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マニエラ・マギサ・メーヴィン in シークレット・ミッション

登場人物一覧

マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め

 マニエラ・マギサ・メーヴィン。年齢不詳。失踪した恋人を探す女。
 その性質は実に気まぐれ。そして刹那的。
 その美貌に隠した本心は知れず。そんな女である。
 そんな女であって……とてもではないが、夜の高校の校舎の廊下でミニスカチャイナ服を着ながら全力疾走しているような女では、多分ない。
「夜の高校の校舎廊下でミニスカチャイナ服を着て全力疾走しているだろうがッ!」
 していた。さて、マニエラはその宣言通り夜の高校の校舎の廊下でミニスカチャイナ服を着ながら全力疾走している(二回目の説明)。どうしてそんなことになったのかと言えば――。
『仕方ないでしょう。夜の高校の校舎で、ミニスカチャイナ服を着るのが貴女の仕事です』
 そう、マニエラの耳朶を震わせる声。耳元につけたイヤホンとマイク、無線接続されたaPhoneから届く、青年の声。
 青年は、『A』と名乗った。詳細は不明。所属も不明。が、しいて言うなら『練達の組織に属する』とだけマニエラに伝えていた。

 彼が接触してきたのは数日前。たまたま練達、再現性東京2010街に滞在していたマニエラのaPhoneに、直接の連絡。
「誰? セールスはお断りだけど?」
 人の行き交う都会の雑踏、そのただ中でめんどくさそうに言うマニエラに、Aと名乗った男は笑いながら言った。
『できれば、お仕事をお頼みしたく。練達のためなら何でもやる……そんなあなたにだからこそ頼める仕事ですよ』
「ふぅん?」
 マニエラは、手にしていた缶コーヒーを一口舐めて、道脇の柵に腰かけた。
「そう言えば興味を引く、と理解する程度には、私のことを知っているんだな? いいだろう、話くらいは聞いてやろう」
『2010街でやる事と言えば一つです。すなわち、夜妖の討伐』
「へぇ」
 マニエラは、皮肉気に笑った。
「それこそ、正規のルートで依頼すればいい事だ。わざわざ直で連絡をつけてきた理由は?」
『汚れ仕事だからですよ』
 ぴくり、とマニエラの形のいい眉が動く。
『真っ当な、表では出せない依頼、誰もやりたかがらないであろう依頼……と言えばいいですか? ええ、これはそう言うたぐいの依頼です。
 畢竟、練達のためなら何でもやる、そんなあなたでもなければ、やらない仕事、と言う事です』
「ふん」
 マニエラは微笑う。
「いいな。好きだよ、そう言うのは。詳細をきこうか――」
 それから、マニエラは依頼の詳細を訪ねた。そして、依頼の受諾を決意する。
 練達のため――練達の利益になるためなら、泥でもなんでも被ってやる。それが、マニエラの在り方なのだ――。

