まじ』
ヴィヴァルディ『四季』より『夏』

・イメージ舞台
映画館/地下/現場/劇場
鉄錆・黒・灰
19世紀アメリカの精神病院
レストランのキッチン(R15)

・イメージB級映画及び邦題
「ウェンディ・パラサイト」
山奥に住む仮面の殺人鬼(筋肉)が山奥に来た大学生カップルを皆殺している間に、ふもとの村では脳みそを喰らう殺人バクテリアが大繁殖していて人間vs人間vs殺人ウイルスの三つ巴の争いになるけど伏線ばらまきすぎた弊害か何一つ回収されないままエッチなシーンだけが増え殺人バクテリアをエイリアンが作ったっていう展開あたりで観客の目から光が消え、その間にみんなしぬ。
なお、がんばって書いたのに改悪どころか最悪にされた原作者と脚本組はエンドクレジットはから自分の名前を消してくれと頼み込んだ。

「メッシー・ライティング・スポット」
原稿合宿として人里離れたホステルを借りて泊まり込むことにした仲良し作家グループが見たものは悪魔の童謡をモチーフにした殺人事件だった、が途中で製作費が付きたのか締め切りぶちぎっていたのでお偉い人が激怒したのかそこがこの映画最大の謎なのだけれども暗転カットを多用した超駆け足展開となり、犯人に至っては一度も画面に登場しないどころか名前も分からないまま結局のところみんなしぬ。

「ストーン・サークル・オブ・ザ・デッド」
死んだはずの恋人を見かけたと言う情報を追って広大な草原を移動しつつ昔ながらの素朴な生活をしている民族への取材を試みた記者。俗世間と関わらないが故の純粋さと残酷さ、そして奇妙な儀式を体験した記者が狂っていく様子を捉えたドキュメンタリー映画、だったら受けたのにどうして途中で急にゾンビをぶっこんできたんだよおいこっち見ろよ30秒スポットじゃあ名作の予感がしてたんだよスポンサー何か言え。そしてみんなしぬ。

「ナインシスターズ・ナイトメア」
クセが強すぎる監督と毒の強い脚本とあくのあるプロデューサーによる誰も他のスタッフと歩調を合わせなかった悪夢の不協和音セッション。考証家がブチぎれたことで有名。公開前評価が星1.4という未曽有の低ポイントにも関わらず、コアなファンを生み出している。結局観客を置いてきぼりにした新感覚すぎる何が言いたいのかわからない地獄みたいな作品が生まれたけど実力だけはあるスタッフが揃っていたので無闇矢鱈と綺麗。そしてみんなしぬ。


・映画蒐集家との関係性初期値
「僕ねぇ。工夫して一生懸命作った死体とか潤沢な予算を使って研究された特殊メイクとか、大好きなんです。だけど時々ねぇ、何て言ったらいいのかな。無性にリアルなモノが見たくなるんですよ。命のやり取りや戦争を経験した事が無い人が作るものって、知ってる人間から見たらやっぱりちょっと『ファンタジー』じゃないですか。臨場感ないっていうか。勿論、そういうのも好きなんですけどジャンル的にもパターンが決まるっていうか、過去の栄光に縋ってリメイクばっかり作り始めちゃうと芸がないって言うか。いや、その時代の世相が反映されていて楽しんだけど、やっぱり味変的に時には生々しいものが見たいって言うか。だからリアルな戦争とか死体の臭いがする映画を見たくなったら、つい戦争とか起こしちゃうんですよね。でも戦時下だと娯楽の予算削られてお気に入りの映画会社がつぶれちゃったり、脚本家さんや俳優さんが皆燃えちゃったりするから最近はあんまりやってないんだけど、そんなの繰り返してたら犯罪者扱いされててビックリしたよねー。だから一応自首して、監獄に住んでます」
「私にも経験がある。大好きなものについて話し始めると、口が止まらなくなるという経験だ。私の場合は水銀だが、成程、君は確かに映画とやらが好きらしい」

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