SS詳細
ライラックに添えて
登場人物一覧
名前:アレキサンドライト
一人称:俺
二人称:~さん
口調:敬語(少し雑)
特徴:いつも大きな爆弾を抱えているお嬢様。中身は龍成の友達ラクリマ・イース。
設定:
不明になっていた龍成の身柄が確保されてから数日。
ヒイズル燈堂家の広間で、アレキサンドライトは爆弾を抱えて龍成の前に座った。
「よお、久しぶりだな。ラクリマ」
「ここでは、アレキサンドライトと呼んで欲しいですね。一応、こういう格好ですし」
柔らかい白髪を一束持ち上げて怪訝な顔を浮かべるアレキサンドライト。
龍成は視線を上げて緑赤の瞳を見遣る。その手前にある大きな胸も忘れてはいない。
「やっぱ女になりてーもんなのか?」
「龍成さんも美少女アバター作ってみては?」
不機嫌そうだったアレキサンドライトの唇が笑みを零した。
「……それで、その。心配して来てくれたんだよな?」
彼女がヒイズルの燈堂家までわざわざ足を運んでくる理由は龍成がここから動けないから。
ログアウト不能でフレンドリストも使えない龍成が、また消息を絶つ事を懸念した為だ。
敷地から出てはならないという軟禁状態にあるらしい。
「そうですね。事件に巻き込まれていたとはいえ、消息不明で悲痛な音声だけ届いた身にもなって下さい」
首を傾げた龍成にアレキサンドライトは音声ファイルを再生する。
「……何だこれ。こんなものいつの間に」
困惑する龍成と大きく溜息を吐いたアレキサンドライト。
「まあ、でも元気そうで良かったです。顔が見られて安心しました」
「やけに素直だな」
「茶化さないでください。この、俺が、心配を、したんです」
手にした爆弾を龍成の顔に押しつけながら彼女は眉を寄せる。
「悪かったって。心配掛けた」
視界を塞がれた龍成は、アレキサンドライトの頭を手探りで掴んだ。
「廻達にも伝えてくれ。俺は何ともねーって」
「何ともなくは、ないでしょう? まだログアウト不可なんですし。っていうか頭を離せ」
爆弾を横に置いて、龍成の手を引き剥がすアレキサンドライト。
ジトっとした目で彼女は龍成を見上げる。
「はは、いつも通りだ」
少し疲れたような龍成の笑み。きっと『いつも通りのやり取り』に安心したのだろう。
明日をも知れぬ状況で、不安にならない訳は無いのだ。
だから、アレキサンドライトは務めていつも通りに振る舞う。
これが不安を抱える友達に、自分が出来る精一杯の事なのだろうから。
おまけSS『遠くて眩しい』
龍成さんがうちに来てから数日。
色んな人がかわるがわるやってくる。
今日は白薔薇の眼帯をつけた綺麗な女の人。
爆弾を押しつけたり頭を掴んだりしてる。
友達なんだろうか。仲良しでいいな。
少し羨ましい。僕を訪ねてくる人なんていないから。
そう思ってると、綺麗な女の人が近づいて来た。
どうしよう。龍成さんとの逢瀬を邪魔してしまったかも。
逃げた方がいいのかな。怒られるかもと思うと足が竦んでしまう。
でも、その綺麗な女の人は僕に笑顔を向けて手を握ってくれた。
とても優しくて、どこか『安心』する。
こんな素敵な人が友達になってくれたならなんて思ってしまうけれど。
僕は臆病で他人の心が怖くて。僕なんかが近づいたらいけないと思うから。
去って行くその人の背中を見つめて、また会えたら良いなと願った。