「汚れ仕事、って、こういう意味のヨゴレかッ!!」
 悲鳴をあげつつ、ミニスカチャイナ服のすそをきわどい所で反らしながら、マニエラは跳躍。壁を蹴って方向転換すると、後方へと、その鋭い脚を振るう。獣の一撃の如きその蹴撃は、マニエラを追っていた夜妖、人型のそれの腹部に突き刺さった。直撃。もんどりうって倒れる夜妖が、回転しながら態勢を整えて跳躍、すぐ近くの教室に身を隠す。
「ちいっ」
 仕留め損ねた、とマニエラは凶悪な眼を教室へと向ける。
『表に出せない仕事、と言ったはずです。誰も受けたがらないだろうな、とも』
「嘘はいってないって奴だ。嫌いじゃないな。好きでもないが」
 さて、そんなマニエラのいでたちであるが、何度も言っているようにミニスカチャイナ服である。ふくよかな胸ははち切れんばかりのアピールをその切込みからしているし、太ももを惜しげもなくさらすほどにミニのスカートが、マニエラの脚線美を存分に披露している。マニエラは、凶悪な眼でぐるる、と唸ってみせた。
「で、こんなコスプレをしてやることが夜妖退治ってわけだ。しかも、ミニスカチャイナ服を着ていないと出てこない夜妖だと?」
『伝説によれば――何十年か前の学園祭で、ミニスカチャイナ服の女子生徒にフられた男子生徒が、そのショックから屋上から飛び降りたと。以来、この学校では、ミニスカチャイナ服を着ていると幽霊に襲われる――』
「どこのバカが高校でミニスカチャイナ服を着るんだ?」
『そんな馬鹿はいませんよ。だからこれまで、実害はなかった。ちなみに、伝説のような事実も存在しませんが、まぁ、噂があれば夜妖が差すのがこの街です』
 こともなげに言うAに、マニエラは吠えた。
「実害がないならほっとけばいいだろうがッ!」
『いいえ、可能性が0でない以上、悪しき芽は摘みます。それが、練達のためである。私はそう信じています』
「練達のため、って言えば私が喜んで動くと思ってるな?」
 うんざりした様子でマニエラが言う。マニエラは忌々しそうに耳元を観るように視線を送ってから、すぐに教室の入り口へと視線を移す。ふざけた夜妖だが、体力はあるようだ。事実、先ほども走るマニエラに追いつく程度のフィジカルは持ち合わせていたし、マニエラの必殺の蹴りの一撃も、耐えて見せるほどのタフネスがあった。
「依頼が終わったら覚えていろよ」
 マニエラは言いながら、教室の扉を開く。内部は、オーソドックスな教室の光景だ。内部には敵の影は視えない。マニエラはゆっくりと教室内部に足を踏み入れ――同時。
「ひゃんっ!?」
 流石に驚きに声をあげるマニエラ。いつの間に裏に回られていたのか、背後には先ほどの夜妖がいて、後ろから抱き着くように、マニエラの胸を揉みしだいている! 形の良い豊満なバストがその手に歪められるたびに、マニエラは嬌声を――あげることもなく、無言で相手の顔があるだろう位置に肘鉄をぶち込んだ!
 ごん、と言う感触と共に、夜妖がぶっ倒れる音が後方から響く。マニエラは前転しつつ距離を取ると、すぐに夜妖に向き直った。
「気配を消す術は良し。流石の私も、今のには気づかなかった……それで首でもとればよかったものの、やることが胸を揉むって、オイ。オイ?」
『まぁ、男子高校生の夜妖ですから。そう言うもんでしょう。男子高校生って』
「男ってのは馬鹿なのか――? ああ、いい。きっと馬鹿なんだろうな」
 ゆらり、と立ち上がる夜妖。
『さて、どうしますか、マニエラ様。先ほどから監視カメラで見させてもらいますが、体術に関してはあなたに迫る力を持っている敵のようです。
 動きも素早く、気配を殺す術も心得ている。先ほどは胸を揉まれるだけで済みましたが、奴が本気で殺しに来た場合、少々苦しいのでは?』
「……ふむ。まぁ、それは認めよう。まぁ、負けはしないけどな? それでも……うん、苦戦はするだろうな。それは、認める」
『では……?』
 そう尋ねるAに、マニエラは肩をすくめてみせた。
「ああ、問題ない。もう終わる」
 刹那――絶対零度の絶風が、辺りに巻き起こった。敵が見せた、油断。その隙をついて放たれたマニエラの術式は氷結の風を呼び、瞬く間に夜妖の足を凍り付かせた。流石の状況に、夜妖が焦る様子を見せる。凍り付いた足を無理矢理に動かし、逃げ出し――だが、遅い! すでにマニエラは、夜妖の眼前にいる!
「さようならだ、思春期の馬鹿モノめ」
 再度放たれた、魔力を込めた蹴撃が、夜妖の身体をないだ。途端、魔力は膨張して爆発し、影のような夜妖の身体をその暴風のうちに飲み込んで爆散させる!
 やれやれ、と手を数度振ってみせるマニエラ。ダイヤモンドダストの欠片が舞い散る教室の仲、監視カメラへ向けて、にぃ、と笑ってみせた。
「で、満足したか? クライアント様?」
『お見事です』
 ぱちぱち、と、拍手しつつAは言った。
『流石――ええ、あなたに頼んで正解だった。では、引き続き頑張っていただきたい』
「は?」
 マニエラが、きょとんとした表情を浮かべる。
『そう、最初にお渡ししたトランクの中身をきちんと見てください。
 今回着たのは、ミニスカチャイナ服を着ると出てくる夜妖用のチャイナ服です。
 ですが、他にも入ってるでしょう?
 ヴィクトリアンメイド服。フレンチメイド服。スクール水着。スリングショット水着。バニースーツ。OL風スーツ。作業用のツナギ。裸エプロン。それから』
「いや、まて」
 マニエラは頭を抱えた。
「まだあるのか?」
『はい。後数十か所は』
「えぇぇ……」
 マニエラはそのままうずくまる。
『ですが、これも練達のためで……』
「それ言えば何でも解決すると思ってないだろうな!?」
 マニエラが叫ぶ。どうやら、まだまだ……Aとは付き合わないとならないらしい。
 マニエラは、くそっ、と吐き捨てると、
「ああ! わかった、こうなったら最後まで付き合ってやる!
 だが、終わったら、覚えておけよ!」
 夜の教室で、そう叫ぶのであった――。

  • マニエラ・マギサ・メーヴィン in シークレット・ミッション完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別SS
  • 納品日2021年11月15日
  • ・マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906

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