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SS詳細

真庭の諜報員。或いは、人知れず人に紛れて…。

登場人物一覧

イスナーン(p3p008498)
不可視の

名前:イスナーン(p3p008498)
設定:
再現性東京に暮らす資産家・真庭家に雇われている諜報員。
きっかけは、ハロウィンの時期に起きたある事件を仲間たちと共に解決したことによる。
その際に見せた諜報の腕と、先んじてターゲットの動きを封じる技術を買われ雇用に至った。

真庭家の現在の当主は、真庭香織という女子高生だ。
両親を同時に亡くし、若き彼女が事業と莫大な財産を引き継いだ。
しかし、香織の両親の死には不審な点も多く、香織自身も財産目的の者に命を狙われている。
“真庭の諜報員”としてのイスナーンの主な任務は、そういった不審人物の情報収集や監視、牽制……そして、場合によっては排除ということになる。
また、それと同時に香織の両親の不審死についても探っているが、こちらは真庭家ではなく香織に使える執事長・五木の個人的な依頼である。

余談ではあるが、雇用主に当たる香織は、イスナーンの任務の内容を詳しくは知らない。
若い香織にいらぬ心労をかけたくないという五木およびイスナーンの判断によるものだ。

他の使用人達と違い、イスナーンは真庭の屋敷に住み込みで働いているわけではない。
依頼の内容においては長期間留守にすることもあるし、ローレットからの命令で他国へ赴くことも多々あるからだ。

再現性東京において、イスナーンはいくつもの顔を持っている。
例えばそれは、香織の通う学校の用務員であったり、真庭家に関わりのある企業の監査員であったり、或いは運送業者であったりと時と場合によって立場を使い変えているのだ。
それらの“立場”は五木が用意したものもあれば、イスナーン自身が必要に応じて得たものもある。
理由はどうであれ、状況に応じて幾つもの顔を自在に使い分けているあたりに、諜報員としての彼の手腕が見て取れるだろう。
もっとも、彼が現在、幾つの顔を持っているのかを正確に理解している者は、イスナーン自身のみである。
それは、上司に当たる五木や、雇用主である香織の口から、他者へ情報が漏れる可能性を危惧しているからだ。
信用はしても信頼はしない。
いつか訪れるかも知れない「いざという時」に備えることを、彼は決して怠らない。

  • 真庭の諜報員。或いは、人知れず人に紛れて…。完了
  • GM名病み月
  • 種別設定委託
  • 納品日2021年11月25日
  • ・イスナーン(p3p008498
    ※ おまけSS『ウォッカ・マティーニ。或いは、諜報員の嗜み…。』付き

おまけSS『ウォッカ・マティーニ。或いは、諜報員の嗜み…。』

●澱の月夜。或いは、真庭の諜報員
 空には白くて丸い月。
 まるでジンライムのようだ……空を見上げて、誰かが言った。
 囁くような静かな声と、ゆったりとしたBGM。
 時折どこかのテーブルで、男女の笑う声が鳴る。
 ところは再現性東京。
 古いビルの最上階にあるバーに、イスナーンは訪れていた。
「ご注文は?」
 カウンターに座った彼に、バーテンダーは静かに尋ねる。
 メニュー表は出ていない。
 つまるところ「何でもご用意できますよ」という自信の現れなのだろう。
「ウォッカ・マティーニ」
 ポツリ、と。
 イスナーンはそう告げる。
 バーテンダーの初老の男は、形良く整えられた眉を僅かに震わせた。
「おっと、ステアはしないで、シェイクで頼みます」
「……通ですね」
 なんて。
 どこか愉しげな様子で、バーテンダーは首肯を返すと手際よくグラスと酒を用意する。
 ウォッカ45mlに、ドライベルモットを15ml。
 通常であれば、それらをグラスに注いで混ぜ合わせるところだが、イスナーンの注文はシェイクだ。
 シャカシャカと、短い時間、小気味の良い音を鳴らしてバーテンは酒をシェイクする。
 そうして、出来上がったものをカクテルグラスに注ぐと、レモンの皮をひと絞り。
 最後にオリーブを飾れば“ウォッカ・マティーニ”の完成だ。
「どうぞ」
 すっ、と音も無くコースターを差し出して、カクテルグラスをそこに置く。
「あぁ、これは美味しそうですね」
「ありがとうございます。こちらはウォッカベースですが、機会があれば“XYZ”なんかもお楽しみいただきたいですね」
「なるほど“XYZ”ですか。えぇ、次の機会にはそれを……でも、オススメなのでしょう? だったら、次まで残っていないかもですね」
 酒と会話、バーにおける正しい楽しみ方だろう。
 イスナーンは、ゆったりとした動作で手を伸ばし……グラスを持ち上げるのと同時に、コースターの下に挟まれていた紙片を素早く袖の内側へと取り込んだ。
「最近、どうです? “景気”の方は?」
「はは。お恥ずかしい話ですが“今ひとつ”です。公に口に出しては言えませんが“厄介ごと”がありまして。早く“片付いて”くれると助かるのですが」
 困ったように苦笑を零し、バーテンダーはそう言った。
 細められた瞳は、イスナーンの手元……袖にしまった紙片へと向いているようだ。
 イスナーンは、トントンと2回、紙片をしまった方の手首を指先で叩くと、口元にかすかな笑みを浮かべた。
「口に出せないとは残念だ。私がそれを知ったなら、数日の間にその“厄介ごと”を“片付けて”しまったでしょうにね」
 そう言って2人は笑みを交わし、それっきり沈黙が訪れる。
 ゆったりと酒を楽しみ、イスナーンはバーを後にした。
 それから彼は、袖口の紙片を取り出すと、記されていた数字の列に素早く紙片を走らせる。
『622122043204031242702395』
「あぁ、やはり……居所は分かっていますし、これは数日も必要ないですね。今夜中に片付けてしまいましょう」
 果たして、紙片には何が記されていたのか。
 それを知るのは、バーテンダーとイスナーンの2人だけ。
 上機嫌な鼻歌と、音も立てない軽い歩調。
 白い月の光を避けて、イスナーンは夜の帷に姿を消した。

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