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右腕、君の望みは何だ

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ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸

 鈍い痛みに目を開くと、右腕が天を掴んでいた。

 ――ランドウェラの右腕は、動かなかった。
 真っ黒な腕。まるで何かの回路のような蒼い文様が奔る其の腕は、動かすと共に痛みを発したから、ランドウェラは今まで動かさずにいたのだ。
 人にも「動かないんです」と言って通してきた。動かせば痛むし、使い物になるか判らない。そんな腕で戦えるとはとても思えなかったからだ。

 けれど、彼は動かす決意をした。使えるものを使わないと、強くなれない。例え痛む腕でも、掴めるなら、武器を振るえるなら、使わなければ。其れはランドウェラの強くなりたいという意思、……そして、自分を“作った”人間に対する、僅かな反抗。其れ等がランドウェラに痛みをこらえる勇気を齎した。

 けれど。……時々こうやって、右腕が勝手に動く事がある。

 まるで星を求めるように天井に向かって真っ直ぐ伸びる腕。星空の夢を見た覚えはない。夢の内容は、思い出そうとすればするほどに手をすり抜ける霞のように薄れて消えていく。

「……」

 ぼんやりと、下ろさなければ、と思う。
 上げているだけで、肩が痛む。腕がちりちりと痛む。片腕で身を起こせば、天を掴んでいた腕はベッドと平行に真っ直ぐになった。
 左腕で掴んで、おろそうとしてみる。動かない。何かを訴えるように、真っ直ぐに。……手首を掴む。曲げようとしてみる。無理な力に関節部が、そうでなくても右腕全体が痛んで、ランドウェラは否応なしに覚醒していく。
「……」
 やめた。
 そのうち右腕もきっと“疲れて”降りてくれるだろう。タンクトップには汗が滲んでいた、左腕でべたつく布を肌から剥がす。

 ――どんな夢を、見たのだったか。

 思い返すも、判らない。元の世界の夢だったようにも思うし、この混沌の夢だったような気もする。もうすっかりと夜明け前の闇に紛れて消えてしまった。
 判らない事は置いておこう、とランドウェラが思うと同時に、どさ、と重たい音を立てて右腕が落ちた。“疲れた”のだろうか。
 この右腕は何の役割を持つのだろう。ランドウェラは痛みを伴いながらだが――やっと自分の制御下に入った右腕を見下ろして思う。何かの鍵であったり、何かがいたり……するかもしれない。だって、さっきだって勝手に動いていたのだし。じゃあ、あれは其の何かからのサインだったりするのだろうか。
 右腕を持ち上げて、近くに置いていた腕時計を取る。薄闇の中で時間を確かめると、夜明け4時を指していた。もう一度寝るには遅く、起きるには早い――が、もうこの調子なら起きてしまった方が良いだろう。
 起きたら、右腕を動かす練習をしなければ。戦場でも、痛みをこらえて動かせるように。不測の動きをしても、対処できるように。
 ベッドから降りて、ランドウェラは一つ伸びをした。ちりちりちり、と右腕が痛んだが、この程度なら我慢できる。

 ねえ、右腕。
 君は痛みと動きで何を伝えようとしているんだ?

 問うても、答えはない。
 答えはランドウェラの魂の底の底。彼は自由にならない腕で、其れをいつか掬わなければならないのだろう。
 ――夜明けは遠い。

  • 右腕、君の望みは何だ完了
  • GM名奇古譚
  • 種別SS
  • 納品日2021年12月18日
  • ・ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788

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