PandoraPartyProject

SS詳細

モノクローム

登場人物一覧

レーツェル=フィンスターニス(p3p010268)
謎と闇

 幾度も知れず反芻されたモノクロームが脳天から爪先までを殺戮していた、虚れはまるでお嬢様のお茶会が如くで『断る』事の可能な代物ではないのだ。堕落と称される楽園に満たされて煌々、紫色の暴力に抱かれていく。それでも尚、私は渇きや餓えから逃れられない。ごきゅ・ごきゅと呑まされた、何の個性も無い『意思』に覆されてしまう。クライマックス・シーンに爆ぜた身体と精神、シナプスめいた光景が遂に二十代後半と化した。混沌、やけに異物だと感じていた胴体が形容し難くも絡み合い藻掻こうとする人を弟と見做す。謳う、崇める、弄ばれる。いいや、何時だって『ナニカ』は本気だったのだ。重く々く圧し掛かった深淵と呼ばれる道化――嚥下したって透明な唾には気付けない、もう手遅れだとヴンダーカンマーが嗤った――賢者の石を埋め込むのに使われた鋸の錆具合。右に嵌れ左を向くな何れ無垢なる貴様が待っている。望もうと望まなくともグロテスクは【魔女】――。
 私が『ナニカ』を認識、視認したのは……してしまったのはおそらく数日か前だった。極限までに薄められたハニー・トラップじみて蜘蛛は糸を紡いでいたのだ。たとえば地中の団子虫を蹴り飛ばす子供、お嬢様にペコペコと頭を下げる貴族、腐れていくだけの家なき者。とある旅人が※※※の猫と表現していた事も頷ける、これでは箱の中に詰まった毒虫ではないか。詰め込まれた棺の上で『何も関係が無い』とタップ・ダンスする貌、全くの邪悪性が見当たらない故にタチが悪い。いっそ魔種の言の葉に耳を傾けた方が健全と謂うもの! のっぺりとした神にでも誘われたが如く膝をつき頭を揺らし心臓を不規則に導く――此処に天義の教えなど届く筈がない。ただ、正気を失いつつある『私』が在るだけ――からから・虚虚・けらけら――継ぎ接ぎの腕が脳味噌を支えてくれた、捻じ曲げられた美徳。刹那、浮かび上がった言辞は『同化していく』、肉と衣の境で眼が止まった。
 痛めつけられた子犬は飼い主の指先に逆らえない、キャンキャンと泣くだけのいとしさの塊と解せよう。浴びせられた数々の甘さと辛さと苦さ、ぐずぐずに成り果てた視野もある種『しあわせ』への第一歩と記せるのか。蓄えられた地獄が悉く解放される――そろそろ手折られても良い頃合いだ、模造された豊かさが耳朶の奥へと這入っていく――塵を取り除くのは構わないが其処は大切な管だ如何して弄っている、勿論、お世話する為だな。噴き出したよくない現実、夢見心地へのはじまり。
 好奇心を刻まれた獣だけのやり口で私は振り回されるハメになった、スワンプに囚われた人間に抜け出す術など見つけられなかったのだろう。つまるところ根源は三大欲求に有るのだ。喰う・眠る・遊ぶの素晴らしき音色、不可視の楽譜に唆されたような悦ばしさ。ごくりと胃袋から腸へ冒されていくゾクゾク――もう限界だ、私はハッキリと『ナニカ』に伝えなければ! これ以上の七番目は絶対に赦されない、いつかオマエが科せられる、と――「大丈夫、もっとくださいお姉様」――今、誰が何と言った。今、私は何と言った。縋っている、跪いている、蹲っている、舌をたらしている。ようやく私は理解していた、欲しているのは『私』なのだと。未知は妙な解釈を孕み自ら脳味噌を払い除けたのだ、触手が支えていたにも関わらず! まだコレクションされていた方がマシだったと羽衣がふわり、遅過ぎた価値観に眩暈を押し付ける。死者の肌に沈むような無色。
 己で掻き毟った頭蓋が欲情と共に幻想へとブチ混まれた、融けて往く理性は欠片も残されて在らず、これ人に非ず魔性だと伏臥位の儘に魅了されて視る。悪魔か天使か果た真た化け物か、そんな疑問すらも槍衾に中てられてじっくりと吟味されて異たのだ。ありがたみが増している曖昧さの虚々、尾を呑む蛇じみてふたつ――ふと広がっていた世界、何が起きたのかと目玉を右左、覆い尽くさんばかりだったモノクロームが真っ白に形容していた。

 最終的に『私は生きていた』とでも記すべきだろうか、少なくとも人としての在り方を忘れてはいない。異物が混入し、唾棄された脳味噌も今では収まっているのだ。堕落性も数日かで元に戻り、こうして机の前に坐している――されど私は告白しなければならない。たとえこの手記を読む者が現れなくても、この罪を銜えた状態で人を謳歌する事は不可能なのだ。即ち、私は今でも時々、否、毎々と『ナニカ』の到来を期待しているのだ。贋作でも何でも構わないからもう一度だけ、私を愛してはくれないだろうか。
 酷い吐き気と頭痛、朦朧につつかれている、きもちよくなる薬もアンハッピーターンも尽きてきた。いたくないを乱用したところで希望への門は頑なに鎖されている。だが、嗚呼、大丈夫だ。私の隣には『ナニカ』が在る、その真実を証明出来ればこんな苦痛など吹っ飛んでしまうのだ。モノクローム、私を……。

  • モノクローム完了
  • NM名にゃあら
  • 種別SS
  • 納品日2022年01月06日
  • ・レーツェル=フィンスターニス(p3p010268
    ※ おまけSS『幾度かの盲目、その足音』付き

おまけSS『幾度かの盲目、その足音』

 からからと、まるで絡繰りのような時間ではあった。
 たくさんの人々に近づかれては遠ざかれ、挙句、オマエは未だに一人で在った。
 物欲しそうな人物を定めては声を掛け、それでも尚『愛』は見出せない。
 モノクロームに這入り込むカラフルとは如何様な輪郭なのか。
 支え続けたタンパク質のなんと脆弱なこと。
 ――優しく接すれば接するほどに正気ではなくなっていく。
 わずかなお呪いの品も結局は縋る先にも成らないのだ。
 ――深淵は一切に触れていない、触りにきたのは『貴様』なのだから。
 聞こえてなどいない、勝手に吐いているだけか。

 似た者同士がのたまい遭っていた、惹かれた魔障はただ足音を辿る。

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