SS詳細
血繋がらずとも、母として姉として
登場人物一覧
名前:真琴
種族:ゼノポルタ
性別:女性
外見年齢:22(享年)
一人称:私
二人称:貴方/貴女、さん付け
口調:わね、わよ、わ、ね
特徴:額に一本角、濡れ羽色の髪、淡い赤い瞳、女性にしては精悍めの身体
【設定】
かつては都に出稼ぎに出て活動をしていた。
都では大蔵省に属して主に商人の起こす脱税調査及び取り締まりを行なったという。
そんな少女は、霞帝の入眠後に出奔して久しぶりに地元に戻ったある時、叔父からこんな話を聞いた。
「真琴よ。近頃、この付近で化け物が出ると村人の噂になっておる。
お前は確か、都でちょっとした力仕事やら調べ物をする仕事をしていたのだろう。
どうか、探ってみてはくれんか」
なんでも、クマやら猪やら鹿やらが、食い荒らされているのだという。
そんな話から始まった調査で、真琴はある少年に出会った。
その少年は熊と殴り合ったかと思えば、これを躱して岩にぶつけて怯ませていた。
思わず助けに入った真琴は、その大柄な少年へと問うた。
「貴方、このままだと死んでしまうわよ」
そう問いかけた少年こそが型破 命であった。
いや――『命になる人の姿をした獣』だった。
「そうね、私とそんなに変わらないのに、今のままじゃ貴方はいつか死ぬ。
しかも、このまま放っておいたら、村のためにもならない。
――そうね、ねえ、貴方、名前は? 『
折角のいい名前なのに、そんな様子で……
真琴は、命のことを育てると決めた。
母のように――あるいは姉のように。
まずは落ち着きを持たせるように鍛え。
理性を教え、文字を伝え、言葉と感情を説いた。
そんな中で、命が最も興味を持ったのは、算術と商売だった。
『敵を知る』とでもいうべきか。
調査対象が商人達である真琴自身、その手合いを一番よくできていた。
数年の間、真琴は慈愛と家族愛を以って命を一人前になるように無償の愛を捧げた。
――そんな彼女は村全体を襲った流行り病に罹り、そのままその短い将来を終えた。
「命、外へ行きなさい。大丈夫、貴方は優しい子。
誰かを苦しませないために、自分が苦しむことを厭わない優しい子。
その為に死ぬかもしれない生活を過ごすことを厭わぬ『型破』な子。
だから、きっと薬を見つけられるはず――」
――その実が『治療薬がない流行り病から命を遠ざけるため』であったことを、今の命は知っている。
おまけSS『年始に語る』
「よう、元気してたか?」
墓石の前に座り込んで、命は静かに視線を上げる。
新年が過ぎてはや幾日、ようやっと取れた玉の休み。
墓石に備えた徳利とは別に、持ってきた酒をあおる。
「もう、アンタの歳を幾つも超えちまったなぁ」
目を閉じて、親のような彼女の姿を思い出しながら、命は軽く笑みを浮かべる。
「次に来るときは盆か来年か。
アンタならなんていうだろうなぁ……『もっと来なさい』か?
それとも、『貴方の人生を優先しなさい』か? ははっ! どっちも言いそうだ」
もう、誰も来ることのない墓石の前で。静かに思いに馳せた。