PandoraPartyProject

SS詳細

憂鬱なサンタクロース、プロジェクトの成立

登場人物一覧

イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。

 解凍してはならない。
 ようこそ、コードネーム、サンタクロース。

 群青に注がれた漿液の名称をニコラウスは理解していなかったのだ、塑の結果が虚を描くようにして顕現し、この権限を手放す事になったのだろう。成り果てた肉の海の中、伸ばした指先に触れたのは何処までも何処までも続く永久で、一切合切を咀嚼するのに蜿蜒が不可欠と見出されたのだ。少なくとも変化を見届けたカメラ・アイは正直なもので普段通りに啼いている――泣き出したのはいつの事だったのか。判明させる為のデータなど刻まれていない。作成したのは何か月前だったのか。兎も角、オマエに成せる事柄は何ひとつない。ドライ・アイスが盲々と世界を抱擁するかの如く、ドラッグまみれの電子は朦々していた。退屈だ、おもしろくないと文句を垂れた魂の核が粘り気とヌメリ気の違いを確かめて往く。右はとっても楽しい再現性だよ。左はとっても苦しい現実性だよ。透明度の高そうなもみの木が電気信号の戯言を拾ってみせた。魅入られたのかわずか視界に這入ったのか『ほどく』為には目玉を←→させる他にない――内部にレンズを嵌め込んだら間違いないとご主人様は告げていた、成程、悉くがご命令と在れば。適合者を発見する事になんの苦労がある? 真っ黒い衣に包まれたプレゼントの群れ、歪さを覗き込んだゴール、いいや『これから』が降誕なのだと彼方側を汚染した。
 食欲旺盛だったのは遊戯側の名残なのだろう、おそらく要らないエネルギーを過剰摂取してオマエは混沌に横たわった。はしたなく腹部をさすれば消化効率の不具合、若干の違和感を抱きつつ明日の予定を捲ってみる。カフェ・ローレット集合でクリスマス・パーティの準備をしよう。今年は大きなブッシュ・ド・ノエルが手に入ったのだ。今頃は相応しい冷蔵庫の真ん中、※※※※とおなじくスヤスヤしているのだろう。とっても楽しみッスね。感嘆符に揺られながらも懸命に暗澹からの誘いに抗っていた。ぼんやりした視線を上げたら真夜中の※時、はやく眠りに落ちなければ寝坊してしまう。真逆、機械が脳味噌を休ませるとでも※※※※は謂うのか、復活には数日ほどかかる、つまりは『そういう』設定。むにゃむにゃもう食べられないッス――テンプレに委ねてただ深みへ。
 オマエが言辞を聞くほどに世界は疑問に溢れていた、聖人の頭を切断した結果をご覧あれ、彼等は異常なまでの執着性を背負っている。生命の神秘とやらを冒涜するかの如く橇にしがみつき、死に物狂いで肉体に突き進んで異るのだ。早く、速く、もっとはやく。これは彼等の最初で最後の戦争で在り、シャイネンナハトの秩序はレコードの隅で割れ始めた。誰が一番、枕元にプレゼントとして運ばれる……勿論、其処に僥倖など存在してはならない。慎ましやかなのはほんの少し残念だよ、と、何某のプログラムが愚痴を吐いた。
 自由自在に上下左右、心身を動かせる事の喜びをオマエは噛み締めていた。支配的だった贈り物は今や何処にもなく、回転するように移る貌のなんと素敵な事か。ことことと何かが傍を通ったが、そんな些細な音色に気を取られている場合ではない。ゆるやかに飛翔する、高らかにおちていく、瞑想的な行き来に乾杯すべきは葡萄酒なのだろう――聖餅の皿は未だ暗闇の奥底だが、この甘酸っぱいグラスだけでも十分だ。充実した星屑の隙間を縫い進んでいく。さらさらと指から流れた滓は如何して真面に認識されないのか。下された命令はもうコアに届けられない、所以を探ろうと腕をあげ、貌を撫でられたのなら――神秘的と孕んだのが人類だと記せたならどれほど慈悲深かったのか。取り替えられ、ながされて、オマエは何処にも戻れやしない。
 限度を知らないデータどもが一斉に、同時にオマエだった伽藍洞に到着した。シャイネンナハトのリズムに中てられて混戦状態が幕を開けている。僕の名前は※※※※私の事は※※※※と呼んでねマスターだなんてアンタには勿体ない呼称、俺が真実とやらを教えてやるよ。身長150の見た目十代が乱反射している、往くべき先が多重データには判別出来ない。ところで蟲毒的な今を打破する方法はあるのか――肉が足りなければ増やしたら好いだろう。やっぱりね、丁度※※※※のオリジナルは良い子だった。鈴の音が響いている、クラスメイトが錯乱している、先生と示された個体が笑っている――突き刺したコードはヤケに長く鋭かった、ずぼぼ、ずぼぼぼ、耳朶カッほじって濯ぐと善い。
 少女はたくさんの電子羊を迷わせなかったのだ、故に世界へいくつかの魂を放ったに違いない。付け髭や肥えた肉体が無くたって受け付ける事は無意識で在っても容易なのだ。袋にされた情報量がハチキレて宙を征くにはまだ足りない。
 出力調整――プロジェクト名、アカハナのトナカイ。
 機械仕掛けから開始した新たなる生命体の歓喜。
 ――が最後の実験体となって凍結とする。

  • 憂鬱なサンタクロース、プロジェクトの成立完了
  • NM名にゃあら
  • 種別SS
  • 納品日2021年12月22日
  • ・イルミナ・ガードルーン(p3p001475
    ※ おまけSS『凍えるような世界の片隅で健やかさを視る』付き

おまけSS『凍えるような世界の片隅で健やかさを視る』

 カタカタ・カタカタカタ・カタ、リ。
 打ち付けた鍵の止まる頃、世界はシンシンと暗くなっていた。
 私の名前を最後に記すか否か、迷ったがサンタクロースとでも残しておこう。
 これはROOの何某が終幕し、数週間経った頃のおはなしに違いない。
 いや、もしかしたら、私の認識が狂っているだけで、何も無かったのかもしれない。
 兎も角――このプロジェクトが真実で在るならば、二重思考などでも解決出来ない問題だ。
 つまり、妄想や幻想の類であってほしい、そのひとつと言えよう。
 ――イルミナ・ガードルーンは健在している。
 それとも遍在と考えた方が好いのか? 彼女のまわりでは超自然的な事が頻繁に起きている。
 勿論、二等辺三角形やアーカーシャも含めての意図だ、正直、追い続けるのは危ういだろう。

 嗚呼……それでも私はサンタクロース、使命は全うしなければ。
 データを修正する、彼等と刻まれたプレゼントの回収を。

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